Spiridion

-Spiridion(1839年刊)『スピリディオン』(藤原書店、2004年刊)

  18世紀後半の北イタリアにあるベネディクト派修道院。そこで物語の語り手である若い修練者アンジェルは100年ほど前に死んだ修道院の設立者スピリ ディオンの幽霊を見る。アンジェルがそのことを自分の師である博学な老修道士アレクシに報告すると、アレクシは自分とスピリディオンの生涯について語りだ す。スピリディオンは裕福なユダヤ人の家庭に生まれたが、ドイツ留学中にルター派の新教に改宗した。そののち彼はカトリック教に近づき、数年後にはカト リック信者となってイタリアに修道院を建て、院長となる。だが、臨終のさいに彼は自分の遺言を誰にも見せぬまま棺の中に一緒に入れさせたのであった。その 後アンジェルは不思議な声に促されて地下埋葬所に降り、スピリディオンの棺の中から彼の遺稿を取ってくる。そこには人生の最後にスピリディオンがついに到 達した真理、つまり、キリスト教の時代は終わり、新しい宗教の時代が始まるのだということが書かれていた。
  幽霊や幻覚といったファンタスティックな要素と、思想家ピエール・ルルーの影響による哲学的・宗教的な内容が結びついたサンドの問題作のひとつ。

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