『ショパンとサンド ー 愛の軌跡』小沼ますみ(音楽之友社、音楽選書20、1982年刊)
サンドとショパンの間でかわされた手紙は彼の死後サンドが焼いてしまったのでほとんど残っていないが、彼らが他の人々にあてた手紙や他の人々が彼らに ついて書いた手紙で、ふたりの関係を知ることができる。サンドの紀行文や自伝からも彼らの生活を知ることができるが、事実とはかなり隔たった記述があるこ とがわかっている。本書の著者はなるべくオリジナルな資料に基づいて客観的にふたりのロマンスの歴史をたどっていくことをめざしている。引用されている手 紙は英文のショパン書簡選集と仏文の書簡集から訳されており、またサンドの『マヨルカの冬』と『わが生涯の歴史』などがひんぱんに参照・引用されている。 内容は第1章「出会いの頃」、第2章「マジョルカの旅」、第3章「ノアンとパリでの生活」、第4章「破局への道、別離」。サンドの子供たちとショパンの関 係が特に詳しく述べられている。著者は他にもショパン関係の研究や翻訳書を出している。(文責 坂本千代)