『ジョルジュ・サンドへの旅』樋口仁枝(いなほ書房、2005年刊)
著者が勤務校カリタス女子短期大学の研究紀要に発表した8篇の作品をまとめたもので、いわゆる研究論文集とは違って、紀行文もほぼ毎回含まれている。
著者はサンドが晩年に孫娘たちのために書いた『おばあさんの物語』に端を発し、そこからサンドの人生をさかのぼり、その生き方にますます関心を深めて行っ
た。パリ、ノアン、マヨルカ島、ガルジレスなど、サンドゆかりの地の旅の記録にもなっているので、旅好きの読者には興味を持たれるかもしれない。掲載の写
真はほとんど著者の撮影による。サンドの作品、ことに『おばあさんの物語』には子どもたちへのメッセージがたくさんこめられている。それが現代でも全く色
あせていないばかりか、人生とは、仕事とは何かということを深く考えさせてくれる。今こそ、少年少女に、また若い母親たちにも読んでもらいたい作品だと思
う。(文責 樋口仁枝)