•民族学2014(第3回)5月1日
本講義の前提となる問題
•東アジアの近代(20世紀)そして21世紀
→国民国家の生成と国境を超えた人の移動
→近代の矛盾する運動の方向性(資本主義市場システムと近代国家・国民文化)
グローバリゼーションとローカリゼーション
→経済・政治・社会・文化の齟齬
九州・太宰府天満宮
USAグローバル化の「シンボル」としてのグラウンド・ゼロ(爆心地)
(9/11)
①「グローバル化」-何が新しいのか
②東アジアの複数の「グランドゼロ」と、現代に復活した「鬼神」(御霊)、召喚される「妖怪」
③緊張する東アジア
④問題を見る視点:identification
東アジアにおける複数のグラウンド・ゼロ
植民地支配
原爆投下、敗戦(極東軍事裁判、ソ連参戦)
独立・解放と分断国家の成立
冷戦構造下の紛争(民族内抗争に外部が介入):国共内戦、朝鮮戦争
→グローバル化の干渉とナショナリズムの高揚
東アジアのturning point
1890年代 近代の「浸入」
国民国家・民族の形成
1940年代 戦争と冷戦構造の形成
一民族国民国家の完成
1990年代 グローバリゼーションの「浸入」
民族国民国家の揺らぎと「地球化」
東アジアをめぐる緊張関係
これまで以上に、「文化」が経済、政治に大きな影響を及ぼす状況
国家と国家の問題と、地域レベル、市民レベル、さらには個人の問題が交錯する状況
復活した「鬼神」、召喚される「妖怪」
開かれた文化、経済と、国家に閉じた政治、両者の間できしむ「地域主義」
VS
グローバル化という「妖怪」
→冷戦構造化で、単一民族国民国家という効率性で社会的制度の整備・文化的標準化、経済発展を遂げてきた朝鮮半島、中国、日本だが・・・
緊張する現在の東アジア関係
中国←→日本
教科書問題(歴史認識)、尖閣諸島、日系企業の進出、反日デモ、戦後賠償問題、靖国参拝、台湾問題
韓国←→日本
教科書問題(歴史認識)、独島(竹島)、経済水域(漁業資源)、戦後賠償問題、靖国参拝、
日本←→北朝鮮
北朝鮮拉致、核・ミサイル開発、戦後補償問題、歴史認識、朝鮮総連
韓国←→北朝鮮
統一問題、援助、核開発、脱北問題、拉致問題
中国←→北朝鮮
援助、脱北問題、領土問題、朝鮮族
韓国←→中国
韓国企業進出、脱北者問題、北朝鮮問題、朝鮮族、領土問題(歴史認識)、朝鮮戦争、文化遺産問題(歴史認識)
グローバル化の影の下で:
ナショナリズムの基底にあるもの
東アジアにおける民族・国家の「神話」=「血の論理」
「国民国家」「ナショナリズム」「民族主義」など近代初期の制度、理念を脱領域化するグローバリゼーション
個人のテロリズム、国家のテロリズム、国際ネットワークのテロリズム
欠落する他者への想像力
あらためて考えてみたいこと
「くに」(国民国家)を所与の単位としてではなく、とらえなおす。
地域社会における国際化???
近代化の中で形成されてきた韓国・朝鮮(日本・中国・台湾)が、近代化の延長上であるグローバリゼーションにその枠組みを浸食されつつある今日的状況。
普通とは?なにか。
文化人類学・民族学の視点
大学で学ぶこと
知識ではなく、視点、方法
→知識や情報は社会の変化で変わっていく。
cf.インターネット
異文化理解と自文化中心主義(ethnocentrism)の二つのタイプ
政治的自文化中心主義
異文化を自文化より劣ったあるいは異常なものと位置づける理解の仕方
認識上の自文化中心主義そうしているとは知らずに自文化の論理で理解
政治的自文化中心主義
異文化を異常性・後進性・無知・非科学性などに結びつけ、自文化をその対極である正常性、先進性、知識、科学性に位置づける
素朴な人々、自然に近い暮らしといった一見、肯定的な見方も政治的自文化中心主義
認識上の自文化中心主義
異文化を自文化のものの見方や価値観で理解する立場
「人間はどこでも同じ」だからとして、異文化を理解する際に自文化における考え方を、無自覚に適用して異文化を誤解する。
→わからないものをわからないものとして捉える態度、複雑なものを複雑なままに見据える知的体力の重要性。
→相対的なズレを楽しむことと「寛容さ」
公定化した自文化中心主義
国民文化の形成
「異質な」文化を排除、あるいは周辺部に配置しつつ、内部の標準化が図られる。外部に対しては差異化