魚の夫婦生活

 「婚活」という言葉が若者に根付いてしまったような昨今ですが、去年9月に岩田勝哉先生(和歌山大学名誉教授)から伺った魚の話をなぜか思い出してしまいました。変わった生態を持つ何種類かの魚についてだったのですが、その中でも特に印象的だったのが、珊瑚礁に棲むカクレクマノミとダルマハゼの話です。
 ハタゴイソギンチャクに棲むカクレクマノミは一夫一婦のペアで繁殖します。卵からふ化した稚魚は海流に乗って遠くに運ばれながら成長して、住処となるハタゴイソギンチャクを見つけるわけですが、うまく雄雌のペアが出会えるとは限りません。そういう時は一方の雄が雌に性転換することになるのだとか。このようにどんな時でも繁殖できる仕組みになっています。また雌雄のペアが棲むイソギンチャクにやってきた稚魚は小さいままで、ペアの片方が欠けることがあれば、そこで新たな雌雄のペアができるのだそうです。
 ショウガサンゴの中に棲息するダルマハゼはというと、彼らも一夫一婦制であり、雄が卵の世話をするのです。この魚のすごい所は双方向の性転換ができることで、雄→雌→雄とか雌→雄→雌という変化が可能だそうです。性転換には1ヶ月ほどかかりその間には卵を産むことができません。それでも彼らのモットーは「遠くの異性よりも近くの同性」で、未熟体の時に体が大きいほうが雄になり、小さいほうが雌になってペアを形成します。でも、体を張って卵を守る役目の雄よりも、産むだけでいい雌の方が大きくなり、そうすると今度は夫と妻の両方の性転換が起こり、役割が変わるのだそうです。夫婦で理想的な育児分担を行う魚たちですね。それに比べて人間は・・・。

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