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国際文化学部生としての就職活動

文化交流論 則武 里恵


 「神戸大学国際文化学部の則武里恵です。」この言葉を、就職活動中、何度言ったであろうか。その学生が、何学部であるかと言うことは、ほとんどの会社で問われることである。 私が国際文化学部の学生であるということは、就職活動中、いつも、ついてまわった。それまで、名前を名乗る時に、学部名を名乗ることなどなかった。それだけに、就職活動では、自分が国際文化学部であると言うことを、強く認識しざるを得なかった。その「学部」との付き合い方は、就職活動をする上でも、とても重要なことだろう。

 就職活動をし始めた頃、私は、国際文化学部の学生であると言うことが嫌だった。実際に、六甲台の学生に比べて、企業からのダイレクトメールも、リクルーターからの接触も少なかった。面接に行けば、「国際文化学部です。」といえば、「一体何をしてるの?」と聞かれることが多く、言わなくても分かってもらえる経済学部とか、法学部の学生が羨ましかった。自分で国際文化学部を選んだはずなのに、「どうせ入試の難しさなんて、そんなに変わらないのなら、六甲台の学部に行けばよかった。」と思ったことさえあった。

 皆さんも、こういう気持ちになる時があると思う。でも、今、私は、国際文化学部であるということは、決して就職活動の中で不利になることではなかったと思っている。私は、国際文化学部の中で、まじめな学生ではなかったし、成績も悪い。それでも、海外に対する関心は、強く持っているし、他の文化を学ぼうと言う気持ちも強いと思う。現在、海外に進出していこうとする企業は多い。そして、そういう会社には、相手の文化を受け入れながら、進出していくという姿勢が、必要だと思う。相手の文化を学ぶということを重視している会社は決して少なくない。そのような考え方は、国際文化学部の考え方に、通じる所があると思う。

 どうして、自分が、外国語学部でなく、国際文化学部を選んだか、とか、国際文化学部でどのようなことを勉強したくて、どのようなことを学んだかということを、もう一度考えてほしい。国際文化学部の勉強は、決して答えが出る勉強ではないけれども、きちんとした問題意識や、自分の意見をいえる学生は、企業にとって、魅力的だと思う。企業の人にとっては何をやっているか分からない国際文化学部の学生は、面接の時に、そのことについて話せる機会を、タダで与えられているのである。これは、経済学部とか、法学部の学生には与えられない、国際文化学部生の特権である。

 私が内定をもらった松下電器産業も、グローバル人材というのを、重要視していた。内定者の中には、留学経験のある人も多く、TOEICの点数も高い人も多かった。私は、留学経験もなく、英語も話せるわけでなく、このことは、私の中で採用過程からずっとコンプレックスになっていた。この間、配属面談というのがあって、その時に、採用課の課長さんと話をした。「海外部門に行きたいけど、私くらいの語学力では、だめですか?」と言う趣旨のことを聞いたと思う。その時に課長さんがおっしゃったことで、強く印象に残っていることがある。

 「海外部門では、語学力とか、留学経験を求めているわけではない。それは、あるに越したことはないけど、大事なのは、その国を知ろうと言う姿勢であって、そういう姿勢があれば、語学力とかは、後からついてくるものだと思う。そういう意味では、則武さんが、国際文化学部に行こうと思った気持ちとか、英語の通じるフィリピンでも、現地語で人に話しかけようという姿勢が重要なんだ。相手の文化を大事だと思わなかったら、普通現地語なんか勉強しようと思わないでしょう。だから、留学経験とか、語学力とかで、そんなに引け目を感じることなく、もっと自信を持っていいと思う。」

 その言葉は、本当にうれしかった。企業の人が、私の大事と思っていることを同じように大事だと思ってくれるということが、うれしかった。その時から、私は、国際文化学部で本当によかったなあと思うようになった。自分の考えは、間違いではなかったんだと自信が持てるようになった。

 国際文化学部の勉強は、自分でも、何をやっているのかよく分からないと思うことがあった。でも、自分の中で、興味のあることを一つでも見つけて、せめてそれについては、面接の時に、きちんと答えられるようにしておいてほしいと思う。私の場合は、それが、自分の好きなフィリピンとか、卒論のテーマだったインドの話であったが、そういうことを、いきいきと話せたことが、私の勝因だったと思う。

 私が、面接で勉強の話をするなんて…と笑われる先生もいるかもしれない。松下の人は、私の成績表を見て、ビックリしたかもしれない。でも、そんな私にでさえ、ちゃんと国際文化学部で学んだといえることが見つかった。だから、皆にも、絶対見つかると思う。そして、そういう意識をきちんと持ったら、国際文化学部で勉強したということを、不利だとか思わず、自信を持って臨んでください。国際文化学部だというだけで、落とすような企業があったら、「こんな良さが分からないなんて、かわいそう」と思ってあげましょう。国際文化学部であるということが、不利になるというケースは、ほとんどないと思います。

 大事なのは、自分がここで何を学んだかと言うことが、きちんといえることです。

 最後になりましたが、この間、皆さんの前で話をさせていただく機会がありましたが、緊張と時間の都合で、話をしきれなかったという思いがあります。リクナビの、先輩の就職体験談とかいうコーナーに、私が就職活動が終わったばかりの頃に答えたアンケートが、掲載されているようなので、もしよかったら、見てやってください。大学名も企業名も載せているので、すぐ分かると思います。

 では、今年も大変だとは思いますが、就職活動、頑張ってください。


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