7月7日のフォローアップ資料

1.なぜフランス、ドイツはイラク戦争後、米英に歩み寄ったのか?どういうメリットがあったのか?

アメリカ、イギリスはイラクの戦後復興を、戦争に「貢献」した米英とその同盟国中心に進めようとしたが、フランス、ドイツとしては、再び米英に強硬に反対すると、ますます米英との関係が悪化する上に、完全に、イラク復興に参加できなくなってしまう恐れがあるので、米英が国連決議をもとにイラク復興を行なえるように協力した。

2.同じ国内で民族・部族・宗教などの違いで対立しているならば、それぞれ別の国を作ってしまえばいいのではないか?

第二次大戦後、アジア・アフリカで多くの独立国が出来た時に、「民族自決(自分の民族のことは自分で決める)」ということがスローガンになって、「国民国家」が作られたが、実際には全ての部族が対等の国を作ることはできなかったので、同じ国の中で権力を得た主流派民族・部族と、権力を得ることができず、抑圧された少数派民族ができることになった。これはアジア・アフリカの新しい独立国だけでなく、カナダのケベック、イギリスの北アイルランド、スペインのバスクなど先進国でも分離独立しようとする少数派勢力が存在している。全ての民族・部族が完全に独立して国を作るのは経済的にも政治的にも難しいし、新しい国ができてもまた新しい分離主義勢力がでてくるので、「民族自決」を厳密に実現するのはますます難しくなってきている。

3.非同盟諸国というような中立な立場を保つことが一番難しいのか?

中立というのは、常に片方からは「相手より」だと見られがちであるし、自分の味方につけようとする働きかけ(経済・軍事援助などをちらつかせて)があるので、実際、難しいことである。国内でも政府を作る「与党(自民党)」、政府に対する「野党(社会党・共産党)」の主張がはっきりしている場合は、わかりやすいが、二つの間にいる『中道政党(例えば1970−80年代の民社党、公明党、社民連など)』というのは主張がわかりにくく、与野党どちらかに埋もれがちである。

4.アメリカが弱くなることはありえないのか?

軍事面でのアメリカの優位は簡単に崩れることはないが、1980年代にそうだったように、経済面でのアメリカの圧倒的優位というのは、EU(ヨーロッパ連合)の台頭やアジア諸国の経済成長、中国の経済発展など様々な要因やアメリカ自体の財政事情(軍事費や減税などの財政政策の失敗があった場合など)で揺るがされていくものと思われる。

5.アメリカは日本の軍事についてどう思っているのか?

冷戦時代は、アメリカは日本がアメリカに軍事的に依存する代わりに、アメリカ軍を駐留させて、その経費を負担させ、経済政策などでも軍事面でのケアを背景に日本側に妥協させる方針だったが、冷戦終結後、湾岸戦争の場合にみられたように、日本側にも自衛隊の派遣など、経済面だけでなく、日本独自の軍事的な負担を求めるようになってきた。日本が軍事的にアメリカから自立していくことに関しては、それを歓迎するグループ(アーミテージ国務副長官など)と、警戒するグループ(ジョセフ・ナイ・ハーバード大教授など)の両方存在し、しかもアジア諸国が日本が軍事的に力を増していくに警戒心が強いので,アメリカ側としても日本が軍事的独立性を高めていくことは引き続き牽制していくものと思われる。

6.最近、アメリカ兵が日本女性を暴行する事件がよく起こっているが、アメリカ側はどのように対処しているのか?

「日米関係」の回に説明したが、日米地位協定では、米兵が事件を起こした場合、起訴までは米側が容疑者の身柄を拘束することになっている。1995年の少女暴行事件後、殺人や強姦など凶悪事件に関してのみ、起訴前の身柄引き渡しに米側が「好意的考慮」を払う運用改善が図られたが、実際に引き渡されたのは2001年に沖縄県北谷町で起きた強姦事件など2件のみに過ぎなかった。昨年の強姦未遂事件では、容疑の少佐が否認し、引き渡しは拒否され、県民の間に強い不満が残っていた。今年5月25日に沖縄県金武町で起こった米海兵隊員による強姦致傷事件では、6月16日朝に沖縄県警が逮捕状を取り、日米地位協定の運用改善合意(95年10月)に基づき、18日夜、米側から起訴前の身柄引き渡しを受けた。

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