-「La Terreur et l'image de Robespierre chez George Sand」(仏語論文)『近代』66号、1989年、神戸大学『近代』発行会、pp.1-10
1872年にサンドが発表した『ナノン』は最晩年の作者の革命観をあらわしたものであり、貧農の娘ナノンと見習い修道士エミリアンがフランス革命の嵐 に翻弄される物語である。この小説の主要登場人物のひとりであるコストジューは正直で理想に燃える弁護士であるが、革命の際にジャコバン派とロベスピエー ルの考えに共鳴し、やがて反対派を次々にギロチンに送らなければならなくなる。小説中で革命時代の農民の理想化された姿をとる主人公ナノンは、コスト ジューおよびロベスピエールをきびしく批判する。若い頃サンドが急進派の弁護士ミシェル・ド・ブールジュの影響で共和主義者となりロベスピエールを崇拝するようになったことを当時の書簡 等が明らかにしている。だが、二月革命とその挫折は、革命とそれにともなう暴力についての彼女の考えを変えさせることになった。しかし、それでもなお彼女 は社会改革にたいする熱意を生涯持ち続け、「決してテロリストにならず」ねばり強く辛抱強い革命家になろうとしたのであった。