『愛と革命 ー ジョルジュ・サンド伝』坂本千代(筑摩書房、ちくまプリマーブックス68、1992年刊)
ジョルジュ・サンドの生涯と膨大な作品について、おもに彼女が作家として自立していく過程および二月革命との関わりに重点を置いて解説している。サン ドの作家としての成熟はまた人間としての成熟であった。ショパンのような芸術家や、医者、政治家などさまざまな仕事を持つ人々とつきあうにつれ、彼女の目 は労働者、農民、そして多くの女性たちの恵まれない生活に向けられるようになり、貧富の差と社会的不平等があまりにも大きい当時の社会(ルイ・フィリップ 王の七月王政)にたいする批判と改革への熱意を自分の作品に盛り込んでいったのであった。その頂点が『スピリディオン』『コンスエロ』『ルドルシュタット 伯爵夫人』であるといえよう。本書では特にサンドのこの3つの小説を検討し、また当時のサンドの師であった社会思想家ピエール・ルルー、宗教家ラムネの影 響等を分析している。なお、本書は高校生くらいの年代の読者を想定して書かれている。(文責 坂本千代)