フィールドワークに基づく異文化理解と地域連携教育の推進:
――神戸周辺の在日外国人と地域社会についての実態調査を中心として――
プロジェクトの内訳
地域連携部多文化共生部門プロジェクト
代表者
岡田浩樹
分担者
王柯、伊藤友美、貞好康志、細谷広美、楯岡求美、小笠原弘毅、朴鍾祐
経費の出所
神戸大学研究教育活性化支援費
概要
(1) 何をどこまで明らかにしようとするのか,また実現しようとするのか
 本教育プログラムの第一の目的は、神戸周辺の在日外国人についてのフィールドワークを学部2・3年生に体験させることにより、在日外国人と直接交流し、異文化の理解、異文化交流、地域社会についてのリアリティを実感させ、明確な問題意識をもって異文化理解という今日的課題に取り組む姿勢を涵養することにある。また、第二の目的は、報告書にいたるデータ、資料の収集、分析などの作業過程を通し、問題を発見し、それを他者(社会)に還元するためのリサーチリテラシーとメディアリテラシーの能力を養成することである。本経費によって、学生の調査をサポートし、また在日外国人を臨時講師として依頼するが可能となり、かつ報告書を作成することで地域社会への貢献が可能となる。
(2) 独創的な点
 本教育プロジェクトは、多様な地域の専門家を擁している国際文化学部の教員がその知識や人脈を生かしつつ、地域社会に密着した異文化理解・交流の教育プログラムを提供しようと言う試みである。これに先立つ平成17年度にアジア・太平洋文化論講座の教育プログラムとして「神戸周辺の在日外国人」に対する調査実習を実施したが、その教育効果が高く、協力をいただいた在日外国人の諸団体、住民の方々からも継続を望む声があった(添付資料参照)。
 本プロジェクトは、その実績を踏まえ、規模を拡大し、2年次から3年次にかけてのプログラムとして展開する。また神戸華僑博物館、神戸華僑同文学校、コリアNGOセンター、神戸モスクなどの在日外国人諸団体との協力、連携を継続的に深め、成果を蓄積していく。これにより、学部としての一貫した異文化理解・交流の教育、神戸を中心とした地域社会との連携を進めるところに、その独創性がある。
(3) 意義など
 神戸大学という立地を生かした異文化理解教育の体験的教育の推進、地域社会との連携を中心的な意義とする。
(4) 研究・方法
 教育プロジェクトの実施に際しては、受講学生を担当する在日外国人によって、いくつかの班に分け、これをフィールドワークの単位とする。まず教員による日本の在日外国人の現状、当該文化についての基礎的な学習をし、加えて神戸の在日外国人や関連NGOの方を講師として招き、フィールドワークの対象についての具体的な情報を修得させる。   ついで、各班が単位となって、予備的な調査をおこなう。この予備的な調査は、教員がアドバイスをする他に、当該文化を研究対象とする大学院生、留学生がTAとして同行し、言語などの問題を含めてサポートする。また、調査にあたっては神戸華僑博物館、コリアNGO、関西イスラム協会などの地域諸団体と連携する。予備調査の後は、受講者各自がテーマを設定し、フィールドワークを実施する。調査の過程で、在日外国人関連のNPOの活動やイベントには、教員と相談の上、積極的に加わることを勧める。例えば南京町の春節祭りの中国獅子舞などへの協力などが挙げられる。最終的には、調査の成果を報告書として印刷し、関係諸団体や自治体、報道機関に配布し、教育活動の成果を社会的に公開し、また蓄積された資料の有効利用を検討し、次年度以降のフィールドワーク、さらなる研究成果への展開をはかる。
(5) 期待される具体的な効果
 期待される効果は、第一に異文化理解、交流の諸問題について、学生が具体的な知識、関心を持ち、それを研究していく視点と方法論を修得する点にある。場合によってはその内容を卒業論文に発展させることも視野にある。第二に、班ごとの分担制、共同調査、さらには報告書の執筆、編集、印刷の作業工程を通して、学生の自主性や能動的な学習の態度が涵養される点である。第三に、国際都市神戸に立脚した教育プログラムとして、神戸の在日外国人の現状や生活の記録を残し、地域社会に貢献しうる点がある。在日外国人との交流、諸活動への寄与、さらには地方自治体の国際交流プログラムへの情報提供などの効果が期待される点である。第四に、フィールドワークに大学院生がTAとしてサポートすることにより、学部から大学院まで一貫した教育プログラムとして、アカデミックスキルの習得、さらに大学院生自身の実質的なティーチングキャリアとなる点も、本プログラムで期待される効果である。
(6) 今後の展開
 本プログラムは学部学生の教育を主な目的としているものの、フィールドワークによって集積されるデータや知識、ノウハウは大学院の研究レベル、あるいは地方自治体の国際交流プログラムに活用しうる内容である。そこで、こうしたデータ、関連資料を学部付属の異文化研究交流センターに蓄積し、さらに発展させることで地方自治体の多文化共生プログラムや在日外国人関連のNPO活動など、地域社会の諸団体、活動に大学として貢献することが可能であり、大学院教育、地域連携研究も含めた異文化研究交流センターのプロジェクトとして展開しうる。また、フィールドワークから報告書執筆にいたる教育プログラムを異文化理解・交流プログラムの方法として、洗練させることで、国際理解教育プログラムに寄与しうる教育法を開発しうる。さらに在日外国人、国際交流の諸団体と教育プログラムを契機とした継続的な連携を深めることで、今後の異文化研究、交流のさまざまな大型プロジェクト企画への協力、展開が期待される。
活動状況 (シンポジウム、報告書等)


