国際文化学部の就職 ― 学部創設10周年に


国際文化学部の学生は下級生の間は、実学重視の経済学部や法学部の学生に比べて、就職には不利だと思っている者が多い。しかし、実際の国際文化学部の就職状況は、神戸大学の全学部の中でもその就職率は例年上位を保ち、きわめて優秀なのである。例えば、就職希望者を母数とした就職内定率は、2001年3月卒業者の場合、96.5%、昨年の場合97.2%、今年2003年は98.0%であった。つまり、就職にとっても国際文化学部は、数字のうえから見ても決して不利ではないのである。
しかし、10年前に教養部改組から新たなスタートを切った国際文化学部は、たしかに就職については当初、既存の伝統ある学部とは異なり、学生には先輩がおらず、かつて教養部所属だった教師にしても学生を社会に送り出す経験も皆無というおぼつかない状況からスタートせざるをえなかった。しかも神戸大学には殆どの国立大学同様、就職部というものがない。そこで1994年10月に設置されたのが、教官による就職支援を担当する委員会組織、エクステンション・センター(略称EC)である。
ECの主な業務は、①就職関連行事の企画・実施、②就職関連情報・資料を配置したECルームの管理運営、③11講座から選出された委員による自講座の学生の進路・就職状況の逐次把握および教授会への報告などである。
ECの就職支援行事は、学部単位で行うものとしては、比較的活発に行っているといえる。毎年十数回の就職関連行事を企画・実施し、将来の職業に関して殆ど白紙の状態で入ってくる学生たちに対して、職業意識の醸成や就職活動の意味に始まり、就職活動への心構え、さらには具体的な助言・情報等の提供を行っている。ECでは、例えば2002年度の場合、夏休み前に行った第1回就職ガイダンスを含めて就職ガイダンス3回、就職活動体験発表会6回(計22名の内定者による体験報告)、特別就職講座2回、業界説明会4回、特別講演会4回、合計19回の就職関連行事を実施した。参加者は主に3回生であるが、最近では2回生の参加も目につくようになっている。今後の課題としては、低回生からのキャリア・サポートやインターンシップの活用が挙げられよう。なお、以上のような就職関連行事の企画・実施を含むECの就職活動支援体制は、2001年6月に行われた国際文化学部に対する外部評価においても、きわめて高く評価された。
国際文化学部の学生の進路についてであるが、その殆どが卒業後すぐ就職する。その就職先は多岐にわたり、学部の名称にふさわしく国際関係、外資系、あるいは一般企業、そして国家および地方公務員などがある。国際関係では、外務省、国際協力事業団(JICA)、駐日外国大使館があり、民間企業に関しては、数多くの学生が、外資系を含め、電気、自動車、商社、新聞社その他、いわゆる大手有力企業に就職している。
近年の傾向として目立つのは、時には全体の約4分の1近くを占めることもある情報システム産業への就職である。文系・理系の区別や男女の区別をさほど問題にせず、柔軟な発想を重んじ、年功序列より個人の能力を評価する新しい業界や外資系の方が、どちらかと言えば国際文化学部の学生には向いているようである。就職以外の進路としては、大学院進学、海外留学、司法書士等の各種資格取得をめざしての専門学校入学などがある。
本学部における就職支援の重要な点は、あくまで国際文化学部の教育の成果としての就職を考え、大学教育と就職は互いにリンクしているとの視点に立っていることである。この10年間のあいだに、バブル崩壊に端を発した社会システムの激変に伴い、社会や企業の求める人材像や採用活動は大きく変化した。もはや有名大学を出たというだけで、それが金太郎飴で指示待ち人間に留まっているなら、今の企業はそのような学生を敢えて採ろうとはしない。演習や卒論等を通して、自分の頭で考え、それを自分の言葉で語ることができるような教育がいっそう求められているのである。
とりわけ、国際文化学部の教育方針に、異文化理解やコミュニケーション能力の育成があるが、グローバル化の進展の中で、いま日本の社会はこうした能力をもった人材を切に求めており、国際文化学部が、就職に必ずしも不利ではなく、むしろ有利な時代が到来したといえるだろう。  内田記 (2003.04.28)


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