古い書類を整理していて、意外なものが出てきました。今から20数年前、神戸大学教養部(国際文化学部の前身)に赴任した時に教養部広報誌に書いた自己紹介文です。あまりに懐かしいので、以下にその一部を引用します。
「思い出の中で、神戸の町と自分の専門分野であるフランスを奇妙な形で結びつけているのは、だいぶ前に流行した『そして神戸』という歌謡曲です。当時の私は高校生で、深夜放送のポップミュージック、読書(まんがを含む)、そして海外文通が趣味でした。フランス北部の小さな炭鉱町に住むリディという少女と文通していて、こちらの生活のことをいろいろ書いたり、自分の好きな写真やまんがを雑誌から切り抜いて送ったりしていたのですが、ある時、彼女が日本の音楽、それも今はやっているのを聞きたいと書いてきたのです。さあ、困った。私はテレビの歌番組は見ないし、ラジオで聞くのもアメリカやイギリスのポップミュージックばかり。いったい何のレコードを買おうかと思案しながらラジオをつけたとき、たまたまかかっていたのが『そして神戸』だったのです。そのいかにも日本的な(?)歌詞とメロディーを聞いて、こういうのでもフランス人にわかるかしらと思いながらレコードを送りました。すると、リディからおりかえし礼状がきて、「あなたのレコードをうちの父が気にいって何度も聞いています」。そんなわけで、フランス人の中年のおじさんと『そして神戸』のイメージが結びついてしまい、カラオケなどでこの曲がかかると、つい歌い手を見てしまうのです。」
『そして神戸』はクールファイブの1972年のヒット曲ですが、学生のみなさんはご存じですか?