夏の思い出(ローテンブルク)

 夏は思い出の多い季節です。私が初めて外国に行ったのは大学3年生の夏休みでした。ゲーテ・インスティトゥートのドイツ語夏期講習で、2ヶ月間ドイツのローテンブルクという町に滞在しました。その時の体験はその後の私の生活や価値観に大きく影響したと思います。まず最初に、ホームステイと言うのが自分には向かないことがわかりました。気が利かないし、めんどくさがりやの私は他人のおうちではどうも落ち着けず、うまくとけ込めませんでした。(そのあと何度か留学した時はいつも寮にはいることにしました。)
 ドイツ語クラスには世界各国から年齢も職業もさまざまな人たちが来ていました。そんな人たちの中で、私が憧れと同時にある種の親近感を感じたのはアメリカから来ていた化学の教授とカナダ人の哲学教授夫妻でした。彼らは秋からしばらくドイツの大学に滞在するためドイツ語講習を受けていたのです。知的で優しげな彼らと2ヶ月の間毎日たどたどしいドイツ語や英語で会話した私は、その時初めて、大学院に進学して研究者になるという進路もあることに気づいたのでした。
 この夏期講習の時には、ビールとタバコも試してみました。アルコールは自分に合っていることがわかりましたが、タバコはあまりにまずくて2本でやめ、それ以後二度と試したいと思ったことはありません。

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