研究部

 研究部では、「文化接触と異文化共存」「文化の普遍性と相対性」という課題を掲げ、それぞれ研究会やシンポジウムなどを通して、異文化研究を深めます。研究会やシンポジウムなどのための研究は、プロジェクト方式とし、外部資金や学部のプロジェクト経費などをこれに充当します。

文化接触と異文化共存

 この課題では、異文化共存の実現のための要件解明のアプローチとして、具体的な事例に則した探究方法を採用します。即ち、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、オセアニアなどにおける文化接触の歴史と現状、ならびに、文化接触を機に異文化共存が現実にどのようなプロセスを経て実現され、あるいは実現されなかったかを、様々な具体的事例に則して個人および民族のレベルで調査研究します。それによって、文化同士が接触する時に生じる受容と反発、支配と抵抗の諸相を分析し、どのようにして異文化共存が可能になるのか、あるいは逆になぜ衝突や支配が起こって共存が不可能になったのかを明らかにし、異文化共存のために必要な要件を明らかにします。

文化の普遍性と相対性

 この課題では、異文化共存時代における対話型社会の成立の前提となる、諸原理に関する理論的解明を行います。特に焦点を合わせるべきは、異文化共存の実現を妨げる、地域伝統文化の個別性と近代の普遍主義的理念との相克という問題です。

 冷戦後のポストコロニアルな状況の中で、異文化の共存を実現するには、各地域文化の独自の価値を尊重する多様性の相互承認が不可欠です。しかしそこには、民族文化のアイデンティティ・ポリティックスによって生み出される問題や、政治的な文化相対主義の主張から生じる問題が付きまといます。他方、個別地域文化を超えた普遍主義的理念の下に発展してきた近代文明は、その普遍性の実質に関して、ポストモダニズムやジェンダー論等により、西欧文化という歴史的起源の特殊性に関わる自文化中心主義、男性中心主義等、様々な制約が指摘されています。

 これらの制約や困難を解決し、異文化共存の実現の障碍となる原理的諸問題を解明し、異文化共存への道を切り開くために、本課題では、ポストコロニアル論、ポストモダニズム論やジェンダー論の成果を踏まえ、文化相対主義や近代の普遍主義に内在する諸問題を、文化人類学、哲学、思想史などによる学際的な取り組みで批判的に解明し、文化の普遍性と相対性に関する既成の概念枠組を超えた新たな理論的枠組みの構築を目指します。

関連プロジェクト

2013年度 EUアイデンティティの構築とその政治的意義
(研究部プロジェクト/代表者 坂井一成)

2012年度 EUの内と外における共生の模索
(研究部プロジェクト/代表者 坂井一成)

2011年度 ヨーロッパにおける多民族共存とEU-言語、文化、ジェンダーをめぐって-
(研究部プロジェクト/代表者 坂本千代)

2010年度 ヨーロッパにおける多民族共存とEU
(研究部プロジェクト/代表者 坂本千代)

2009年度 ヨーロッパにおける多民族共存とEU─多民族共存への多視点的・メタ視点的アプローチ─
(研究部プロジェクト/代表者 石川達夫)

2008年度多言語・多民族共存と文化的多様性の維持に関する国際的・歴史的比較研究
(研究部プロジェクト/代表者 石川達夫)


2007年度マイクロステートの言語文化政策と「多元性」の比較研究―オセアニア、カリブにおけるグローバル化、「地域」文化、ポストコロニアリズム―
(研究部プロジェクト/代表者 柴田佳子)

2006年度マイクロステートの文化政策と日常的実践に関する国際共同研究と海外ネットワーク拠点構築―オセアニアとカリブ海におけるグローバル化、ポストコロニアリズム、ローカル化の比較―
(研究部プロジェクト/代表者 柴田佳子)

阪神、淡路地域における民族文化伝承の現代的展開に関する研究―淡路人形浄瑠璃を中心に―
(研究部プロジェクト/代表者 影山純夫)

中東・日本間の知的交流型研究を通じて現代中東の国際関係と政治変動を理解するためのプロジェクト―湾岸諸国を中心に(略称:中東政治研究プロジェクト)―
(研究部プロジェクト/代表者 中村覚)

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