-「George Sand et le catholicisme」(仏語論文)『論集』44号、1989年、神戸大学教養部、pp.27-49
サンドの自伝『我が生涯の物語』を読む者はだれでも『スピリディオン』の主人公スピリディオンとアレクシの宗教的遍歴に作者自身のそれの反映が見られ ることに気づく。本論文ではサンドの宗教思想の変遷と『スピリディオン』の物語の展開とを比較検討する。まずサンドのおいたちと彼女が受けた宗教教育につ いて調べ、彼女の宗教思想における大きな転換点となった「聖職者の権威にたいする疑問」を考察し、それの発展である「カトリシスムの形骸化と聖職者の堕 落」という彼女のカトリシスム批判を検討する。そのあと彼女のカトリシスムからの離脱および政治・社会問題への開眼にいたる過程を調べ、最後に当時の有名 な宗教改革家フェリシテ・ラムネの影響について考える。1835年からの数年間サンドは彼と親しく交際し、彼の反法王庁的で急進的な宗教思想は彼女に『マ ルシへの手紙』を書かせ、またルルーの「人類教」へと彼女をむかわせることとなったのである。