● 2007年3月


2007年3月発行
編: 神戸大学国際文化学部
異文化理解フィールドワーク演習班
A4版 120ページ

本報告書については

岡田浩樹研究室
hokada*kobe-u.ac.jp

( 迷惑メール対策のため
@を*に変えております。
*を半角の@に変えて
お送りください
。)

にお問い合わせ下さい。
当プロジェクト関連授業
国際文化学部 2006年度後期 特別演習
「異文化理解フィールドワーク」
「神戸周辺の在日外国人(3)
―ベトナミーズ・コリアン・チャイニーズ―」

報告書完成
<目次>
本報告書について 岡田浩樹 (1)
【在日ベトナム班レポート】
在日ベトナム人のコミュニティ (10)
長田に住む在日ベトナム人 ~ベトナム文化祭を通じて~ (21)
花を咲かせて ~MCナムとラップ~ (28)
国際化の中での地域社会の可能性
~在日ベトナム人社会を通じて~
(39)
在日ベトナム人にとっての日本語と母語 (49)
【コリアン班レポート】
在日コリアンの祖国歌曲との関わり (62)
在日コリアン・民族を伝える場 (73)
在日コリアン予備研究レジュメ 在日コリアン班 (88)
【チャイニーズ班レポート】
神戸華僑と獅子舞 (95)
神戸「世界華商大会」への期待 (104)
中華料理店の事例にみる新華僑の進出 (111)
関西に住む華僑のための華僑メディア研究試論 (115)

