神戸大学国際文化学研究推進センター主催オンライントークイベント
 

零れ落ちる声たちのために  

ー いまこの世界で「書く」ということ

 記録動画
 

 

概 要

 

 日 時

    • 2020年12月4日(金)14:00~16:00 

 

 場 所

    • オンライン開催(https://bit.ly/36hzE5Z
        * 2021年1月11日(月)まで上記URLでアーカイブ動画をご視聴いただけます

 

 登壇者

    •  温又柔(小説家)
    •  木村友祐(小説家)
       鋤柄史子(研究者・翻訳者)
       浜辺ふう(劇作家・俳優)

 

 司 会

    • 栢木清吾(神戸大学国際文化学研究推進センター協力研究員)

  

 趣 旨

 

  •  こぼれおちる【零れ落ちる】  
  •  [動タ上ー]
       ① 容器などからあふれて落ちる。   
       ② 花びらなどが散って落ちる。
       ③ 脱け落ちる。
       ④ 感情などが思わず表に現れてしまう。
       ⑤ 今までの主従関係を離れる。
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    • 日々世界には無数の声たちが溢れ出る。だが、それら一つ一つの声に等しく、相応の居場所が与えられていないという現状がある。ある声は「標準語」の響きから外れているとの理由で軽んじられ、またある声は発話者の出自や属性を理由になおざりに聞き流される。苦しい境遇を訴えるために振り絞った声、よりよい生を希求する願いの声ですら、沈黙という手段で既得権益を守る多数者たちから冷笑を浴びせられ、無言の同調を強いられることがある。持てる者たちに不都合な声であれば、「多様性の重視」の名の下に発言の機会が奪われることすら起きる。

 

    • このように零れ落ちていくさまざま声に、私たちはどのように耳を傾けていけるだろう? それを言葉として伝えていくためには、どのような姿勢と文体が必要になるだろう? 「書く」ことができるという己の特権については、どのような自省が求められるだろう?

 

    • 本イベントでは、このほど往復書簡『私とあなたのあいだ』を刊行された温又柔さんと木村友祐さんをお迎えし、こうした問いについて考えてみたい。日本語と台湾語と中国語のはざまを生きる人々の葛藤と愉楽を独自の「ニホン語」を編み上げながら描いてきた温さん、社会の中で疎外されかけている人々の苦悩と叫びを郷里・青森の南部弁を用いた作品で豊かに表現してきた木村さん。お二人のほか、メキシコ少数民族の文化と伝統を翻訳という観点から研究し、自身もスペイン語文学の翻訳を手掛けている鋤柄史子さんと、在日コリアンが多く暮らす地域で生まれ育った「日本人」としての当事者性をテーマとした演劇活動を続けている浜辺ふうさんにも議論に加わっていただく。小説、研究、翻訳、演劇とそれぞれのフィールドで、「他者」の声に寄り添ってきた4人の言葉のやりとりの中に、いまこの世界で「書く」ことの可能性と責任、そして喜びを聞き取ってほしい。

 

 主 催

    •  ・神戸大学国際文化学研究科・国際文化学研究推進センター(Promis)
    •  ・神戸大学先端融合研究環(人文・社会科学系融合領域)研究プロジェクト「移住・多文化・福祉政策に関する国際的研究拠点形成」 
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登壇者プロフィール

 

 温又柔(おん・ゆうじゅう)

    • 温又柔(おんゆうじゅう)
      1980年、台湾・台北市生まれ。3歳より東京在住。2009年、「好去好来歌」で第33回すばる文学賞佳作を受賞。両親はともに台湾人。創作は日本語で行う。著作に『真ん中の子どもたち』(集英社、2017年、芥川賞候補)、『台湾生まれ 日本語育ち』(白水社、2015年、日本エッセイスト・クラブ賞受賞、2018年に増補版刊行)、『空港時光』(河出書房新社、2018年)、『「国語」から旅立って』(新曜社、2019年)、『魯肉飯のさえずり』(中央公論新社、2020年)など。

 
 

 木村友祐(きむら・ゆうすけ)

    • 1970年、青森県八戸市生まれ。2009年、「海猫ツリーハウス」で第33回すばる文学賞を受賞しデビュー。小説に『聖地Cs』(新潮社、2014年)、『イサの氾濫』(未來社、2016年)、『野良ビトたちの燃え上がる肖像』(新潮社、2016年)、『幸福な水夫』(未來社、2017年)、『幼な子の聖戦』(集英社、2020年、芥川賞候補)。

 
 

鋤柄 史子(すきから・ふみこ)

    • 1986年、大阪生まれ。バルセロナ大学社会人類学専攻博士課程在籍。日本におけるマヤ文明の受容と文化翻訳、口語と記述のナラティヴの差異などに関心を持つ。現在はメキシコ・チアパス高地をフィールドに、人類学における翻訳作用を考察する。論文に“Vibración del pasado perdido. Discursos acerca de la otredad maya en el Japón de la posguerra [失われた過去が振動する:戦後日本における他者マヤについての言説]”, EntreDiversidades (Vol.7, No.1-14, 2020)など。翻訳作品にルイス・デ・リオン『時はシバルバーにて明ける』(島田淳子編『翻訳文学紀行II』2020年、所収)がある。

 
 

浜辺 ふう(はまべ・ふう)

    • 1993年、京都・東九条生まれ。朝鮮半島の文化と日本の文化が交わった地域で育つ。6歳のときに自分が「日本人」だと知らされ衝撃を受ける。以来、植民地支配の歴史を自身の問題として生きてきた。幼い頃から参加していた地域のまつり「東九条マダン」でマダン劇に出演したことをきっかけに演劇に興味を持つ。立命館大学を卒業後、韓国・高麗大学国際大学院に留学(2017年夏修了)。2018年6月、演劇ソロユニット〈九条劇〉を設立。上演作品として『一人芝居・浜辺ふう版ウリハラボジ』(2018年)、『エコー』(2019年)、『キルト』(2019年)などがある。 

 
 

 

 お問い合わせ

    • 栢木 清吾 kayanoki[at]harbor.kobe-u.ac.jp
 

 書籍紹介

    •   温又柔✕木村友祐
    • 『私とあなたのあいだ―いま、この世界で生きるということ』

 
 

    • 私たちは互いに無数の差異を抱えている。けれどマジョリティが自分の考えを絶対視したり、その特権性を自覚しないとき、マイノリティは声を奪われがちだ。
 
    • でも本当は誰もが、自分はここにいる、と言い始めることができるはず。みな本来、対等な存在なのだから。私たちが声をもつとき、歴史のなにかが変わるだろう。私も、あなたも、誰もがその主役なのだから。
 
    • 私たちがイキモノとして、のびやかに生きるための羅針盤。二人の芥川賞候補作家が交わす、圧巻の往復書簡。
  

 

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