-Les Maîtres sonneurs(1853年刊)『笛師のむれ』(岩波文庫、1937年刊)
ベリー地方の小村に住むふたりの少年ティエネとジョゼ、ティエネのいとこブリュレットは仲良しの幼なじみであった。成長したティエネはブリュレットに 恋するようになり、ジョゼは、ブルボネ地方からやってきたラバひきの青年ユリエルのおかげで、自分に音楽の才能があることに気づく。ジョゼはブルボネのユ リエルの家で笛師になるための修行をするが病気になり、ティエネとブリュレットが駆けつける。ジョゼは、ユリエルの妹でしっかり者のテランスに看病されて いた。やがて、ユリエルはブリュレットと結婚し、ティエネはテランスを妻にする。一方ジョゼは、強引に笛師の「組合」に入会し、流しの笛師として気ままな 生活を送っていたが、よその土地でそこの笛師たちといさかいを起こして殺されてしまう。この作品はサンドの田園小説の中でいちばん長く、筋もいちばんこみいったものとなっている。物語の舞台もそれまでよりずっと広くなり、ベリー地方とブ ルボネ地方、平野の生活と森の生活が対照的に描かれている。そしてまた、音楽に憑かれた青年、他の人々より抜きんでた感性と才能を持ったジョゼの悲劇が大 きな部分を占めている点が他の田園小説と違っている。