『自立する女ジョルジュ・サンド』小坂裕子(NHK出版、1998年刊)
ごく一般向きのサンド伝として楽しく読みやすい本書のオリジナリティは第1章「ノアンの館を訪ねる」にある。ここでは現在サンド記念館となっているノ
アンの館を著者が訪れたさいの印象や現在の様子が報告されているだけでなく、サンド家3代の女性たちが残した料理のレシピのいくつかが紹介され、それらが
サンド一家のこの館での生活をほうふつとさせるしくみとなっている。著者は東京芸大出身、短大の音楽科で教鞭をとる女性。シルヴィ・ドレーグ=モワンの
『ノアンのサンドとショパン』の訳者であり、また1997年にはサンドの『マヨルカの冬』の翻訳に当時のマヨルカ島を描いたJ・B・ローランの貴重な絵を
そえたものを出版している。『自立する女ジョルジュ・サンド』の執筆意図について著者は「あとがき」で次のように述べている。「サンドが送ってくれるエー
ルを、自分だけのものにしておきたくない。自分が納得できる生き方をすること、希望を決して捨てないこと、そういったサンドの考えを伝えられたらと願っ
た。」(文責 坂本千代)