シンディ

 12月は忘年会などでお酒を飲む機会が多いのですが、年齢のせいか以前と比べて二日酔いしやすくなってしまいました。このごろ時々思い出すのは、アメリカに留学していた時の学生寮のルームメイトだったシンディのことです。大学院生として留学した私より、アメリカ人の彼女は7つも年下でしたが、背丈も体つきも私よりずっと大きく、そのうえ7人きょうだいの長女として小さな弟妹の世話をしなれていたせいか、ひよわな日本人ルームメイトの面倒をせっせとみてくれたのです。彼女はとても敬虔なクリスチャンで、毎日曜日には教会に行き、毎朝6時に起きて1時間は必ず聖書を読むといったタイプの女の子でした。

 もちろんシンディ自身はお酒もたばこも口にしないのですが、他人に対して同じことを強要するようなことはありませんでした。私はタバコは吸いませんが、お酒はけっこう好きです。留学していたころは、言いたいことがあっても英語でうまく言えないストレスを発散させるため、時々日本人仲間で飲みに出かけて夜遅く帰ってきていました。そんなある日、私がシンディに「お酒を飲んでいる時はとても良い気持ちなんだけど、でもそのあとベッドに入ると必ずすごくのどが渇いて目が覚める」と言ったことがありました。そして、その晩も遅くまで飲んで部屋に戻ってきたのです。もちろん、早寝早起きのわがルームメイトはとっくに眠っていましたが、私のベッドわきの電気スタンドがついていて、そこには冷たい水の入ったコップが置いてありました。酔っ払いの私が彼女の心遣いに泣いて感動したのは言うまでもありません。

 帰国後もしばらくはシンディと手紙を交換したりしていたのですが、時の流れとともにいつしか音信が途絶えてしまいました。それでも、飲み会のあと、のどの渇きで夜中に目を覚ますと、彼女の穏やかで優しい笑顔が目に浮かびます。

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