topへ↑
● 2007年2月9日
当センター協力
21世紀文明研究シンポジウム
「平和の技術(人間の安全保障、多文化共生)」


<主催> (財)ひょうご震災記念21世紀研究機構
<日時> 2007年11月21日(火) 13:30-19:30
<場所> JICA兵庫国際センター
<共催> 汎太平洋フォーラム
<テーマ> 平和の技術(人間の安全保障、多文化共生)
<テーマと目標>
 21世紀は軍事大国、経済大国が世界の人々から尊敬されるのではなく、平和の技術と文化の力を以って世界の平和と繁栄に貢献する国が尊敬される。兵庫県は、1868年の神戸開港以来の日本国際化のリーダーであり、県民は1995年の大地震の教訓と経験を駆使して国際貢献したいとの熱意に燃えている。
 このような、兵庫県及び県民の意欲をふまえて、当機構としては、今後数年間21世紀文明の創造のキーワードとなる理念である「平和の技術」を発信していくとの視点から、特にアジア諸国との協力の枠組をいかにして構築していくかを研究するシンポジウムを開催することとした。
 その初年度である本年度は、2004年のインド洋津波に引きつづき2006年5月末のジャワ地震による被害を受けたインドネシアを中心にアジアと日本の間の協力の枠組みのあり方について、防災、保健・医療、経済・都市問題(まちづくり)、多文化共生という「平和の技術」にかかる4つの分野での各分科会において、日本側パネリストや一般の参加者が討議を行う。そして、討議結果を8人のパネリストによりパネルディスカッションを行い、それら分野での向う数年間の行動計画を提案し、それらを統合した「平和の技術に関する兵庫アクションプログラム」を打ち出す。
<構成>
     (1)基調講演     JICA黒木理事
     (2)分科会     防災、保健・医療、経済・都市問題(まちづくり)、多文化共生の4分科会
     (3)パネルディスカッション     
分野 パネリスト
日本側 インドネシア側
防災 浅野寿夫
(神戸学院大学学際研究機構防災社会貢献ユニット教授)
スプラプト・シスオスカルト
(ガジャマダ大学工学部講師)
保険・医療 森口育子
(兵庫県立大学教授)
スナルティーニ・ハプサラ
(インドネシア看護協会会長、ガジャマダ大学医学部看護学科長)
経済・都市問題(まちづくり) 小林郁雄
(人と防災未来センター上級研究員)
ヌルール・アチャヤ
(インドネシア大学経済学部教授)
多文化共生 岡田浩樹
(Hem21非常勤研究員、神戸大学助教授、神戸大学異文化研究交流センター)
 
     (4)コーディネーター     須藤健一 (神戸大学付属図書館長)

topへ↑
● 2006年11月2日
ソウル大学国際大学院調査研究チーム
センター来訪
 日本における多文化共生についての大学の活動、教育の事例についての調査の一環と して訪問されたもので、 岡田教授が窓口になって、IReCの活動について説明しました。 このプロジェクトはソウル大学国際大学院の韓榮恵教授を中心としたチームで、 日本の多文化共生の現状および、大学や地域の取り組みについて 神戸を中心とした集中調査を行っています。 IReCおよびIReCが支援している「異文化理解フィールドワーク」の事例は 今後の韓国における多文化状況、大学の活動を考える上でも参考になるとの事で、 報告書に掲載したい旨の申し込みをいただきました。

topへ↑
● 2006年度後期
当センター協力セミナー
財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構主催
「21世紀文明研究セミナー」


 財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構主催「21世紀文明研究セミナー」が開催されます。当センターが協力している「平和の技術 多文化共生社会コース」では本校の教員による講義も予定されています。

<「平和の技術 多文化共生社会」コースの講義日程とテーマ>
2006年
10月3日(火)
岡田浩樹 神戸大学国際文化学部助教授 (東アジア研究・文化人類学)
テーマ 「現代世界における多文化共生の現状と問題」
10月17日(火) 岡田浩樹 神戸大学国際文化学部助教授 (東アジア研究・文化人類学)
テーマ 「現代世界における多文化共生の現状と問題」
10月31日(火) 木村 幹 神戸大学大学院国際協力研究科教授 (法学)
テーマ 「多文化共生とは何か‐理論的立場から」
11月14日(火) 木村 幹  神戸大学大学院国際協力研究科教授 (法学)
テーマ 「グローバル化の中の隣国関係‐ナショナリズムの中の東アジア」
11月28日(火) 金 世徳  関西学院大学非常勤講師 (政治学)
テーマ 「多文化共生社会とは何か‐自分の経験から」
12月12日(火) 金 世徳  関西学院大学非常勤講師 (政治学)
テーマ 「多文化共生社会と地方自治体の国際交流‐日韓の地方自治体の相互交流を中心に」
2007年
1月9日(火)
大石高志 神戸市外国大学助教授 (南アジア近現代史)
テーマ 「日本、アジア諸地域におけるインド系移民」
1月23日(火) 安井三吉 神戸大学名誉教授・神戸華僑歴史博物館研究室長 (歴史学)
テーマ 「神戸華僑のあゆみ‐移情閣と孫文記念館」
2月6日(火) 坂井一成 神戸大学国際文化学部助教授 (国際関係論)
テーマ 「多文化共生を促すヨーロッパの国際的取組み」
2月20日(火) 坂井一成 神戸大学国際文化学部助教授 (国際関係論)
テーマ 「変容するヨーロッパ民主主義と多文化共生に向けての課題」
3月6日(火) 安岡正晴 神戸大学国際文化学部助教授 (アメリカ政治論)
テーマ 「多文化社会アメリカの理念と実像(1)-人種・民族差別撤廃の戦い」
3月20日(火) 安岡正晴 神戸大学国際文化学部助教授 (アメリカ政治論)
テーマ 「多文化社会アメリカの理念と実像(2)-社会的少数派の権利と共生の模索」

