宇野田 尚哉

 

専門:日本思想史

 

2005年度担当授業科目(旧カリキュラム科目名/新カリキュラム科目名):

・教養原論「日本の言語文化」(全学共通教育)

・「地域文化概論」(国際文化学部)

・「日本言語文化概論/日本思想交流論」(国際文化学部)

・「特別基礎演習II/国際コミュニケーション演習II」(国際文化学部)

・「演習1〜5/専門演習A・B」(国際文化学部)

・「言語文化特論」(総合人間科学研究科前期課程)

・「言語文化特論演習」(総合人間科学研究科前期課程)

・「近代システム変容論」(総合人間科学研究科後期課程)

 

略歴:

  1967年,鳥取市に生まれる.

  1987年,鳥取西高等学校卒業,大阪大学文学部入学.

  1991年,同大学卒業,同大学大学院文学研究科前期課程入学.

  1993年,同課程修了,後期課程入学.

  1996年,同課程単位修得退学.

  1997年,同大学大学院にて博士(文学)の学位を取得.

  2000年,神戸大学国際文化学部講師.

2001年,同助教授.

 

主な論文:

・「「書を読むは書を看るに如かず」−荻生徂徠と近世儒家言語論−」,岩波書店『思想』809号,1991年11月.

・「読めない書物を読むこと,あるいは『論語徴』という作業」,大阪大学文学部日本学研究室『日本学報』第13号,1994年3月.

・「近世儒家言語論の成立と波紋−『語孟字義』から『弁名』へ−」,ぺりかん社『江戸の思想』第2号,1995年10月.

・「《命題》から《発話》へ−18世紀日本における《儒学史》の成立と儒家的知の変容―」,懐徳堂記念会『懐徳』第64号,1996年1月.

・「近世儒家の経世論−相剋する〈徳川日本〉の諸表象−」,ぺりかん社『江戸の思想』第3号,1996年2月.

・「板行儒書の普及と近世儒学」,ぺりかん社『江戸の思想』第5号,1996年12月.

・「18世紀中・後期における儒家的知の位相」,大阪歴史学会『ヒストリア』第153号,199612月.

・「武士道論の成立−西洋と東洋のあいだ−」,ぺりかん社『江戸の思想』第7号,1997年11月.

・「宗教意識と帝国意識―世紀転換期の海老名弾正を中心に―」,柳炳徳・安丸良夫・鄭鎮弘・島薗進編『宗教から東アジアの近代を問う―日韓の対話を通して―』,ぺりかん社,2002年.

・「『徂来先生答問書』再考」,ぺりかん社『江戸の思想』第10号,1999年10月.

・「近世女訓書における書物と読者―「女小学」を手がかりとして―」,女性史総合研究会『女性史学』第11号,2001年7月.

・「成立期帝国日本の政治思想―民友社系知識人の場合を中心に―」,比較文明学会『比較文明』第19号,2003年12月.

 

研究関心:

  参考までに,私の研究関心のこれまでの推移について述べてみたいと思います.

  私は,近世日本を代表する儒者荻生徂徠(1666-1728)の思想史的研究から,研究生活を始めました.私の初期の論文は,言説分析の手法によって荻生徂徠の言語論や経書解釈に検討を加えたものです.その後,私は,徂徠を不可欠の構成要素とする当該期の思想史的展開を“18世紀”という枠で切り出してそのなかに彼の知的営みを位置づける,という展望のもとで研究を進め,学位論文『荻生徂徠と18世紀儒家思想』をまとめました.そこで私は従来とは大きく異なる近世思想史の展望を提示しています.

  ところで,私の学位論文の主要な部分をなしていたのは,相当に抽象度の高い言説分析でした.ある時期以後,私はそのことをあきたらなく思うようになり,むしろ思想史と社会史の接点のようなところで歴史を書くことはできないか,と考えるようになりました.そのような模索のさしあたっての成果が,書物論・読書論の観点から17世紀における朱子学の社会的受容を論じた「板行儒書の普及と近世儒学」(1996)であり,18世紀の武士階層における儒学の受容を具体的事例に即して明らかにした「18世紀中・後期における儒家的知の位相」(1996)です.この系列の仕事は,(遅々として進んでいないのですが),現在も進行中です.

  さて,いま述べたのは,“抽象度の高い言説分析から思想の社会史へ”とでもまとめるべき研究関心の移動についてですが,ちょうど同じ頃に,私は,近代日本の問題をも正面から論じていきたい,と思うようになりました.近代日本において「武士道」が「国民道徳」の重要な一環として再発見されるに至るプロセスを跡づけた「武士道論の成立」(1997)や,世紀転換期の日本における宗教意識の変化と当該期における帝国意識の醸成との相関性を指摘した「宗教意識と帝国意識」(1998)は,国民国家論や帝国意識論から理論的に学びながら上記のような研究関心の変化に実質を与えようとした,試論的論稿です.このような方向性での仕事も,(これまた遅々として進んでいないのですが),現在進行中です.

  やや強引にまとめるなら,現在の私の研究関心は,〈思想の社会史〉的観点からの近世思想史研究と,〈世紀転換期日本の国民意識・帝国意識の批判的分析〉という観点からの近代思想史研究との2つにある,と言えると思います.


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