三浦伸夫 (異文化コミュニケーション論講座) 石川達夫(地域文化論講座) 藤野一夫 (現代文化論講座) 岩本和子 (現代文化論講座) 坂井一成 (異文化コミュニケーション論講座) 寺尾智史 (地域文化論講座) 松井真之介 (異文化研究交流センター 協力研究員) 秦美香子(神戸大学学術推進研究員)
今年度の目的は原則的に過去の2年間のプロジェクト(代表:石川達夫)「多言語・多民族共存と文化的多様性の維持に関する国際的・歴史的比較研究」「ヨーロッパにおける多民族共存とEU – 多民族共存への多視点的・メタ視点的アプローチ」を引き継いでそれをさらに発展させることを目的とする。長い歴史において多民族が葛藤と融和を繰りかえしてきたヨーロッパ内で、現在の世界に大きな影響力を持つEUとそれ以外の地域を研究対象とすることは昨年と同じであるが、今年は特に多民族共存の理念の問題及びその現実(言語・文化政策など)、そして文学をはじめとする芸術分野でのその表象を考察することにしたい。 本プロジェクトの必要性についてはここ2年来主張してきたものであるが、今回もあらためて述べておく。多民族共存の問題をめぐって今日特に重要な課題として浮上しているのは、異なる民族が同じ場所に共存してはいても、必ずしも十分な相互理解はしておらず、そのために互いの主張・立場・視点がうまくかみあわないため、十分な相互理解に基づいた平和的な共生の条件が整っていないこと、そのためひとたびテロや経済危機などがおこると、昨日までの隣人がとたんに不気味で異質な異邦人と化してしまい、そこに思いもかけない民族的軋轢や衝突が発生するという問題である。このような問題に関して、「多民族共存」という理念そのものの成立の歴史的経緯、およびその理念が適用された現実(これは今までその詳細が必ずしも我々にとっては明らかでなかった)、またその現実がいかに解釈され構成されて芸術作品などに表象されているかを研究することは、総合的・包括的な提言あるいはローカルで具体的な提言を探求することと同じくらい必要であると信じるものである。
今年度の活動も過去2年間を引き継ぐものであり、各メンバーが以下の活動を進めることとする。 ヨーロッパにおける実際の多民族共存の場とそこで生じてきた問題について、通時的あるいは共時的に分析・考察する。 EU、ヨーロッパ各国、国連などが、多民族共存、マイノリティと少数言語保護等のためにいかなる理念を掲げ、いかなる政策を実施してきたかを分析・考察する。 ヨーロッパにおける多民族共存あるいは多文化共存が芸術作品や文化活動においていかに解釈され表象されてきたかについて分析・考察する。 以上の課題をめぐり、外部から研究者を招いて講演会、公開セミナー、研究会などを開催する。 最終的なまとめとして、本プロジェクトメンバーの研究成果と、講演会、公開セミナー、研究会などの成果を研究報告書にまとめて、本ホームページ上で公開する。