セミナーに関する詳細はこちら(ひょうご震災記念21世紀研究機構HP内)をご覧ください。

topへ↑
● 2006年度後期
当プロジェクト関連授業
国際文化学部 2006年度後期 特別演習
「異文化理解フィールドワーク」


<日時および対象>
火曜5限、2年次および3年次対象
<授業担当者>
代表: 岡田浩樹
指導: 王柯、小笠原弘毅、伊藤友美、貞好康志
編集: 細谷広美、楯岡求美、朴錘祐

<テーマと目標>
 国際理解と国際協調に必要な視野を養うという本学部の趣旨について十分に理解し、神戸市を中心とするフィールドワークを受講者が経験することで、今後の専門的な研究を進めるための全体的な見通しもってもらうことが、この授業の目標である。また予備的な資料・情報収集、テーマ設定、フィールドワークおよび文献資料収集、分析、補足調査、報告書の執筆といった一連のアカデミックスキルを受講者に習得せしめることも目的とする。  講義は、基本的にフィールドワークを中心都市、これによって得られた資料による報告書の執筆が中心となるが、加えて学内外の講師を招聘し、フィールドワークに必要な予備知識や方法論についての講義を実施する。


topへ↑
● 2006年度前期
当センター協力講座
大学連携「ひょうご講座」

兵庫県内の4年制全大学等と兵庫県が連携して行なわれる大学連携「ひょうご講座」が開講されます。当センターが協力している「多文化共生社会と在日外国人」コースでは本校の教員による講義も予定されています。

<「多文化共生社会と在日外国人」コースの講義日程とテーマ>
2006年
5月17日(水)
岡田浩樹 神戸大学国際文化学部助教授
テーマ 「ともに生きる社会作り―多文化共生社会と在日外国人」
5月24日(水) 高 正子 国立民族学博物館外来研究員
テーマ 「在日外国人としての在日コリアン」
5月31日(水) 高 正子 国立民族学博物館外来研究員
テーマ 「在日コリアンの暮らしと地域社会」
6月7日(水) 五十嵐真子  神戸学院大学人文学部助教授
テーマ 「在日中国人の暮らしと地域社会」
6月14日(水) 立花由香 文部科学省在日ベトナム人児童教育嘱託
岡田浩樹 神戸大学国際文化学部助教授
テーマ 「在日ベトナム人の暮らしと地域社会」
6月21日(水) 立花由香 文部科学省在日ベトナム人児童教育嘱託
岡田浩樹 神戸大学国際文化学部助教授
テーマ 「在日外国人の教育問題―2世、3世は今」
6月28日(水) 貞好康志 神戸大学国際文化学部助教授
テーマ 「日本でムスリムとして生きること」
7月5日(水) 岡田浩樹 神戸大学国際文化学部助教授
テーマ 「多文化主義の展望と問題点-神戸、兵庫そして日本」



連絡先
岡田浩樹研究室
住所 〒657-8501
神戸市灘区鶴甲1-2-1    神戸大学国際文化学研究科 (A 320号室)
TEL/FAX 078-803-7476
E-mail hokada*kobe-u.ac.jp
(迷惑メール対策のため@を*に変えております。*を半角の@に変えてお送りください。)