ホテル近くで

 古い友人が外国から来日したので、東京まで会いに行きました。彼らの泊まっているのは、皇居近くにある超高級ホテルで、私はそこにはもちろん泊まれないけれど、すぐ近くの中級ホテルに宿泊しました。その界隈は大きな劇場や高級ホテルがいくつかあり、ロールスロイスが走っていたり、裕福そうな観光客が多いのですが、近くの大きな公園に入るとホームレスの人がいます。今回私がショックを受けたのは、超高級ホテル脇の路上で女性のホームレスの人を見かけたからです。台車のようなものにバッグをいくつか積んで押して歩いていました。服は何枚もの重ね着で、ぱっと見ただけではホームレスとはわかりませんでしたが、異様な感じがしたのです。なぜだろうと一瞬考えたのですが、彼女の顔にまったく表情がないことに気づきました。歳はわかりません。50代ぐらいに見えましたが、本当はもっと若いのかもしれません。でも、感情を一切表さないうつろな目をして台車を押していく姿を見ると、いったいどんな事情を抱えているのだろうと心が痛みました。そして、次の日もほぼ同じ場所でその女性を見かけました。過剰なほどの富・贅沢と、大きな貧困がほとんど同じ場所に同時に存在している(それも日本の首都東京で)ということは、ニュースなどでもちろん知っていましたが、それが自分の目の前に現実のワンシーンとして立ち現れてくるとやはり大きな衝撃を受けてしまいました。

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