近況: 2010年9月:一覧

会議の言語

 ギリシャから帰ってきました。レスボス島での会議(テーマは「風刺と文学」)のチェアマンはやはり大変でした。なにしろ演壇に上がるまで誰が発表するのかわからなかったからです。あらかじめもらっていたプログラム通りには進行せず、総合司会(?)の人が渡してくれるメモに従って、スピーカーを紹介すればいいだけなのですが、それでもけっこうハードでした。

 私の担当したセッションでは、まず最初にアルバニア人の女性がアルバニア語で話し、これにギリシャ語の訳がついたのですが、私にはさっぱり理解できませんでした。次の人はギリシャ人でギリシャ語。次の人はキプロス人でギリシャ語でしたが、英語のレジュメが配られたので、何の話をしているかはわかりました。その次はロシア人の女性。彼女はフランス語でスピーチしたので、これは理解できました。ところが次の発表者(女性)はイタリア人でイタリア語、そしてかなり長かったのです。やっと話が終わったと思うと、聴衆の誰かがイタリア語で質問し、それに対する答がえんえんと続きました。よっぽど途中で遮ろうかと思ったのですが、彼女の話のあまりの迫力(意味はわかりませんでしたが)に圧倒されてそのままにしてしまいました。こんな調子で約3時間、スピーカーは7人でしたが、通訳がついたりつかなかったりでした。

 翌日のセッションでは一時壇上で3人がかわるがわるしゃべっていたのですが、聴衆のひとりである私には何が何やらさっぱりわかりませんでした。(後で聞くと、スピーカーはアルバニア語で話し、それをロシア語とギリシャ語に訳していたのだそうです。)ちなみに、私自身の発表(フランス語)は前日の司会の仕事に比べるとずいぶん気楽でした。ただ、会場の半分くらいの人はフランス語が理解できなかったのではないかと思います。これらの全発表はギリシャ語に訳されて論文集にするのだそうです。(でも、ギリシャ語の読めない私には結局最後まで理解できない発表が多く残るわけですが。)

 そんなこんなでとにかく疲れる会議でした。いまどきここまで英語を排除した国際会議というのはめずらしいのではないかしら。でも、会議のあとは真っ青な地中海で泳ぐこともできて、なかなか楽しく貴重な経験をしてきました。

ギリシャ語

 今日から10日ほどギリシャに行ってきます。この旅行が決まってから『今すぐ話せるギリシャ語』という本を買いました。CDが2枚ついた、全くの初心者用の入門書です。ごく基本的な文法事項とあいさつ、自己紹介、感謝、おわびなど、日常会話ですぐに役立つ会話表現が1章ずつにまとめられています。ところが、最初に躓いてしまいました。文字のせいです。なじみのないギリシャ文字で書かれた単語(もちろん、かたかなで音がしるされているのですが)を読みとれず、「文字と発音の規則」部分でギヴアップしそうになりました。形のよくわからない文字(教科書中の文字のフォントが凝った形をしていて、鉛筆で書くとどんな文字になるのかがよくわからない!)にタックルするのがこれほどフラストレーションがたまるものだということに思いもよりませんでした。インターネットで「ギリシャ文字の書き方、読み方」といったページを見てやっと少しずつ文字の形と音が結びつくようになりました。

 教科書を全部やるのはまったく無理だと早々に見切りをつけ、この2週間ほどは最初の3章(「こんにちは」「私の名前は・・・」「コーヒーをお願いします」など)のみを繰り返して練習(1日20分くらい)してきました。でも、これらの表現をギリシャで使うことがあるでしょうか。私の場合、普通に旅行するのに十分な程度には英語とフランス語が使えるので、旅行中はそれらのみになってしまうかもしれません。最終目的地であるレスボス島での会議はフランス語とギリシャ語でやるそうで、あらかじめ送っておいた私の原稿はすでにギリシャ語訳していると主催者の人が電話で言っていました。そのご先方が送ってきた「プログラム」はすべてギリシャ語なので、自分の名前に見当をつけて発表日時を確認しました。そのさい私の名前の前についているギリシャ語の単語を、大変な苦労をしてネット上のギリシャ語・英語辞書で調べると「chairman」という訳が出てきました。チェアマンって何? 何をさせられるのか、ちょっと怖いのですが・・・。

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