オーウェル『1984年』

 ジョージ・オーウェルの『1984年』を読みました。1949年出版のこの本は、全体主義的な近未来のぞっとするような管理社会とそれに反抗して敗れ去る人たちの物語であり、本当に救いのない悲惨な結末の小説です。私の好みの作品ではまったくなかったのですが、 どうしても必要があって、しぶしぶ読みはじめました。ところが、物語の最後の3分の1あたりになると、ほとんど休むことを忘れて一気に読んでしまいました。ものすごく陰惨なストーリーであるにもかかわらず、作品世界があまりにもリアルなため登場人物たちの運命が気になってどうしても途中で止まることができなかったのです。読んでよかったと思います。読む前と読んだ後では世界が違って見えるような作品だと思いました。そういう意味ではやはり20世紀を代表する傑作小説のひとつなのでしょう。でも、2度読みたい本ではありません。
 第二次世界大戦中のユダヤ人などの強制収容所のひとつとして有名だったポーランドのアウシュヴィッツ収容所は、そこで何が行われたかを忘れさせないために保存され、毎年世界中から大勢の来場者があり、フランスからも見学ツアーがいくつかあるそうです。昨年フランスの友人がそんなアウシュヴィッツ詣でをしてきて「2回行く必要はないが、いちどは必ず行ってみるべきだ」と言っていたのをなぜか思い出してしまいました。

目次