今更ながら『ノルウェイの森』を読んでみました。1987年刊のこのベストセラー小説にあまり興味はなかったのですが、最近読んだ村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』がおもしろかったので、この小説も買ってみました。でも、私にとってこれは「はずれ」でした。柴田翔の『されどわれらが日々』と堀辰雄の『風立ちぬ』を足して2で割って、エリック・シーガルの『ラブ・ストーリー』で味付けしたような作品だなという印象で、何がおもしろいのかさっぱりわかりませんでした。この本があれほど評判になったというのは信じられない感じです。でも、これは作品を読む時期によるかもしれない、とも思います。多感な10代前半くらいに読んでいたら、もしかしたら私もものすごく感動していたかもしれません。
20代初めのころ、必要に迫られてフローベールの『ボヴァリー夫人』を読みました。夢見がちな少女だった主人公が平凡な結婚生活に退屈して欲求不満で浮気を繰り返し、夫に隠れて借金漬けになったあげく服毒自殺してしまうというこの小説のいったいどこが優れているのか、と非常に疑問に思ったものでした。ところが20年以上あとになって読み返してみると、これが実におもしろいのです。メインストーリーはともかくとしても、主人公たちの造形や細部の描写や脇役などが実にうまく、「何も起こらない」田舎の生活でヒロインがいかに退屈し、自分の生活に絶望していたかが非常によく理解できたのです。
読者のそれまでの経験や、人生に対する身構え方や、未来に対する希望や予想によっても文学作品に対する評価は変わってくるのですね。
20代初めのころ、必要に迫られてフローベールの『ボヴァリー夫人』を読みました。夢見がちな少女だった主人公が平凡な結婚生活に退屈して欲求不満で浮気を繰り返し、夫に隠れて借金漬けになったあげく服毒自殺してしまうというこの小説のいったいどこが優れているのか、と非常に疑問に思ったものでした。ところが20年以上あとになって読み返してみると、これが実におもしろいのです。メインストーリーはともかくとしても、主人公たちの造形や細部の描写や脇役などが実にうまく、「何も起こらない」田舎の生活でヒロインがいかに退屈し、自分の生活に絶望していたかが非常によく理解できたのです。
読者のそれまでの経験や、人生に対する身構え方や、未来に対する希望や予想によっても文学作品に対する評価は変わってくるのですね。