怒りについて

 腹が立った時どうするか、怒りの気持ちをどう処理するか、というのはなかなかやっかいです。もちろん、怒りの種類にもよります。世の不条理にたいして怒るとか巨悪の不正にたいして怒るとか、そういう「大きな」怒りではなく、もっとちまちました「相手の言うことが小憎らしい」とか「自分の言うことを理解してもらえない」と言った程度の怒りです。そんな非生産的な怒りは、できるだけすばやく解消してしまいたいのですが、これがけっこう難しい。相手に対して攻撃的な反論をするだけではなく、下手をすると近くにいる関係のない人にあたったり、くどくどと愚痴をこぼしたりしてますます状況を悪化させることになります。
 私の場合、怒りは外に対する攻撃性や破壊衝動と密接に結びついているようです。自宅にいて怒りがどうしても抑えられないときは、以前はシンクにコーヒーカップや茶碗を投げつけたりしました(ただし、古いものや気にいらない食器に限っていましたが)。外にいる時は、繁華街の歩道のあちこちにあった「ワニ叩き」(ゲーム機)でひたすら人食いワニを叩きのめしたものでした。でも、最近はワニ叩きを見かけないので、手軽な怒りの発散法がなくちょっと残念です。
 ここ数年は、何か非常に腹が立った時、まわりに人がいなければ声に出して思いきり不満をぶちまけることにしています。人がいる時、特にその怒りの原因となった人がいる時は、とにかくぐっと我慢して沈黙し、できるだけ早くひとりになって怒りを発散してしまってから、今後の対応を考えるようになりました。オトナの分別だと言いたいところですが、そもそも些細なことでむかついたり、怒ったりすることこそが間違いなのかもしれません。ちまちました怒りや嫉妬にとらわれてばかりいると、本当に怒るべき時や正当な怒りを行動に結びつけるべき時を見逃してしまいがちだからです。たぶん、そっちのほうがずっと深刻な問題なのではないかしら。

目次