阪神、淡路地域における民族文化伝承の現代的展開に関する研究
――淡路人形浄瑠璃を中心に――
プロジェクトの内訳
研究部プロジェクト
代表者
影山純夫
分担者
木下資一、藤濤文子、楯岡求美、寺内直子
経費の出所
異文化研究交流センタープロジェクト経費
概要
(1) プロジェクトの目的
 本プロジェクトは、地元・兵庫県の地域文化の掘り起こしと研究、研究論文など文字媒体、DVDなど視聴覚媒体による研究成果や記録資料の公開(さらに、将来的にはレクチャー・コンサート、ワークショップ等)による、研究成果の地域への還元を目的とする研究・教育プロジェクトである。兵庫県は実際にはたいへん広範な地域を包含しているので、ここではさしあたり、阪神、淡路地域に焦点をしぼる。「地域文化」も、阪神・淡路地域においては、いわゆる村落共同体に根ざした伝統文化、日本以外の地域からの移住者によってもたらされた異文化、さらには、最先端の現代文化と、さまざまな要素の複合によって成り立っている。本プロジェクトでは、このうち、村落共同体に根ざした伝統的な民俗文化である淡路の人形浄瑠璃を具体的事例に、現代社会という脈絡の中で伝統芸能が直面するさまざまな課題と新しい展開の可能性を、音楽・芸能はもとより、文化行政、教育、観光と地域活性化など多角的な視点から、教育と学生が協働して調査・研究、分析し、その成果を広く一般に還元・共有することを目指す。
(2) プロジェクトの必要性
 淡路人形浄瑠璃は、淡路島というローカルな土地に根ざした芸能でありながら、全国的に、また世界的に認知度が高い芸能である。しかし、他の地域と同様、生活形態の急激な都市化とグローバリゼーションの中で、さまざまな困難に直面し、現代社会におけるその意義を問われている。このような状況の中で、1)急激に変化しつつある地域の文化伝承の実態を記録化し、2)現代社会におけるその意義と役割を考え、3)研究世界を広く公開することによって、文化財の「共有財産」としての意識を高めることは、緊急かつ、きわめて重要な課題と考える。本プロジェクトは、また、教員だけでなく、学生が調査、研究に参加することにより、現代社会における地域文化研究の広い視野と深い洞察力を涵養し、将来それを活かした地域貢献ができる人材を育成することを目指す点においても有意義であると考える。

 淡路人形浄瑠璃に関するこれまでの研究としては、文化庁の芸能調査、兵庫県の芸能調査、ジャーナリストや郷土史家による、個人の芸談、芸歴の紹介がある。最近では、淡路人形浄瑠璃の伝承団体、自治体などによる観光客誘致のための紹介ウエッブサイトも多く見受けられる。これらのいわゆる郷土史的研究、紹介は、データとしては貴重な内容を多く含んでいるが、全体的視点としては、伝統の古さを強調し、称揚するものが多い。本プロジェクトでは、それらのデータをふまえつつ、国際文化学部に相応しい現代的視点から淡路人形浄瑠璃を考察する。

 淡路人形浄瑠璃は、阿波徳島や西宮の「人形まわし」を祖とし、大阪の文楽と密接な関連を持つ。しかし、大阪の文楽が、「文楽協会」として国の重要無形文化財に登録され、さらに近頃、世界文化遺産となって、ひたすらプロ化、高尚な古典芸能=ハイ・アート化の道を歩んでいるのに対し、淡路人形は、地域のいわゆるプロではない人々に支え続けられている「民俗伝承」である(こちらは国の重要無形民俗文化財に指定されている)。また、大阪の文楽が男性のみによって伝承される芸であるのに対し、淡路では、女性が多く活躍しており、ジェンダー的にも興味深い。そのうち何人かは、ほとんどプロとしての活動を行っており、鶴澤友路は、淡路人形の三味線弾きとして国内外での活動が認められて、女義太夫の演奏者として初めて人間国宝となった。最近では、保存会等の地域の伝承集団に加え、次世代育成のため、中学や高校の児童生徒のクラブ活動として人形浄瑠璃を行うという、学校教育と連携した動きも活発化している。このように、淡路人形浄瑠璃は、淡路島の地域文化であるとともに、国の文化政策や、自治体の地域興し、学校教育と連動しながら、変化している。そして、このような日々変化しつつある淡路の民俗文化について、調査記録を作るとともに、音楽・芸能、文化行政、教育、観光と地域活性化などさまざまな今日的視点から考察を試みる。

 また、研究成果の報告は、従来は紀要論文等、専門誌の文字媒体によるものが中心であったが、本プロジェクトの研究対象の性格上、論文に加え、DVD等視聴覚媒の成果物が有効であると考える。また、将来的には、淡路人形浄瑠璃のレクチャー・コンサート、または、ワークショップを異文化研究交流センター主催で開催できれば、淡路、および神戸周辺の市民に対し、広く、周知と理解を促し、無形文化財の「共有財産」概念の浸透をはかれると考える。
活動状況 (シンポジウム、報告書等)
● 2006年7月27日

当プロジェクト主催
講演会
「文楽と淡路人形の伝承について」

<日時> 2006年7月27日(木) 17:00-18:30
<場所> 神戸大学国際文化学部 E408号室
<講師> 後藤静雄氏
(京都市立芸術大学 日本伝統音楽研究センター教授)


● 2006年11月2日

当プロジェクト主催
講演会
「映像による民俗芸能の記録化について」
~カメラワーク入門~

<日時> 2006年7月25日(火) 15:00-18:00
<場所> 神戸大学国際文化学部 E408号室
<講師> 藤岡幹嗣氏  (フリーカメラマン、編集者)

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