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2011年度研究部プロジェクト「19世紀の科学と文化」主催
第3回研究会「『放射線被曝の歴史』再考:ポスト3・11における意義を探る」

日時:2012年2月6日(月)15:00~17:00
場所:大会議室(国際文化学研究科・E棟4階401)
入場:無料(参加自由)

プログラム
第1部 中川保雄『放射線被曝の歴史』増補再刊(明石書店、2011 年10 月)の紹介
第2部 フクシマと放射線被曝
      稲岡 宏蔵(科学技術問題研究会)
      中川 慶子(園田学園女子大学名誉教授)
第 3部 本書の意義について―最近の科学史研究の成果から
      塚原 東吾(神戸大学大学院国際文化学研究科教授)

チラシ
チラシ
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概要

 この度『放射線被曝の歴史』の増補版が再刊されました。著者の中川保雄氏は神戸大学教養部元教授で、アメリカの 原発開発の現地調査を詳細になされ、放射能の健康被害について豊富なデータに基づいてまとめられましたが、志半ばで病に倒れられました。今日的意義のある今回の増補版の刊行に助力された稲岡宏蔵さんと中川慶子さんをお招きし、「フクシマと放射線被曝」についてお話していただくとともに、最近の研究成果を交えて本書の現代的意義について考えていきます。

 

主催:異文化研究交流センター(IReC)
お問い合わせ:三浦伸夫(教授)miuranob◎kobe-u.ac.jp (◎を@に入れかえてください)


報告

感想:「『放射線被爆の歴史』再考:ポスト3・11における意義を探る」に参加して

 私が第2部を聞いて興味を持ったのは、3点ある。
 まず1つ目は2011年3-4月官房長官のコメントである。「100mSvは 直ちに健康に影響を与えるレベルではない」と言い、近くにたばこを吸う人がいる受動喫煙でのガンのリスクの方が高いと言い安心させようとしているのだ。他のリスクを比べたら大したことではないと政府は言い切るが、交通事故であれ、受動喫煙によるがんのリスクであれ、避けたいもの、リスクを減らすように努力しているものだ。それらのリスクを引き合いに出してまで原子力を擁護したい政府が必死すぎてみるのも痛い。
 次に興味深いと感じたのは「ヒバクシャ」の定義である。私の中で「ヒバクシャ」と言えば、原子力爆弾を落とされたヒロシマやナガサキの人々を指す言葉であった。それを『放射線被爆の歴史』では「ヒバク」を原爆被爆、核実験被爆、原発や核燃料サイクル被爆、X線 被爆、ウラン兵器による被爆など、あらゆる被爆の総称としている。そして「ヒバクシャ」を広い意味で捉え、ヒロシマ・ナガサキだけではなく原発施設で働く 労働者までもを含めている。去年のフクシマにおける原発事故でも、住民の安全や住民の避難は叫ばれているが、そこで事故の処理の為に働いている労働者たちは軽視されがちである。私は先日マイケル・ムーア監督の『SICKO』と言う映画を観た。そこには9.11の テロの時に、瓦礫の山を撤去するボランティアをした人々が出ていた。彼らは瓦礫の撤去で肺がやられて今でも喘息などで苦しんでいる。アメリカ政府はそうい うボランティアには治療費を全額出すと明言しているが、それを示す証拠や条件が厳しすぎて、払ってもらえていない人も大勢いる。福島にボランティアでやってきた人々が同じような状況にならないのか私は不安に思った。善意から動いているボランティアたちを見放すことのないように、ヒバクシャの定義を今一度考 えてみたいと思った。
 そして最後に、第2部を通じて私が一番感銘を受けたのは、稲岡先生、中川先生、2人の存在である。70歳になろうとしている中川先生は姿勢も良く、主張もはっきりとしており、私の周りにいる70歳の高齢者とはかけ離れていた。そして定年退職をしても、ご自分のライフワークとして原子力問題に取り組んでいる2人の姿勢に感動した。いくつになっても人は学ぶ姿勢を忘れてはいけないし、学ぶことに貪欲なものはいくつになっても若々しいものだと感じた講演だった。

田村千菜美(国際文化学部3年)


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