赤毛のアン

 ただ今高知に帰省中です。何をしているかというと、必要があってモンゴメリー作「赤毛のアン」を読み返しています。少女時代に読んだ時はあまりおもしろいとは思いませんでした。カナダの田舎に住んでいる少女の学校生活や日常生活など(アンの言葉をまねれば)ちっともロマンチックではなく、そもそも(赤毛でおてんば、空想好きの)主人公にあまり共感をもてませんでした。それよりも同時代のウィギン作「少女レベッカ」、19世紀半ばのフランスのサンド作「愛の妖精」のほうがロマンスの要素もあってずっとおもしろかったのです。それに、外国の女子学生の日常生活の話よりは、血沸き肉躍る(?)「三銃士」「15少年漂流記」「ターザン」「火星シリーズ」などのほうが大好きでした。

 ところが、アンの話を今回読み返してみると意外におもしろいのです。そして、孤児アンを育てることになってしまったマリラとマシュウの目でアンを見ている自分に気付きます。そうすると、このおしゃべりでうっかりやの娘がなんだかいじらしく感じられてしまい、彼女といっしょに自分たちも変わっていく中年の兄妹の心情がよくわかります。年齢とともに本の読み方も変わっていくものですね。モンゴメリーがこの小説を書いた時は、今の私やマリラ・マシュウよりもずっと若く、アンの年齢のほうに近かったはずなのですが。良い文学作品は作者の年齢やその時代・社会を超えることができるのだということがよくわかります。

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