■「ポワレとフォルチュニィ」展

東京都庭園美術館で開催中の「ポワレとフォルチュニィーー20世紀モードを変えた男たち」展に行ってきました。アール・デコ様式の旧朝香宮邸の建物と、同時代のモードが、ジャスト・フィットな展覧会。とても素敵でした。

開催期間:2009年1月31日〜3月31日

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正面入り口

奥に見えるのは、ルネ・ラリック作のガラス・レリーフの扉です。

1933年竣工の建物の室内装飾を担当したのは、主にアンリ・ラパンですが、このガラス扉と大客室、大食堂のシャンデリアはラリックです。

旧朝香宮邸のアール・デコ装飾については、庭園美術館のHP参照。






このガラス・レリーフを前にして、左がポワレ、右がフォルチュニィのドレス。
今でもまったく古さを感じさせないドレスで、服飾の「モダニズム」を感じます。

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マリアーノ・フォルチュニィMariano Fortuny (1871-1949)
 (←プルーストやポール・ヴァレリーと同年の生まれですね。)

スペインのグラナダ生まれ。画家であった父親の死後、1875年に母方の叔父が画家として活動していたパリに移る。1890年に、イタリアのヴェネツィアに移住。以後、その生涯のほとんどをその地で過ごす。
デザイナー以外に、画家、版画家、写真家としても活動。一時期、ロダンのアトリエにいたこともある。
また、舞台芸術(とりわけバレエ)の美術や衣装、照明技術の開発にも大きな関心を示した。1906年には、パリのある貴族の邸宅内の劇場で照明装置を制作、そこでの最初のバレエ上演に際して、彼のテキスタイル「クノッソス」が初公開された。それはクノッソス宮殿の遺跡から発掘された文様を染め付けた大きな透き通る絹織物で、バレリーナがショールのように身に巻き付けて踊った。
翌1907年から、「クノッソス」を発展させ、おそらく日本の型染めにヒントを得たステンシルの手法で(彼は日本の型染めの型を多く所有していたという)、ルネサンスやサラセン、コプトなどの文様を、ベルベットやゴーズに染め付けたテキスタイルを生み出していく。これらは主として、日本のキモノを思わせる直線断ちで平面的な構造のガウンやコートに仕立てられる。
また同じく1907年に、彼のシンボルとなるドレス「デルフォス」を制作する。
(展覧会図録の解説より要約)

フォルチュニィと言えば「デルフォス」、上の写真もそのひとつですが、今回の展覧会ではたくさんの「デルフォス」を見ることができました。細かいプリーツを施した絹のサテン地で作られた、この究極のシンプルとも言うべきドレスは、古代ギリシアの衣服「キトン」に想を得たと言われます。その後、袖の形、ベルト、上着のヘムライン、裾の長さなどにさまざまなヴァリエーションはあるものの、この基本形は変わることなく、「デルフォス」は、20年代、30年代にも作り続けられていきます。

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この細かなアコーディオン・プリーツの製法については、特許申請書が残っているようです。それによると、「親指を使って襞を寄せ、襞同士を片方の手できつく隣の襞に締め付けたところで,卵の黄身を使った糊で固定してアイロンをかける、そして手で糊を除去してサテンにしなやかさを取り戻す」のだそうですが、再現は困難なようです。熟達した職人技が必要だったに違いありません。

このドレスの現代的な意義を、思いつくままに挙げてみましょう。
◆身体をコルセットから解放し、その「自然な」ラインを引き出したこと、しかしだからといって、身体の線をそのまま見せるのではなく、細かいプリーツがそれを流れるようなフォルムに変換し、動く彫刻のような美しい動きを作り出す。
◆形と色が非常にシンプルであること。装飾品は、留め具と重りを兼ねたヴェネチアン・ガラスのトンボ玉やベルトに限られ、色も非常に深みのある単色に限られている。

こうした特徴を一言でまとめるなら、「ドレスの構造自体が装飾を兼ねる」もしくは「フォルムそのものが装飾である」ということでしょうか。
その他にも、このドレスの現代的な利点はたくさんあります。

◆着脱が簡単、伸縮自在なので動きやすいのに、エレガント。
◆この上に、チュニックやジャケット、コートなどを重ねて、自由に組み合わせることができる。
◆保管に場所をとらず、軽量で持ち運びもしやすい。

実際、「デルフォス」を入れた箱が展示されていましたが、直径20センチほどの、小さなケーキの箱のようなものに入っていました。

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「デルフォス」はこんな箱に入れて販売され、保管するときも、ドレスのプリーツを保つために、決して吊り下げたりせず、このような形で保管することが必要だったようです。











左は、袖を変化させた「デルフォス」、右は「デルフォス」の上に、薄手の透き通る絹地にステンシルでプリントしたチュニックを重ねたもの。

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下の2点は、やはり「デルフォス」の上に日本のキモノにヒントを得たガウンを羽織っている。ガウンはいずれもビロード地に、型紙を使って、中世やルネサンス、東洋のモチーフを捺染したもの。

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フォルチュニィはとりわけ優れたテキスタイル・デザイナーであって、シンプルなラインは、その生地自体の美しさを浮かび上がらせるものでもありました。



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