研究交流計画の概要


 
急増する移住や多文化化などが惹起している社会的・政治的・経済的な大変動は、もはや国内レベルの調査・研究の範疇には十分に収まらず、送出し社会と受入社会の双方を包摂する国際的な研究ネットワークによる真摯かつ迅速な共同調査・共同討議を必要としている。本プロジェクトでは、主に移住労働者を供給する側のアジアの研究者と受入社会の側にいる日欧の研究者とが、共同研究によって現代的な問題状況を共有したうえで、次の3つの研究交流を遂行する。
 

① 共同研究

毎年、いずれかの拠点機関に研究者が集結するたびに、それぞれの社会で移住者、その家族、支援者、政策策定者、公的・私的事業体、住民など様々なアクターを対象に、実証的調査を質的・量的両面 において共同で実施する。日本国内では、例えば神戸市や富山県や栃木県など外国人労働者の定住・定着化に際して様々な課題が生まれている地域において、国内の協力機関の助力を得ながら共同で現地調査を遂行し、日本国内の視点と移住労働の送出し社会の視点とを照らし合わせることによって、より安定的かつ持続的な多文化的コミュニティの構築を模索する。
 

② セミナー

拠点機関で毎年定期的に開催されるシンポジウムやワークショップで、社会学、政治学、人類 学、ジェンダー論、国際関係論、文化政策学等の知見を動員しつつ、「移住・福祉国家・人権」、「多文化化状況における地方都市の再興」などの共通テーマをめぐる研究発表と共同討論を重ねることを通じて、再生産労働の変容や新たな都市文化政策の構想などに関する認識の齟齬を埋め、より発展的な多文化的コミュニ ティを構築するための政策研究を行う。また、毎年の国際シンポジウムに併せて、ポスドクや博士後期課程学生の切磋琢磨の場としての《次世代セミナー》を若手研究者自身のイニシアティヴにより開催する。
 

③ 研究者交流

従来は特に予算の問題により研究者の相互交流は制約されていたが、特に神戸大学とアジ ア・EU の諸研究機関との間の研究者相互派遣をいっそう拡大することによって、研究者がお互いに派遣先での共同研究・調査に参加し意見交換を行うだけでなく、研究者養成に教員又は助言者として貢献すること を通して、研究・教育両面における連携を強め、大学機能のいっそうの充実と向上をめざす。

平成29年度の研究交流計画


① 研究協力体制の構築

初年度に整えてきた各海外拠点との協力体制の基盤を一層強化しつつ、海外拠点間の相互交流もこれまで以上に促していく。各共同研究で推進するサブテーマの確認も進んできたので、これを着実な研究成果に結びつけるべく、各拠点や研究者間での役割分担を含めた体制の一層の強化を進める。これらの目的のために、9月にナポリでセミナーを実施し、2月に神戸でセミナーを実施するほか、各共同研究における研究会を積極的に実施する。さらに日本から若手研究者を中心とした海外拠点への派遣(1〜2名を各2週間程度)、並びに海外拠点からの研究者受入(1〜2名を各4週間程度)行う。
 

② 学術的観点

各共同研究はいずれも学際的な研究体制となっているが、その特質は活かしつつも、既存のディシプリンへの学術的貢献も念頭に、各種の研究発表や学会等への参加を進めていく。
 

③ 若手研究者育成

9月のナポリ・セミナー、2月の神戸セミナーで「次世代セミナー」を開催するほか、若手研究者による各種研究会も実施を促す。また、各共同研究では若手研究者の参加をとくに重視して、国内外の研究者との交流を推進する。
 

④ その他(社会貢献や独自の目的等)

 神戸大学国際文化学研究推進センターのサイトに開設した本プロジェクト独自のHPを通じ、研究成果の発信体制を強化していく。自治体等との連携も進め、研究成果の社会還元を推進していく。
 

平成28年度の研究交流計画


① 研究協力体制の構築

日本側協力機関及び海外拠点機関との間で、共同研究を進める複数のサブテーマの確定と、各テーマでの5年間の協力体制を整える。5月に神戸で日本側協力機関の代表者を集めた会合を開いて意見交換と行動計画の確認を行い、10月に神戸で海外拠点のメンバーも加えたキックオフ・シンポジウムを実施し、9拠点間での相互交流と意見交換、研究上の役割分担について確認する。2月には韓国でいくつかのサブテーマに基づいたセミナーを開催し、共同研究を本格始動させる。この間、海外拠点との交流の窓口となっている神戸大学のメンバー並びに若手を中心とした海外拠点への派遣、及び海外拠点からの研究者受入を進める。
 

② 学術的観点

人文科学と社会科学の交差領域と理解できる国際文化学(Intercultural Studies)の重要課題に取り組むことから、政治学・国際関係論、社会学、思想・哲学、人類学、文化政策学、地域研究といった各々の学術分野の特長を活かした共同研究テーマの設定を進め、かつ共同研究間の連携の在り方についても検討を深める。
 

③ 若手研究者育成

10月のキックオフ・シンポジウムと2月の韓国でのセミナーの際に「次世代セミナー」を開催するほか、大学院生・ポスドクを海外拠点に派遣して交流とフィールドワークに従事する。海外拠点から若手研究者数名の受入も行う予定である。
 

④ その他(社会貢献や独自の目的等)

神戸大学国際文化学研究推進センターのHPを基盤としつつ、これを発展させて本プロジェクトのHPを作成し、各共同研究の成果を随時PDFで発信できる体制を整える。また、同センターが進めている地域連携事業や国際交流事業との連携も図り、研究成果の社会への還元を強化する。