フランス語の本領

 スタール夫人の『ドイツ論』(1810年刊)にとても興味深い一節を見つけました。

 思想に立ち向かうにはドイツ語を、人と力を競うにはフランス語を使わなければならない。ドイツ語の力を借りて深く掘り下げ、フランス語を話して 目的に到達しなければならない。ドイツ語は自然描写にフランス語は社会描写に使うべきである。ゲーテは『ヴィルヘルム・マイスター』の中であるドイツ人の 女性に、恋人がフランス語で手紙をくれたので、彼が彼女から離れたがっていることに気づいたと言わせている。事実フランス語には、言外の言葉やあることを 言わないための言葉、約束することなく期待させたり、拘束することさえないのに約束するためなどの多くの言い回しがある。ドイツ語にはそんな柔軟性がな い。そしてそのままでよいのだ。(スタール夫人『ドイツ論1』梶谷・中村・大竹訳、第1部第12章)

 パリに生まれ育ったスタール夫人のこの言葉には重みがありますね。4月から大学で選択する第2外国語についてまだ迷っている学生さんにはぜひフランス語を履修するようおすすめします!

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