藤本晃三氏のフィードバック
2008年度全学キャリア科目「職業と学び――キャリアデザインを考える」
第5回「世界と日本をつなぐ――総合商社の仕事」(2008年10月30日)への
コミュニケーションシートに対するフィードバック
1962年経済学部卒 元三菱商事株式会社
藤 本 晃 三
皆さんのリポートを全て読ませていただきました。上手に話せたか否か、自分でも甚だ疑問に思って帰途につきましたが、リポートを読んでまずは私がお話したかったことの大部分が、多数の皆さんに届いたことを嬉しく思いました。たくさんの人が、「自分は今まで商社の仕事というものを余り知らなかったが、身近に話を聞いて少しわかった。関心も湧いた」「食品の話など興味深く聞いた」などと、熱心に耳を傾けていただいたことを知りました。就職活動を始めるのは2年ばかり先であると思いますので、それまでの間に色々な人の話を聞いたり体験したり、また授業を通じて自分の将来をデザインしていかれるよう期待します。私の時もそうでしたが、大学に進学した直後というのは、受験勉強から解放されて安心しホッとすると同時に、新しい環境の中で何をまずなすべきかわからず、あれこれ模索しているうちに時間だけがどんどん過ぎて行ったように思います。
「大学とはものの考え方や判断力を養う場である」と、当時先生から教えられたことを覚えています。「How to...は他でいくらでも手に入れることができる」・・・と。
リポートに質問の形で書かれている事項のいくつかに関して、当日私が時間の関係で詳しく触れることが出来なかった部分をここに記します。
①問い:中国産の食品に対する不安が日本で広がっているが、これについてどう考えるか知りたい。
私の答え
中国から輸入される食品に限らず、「食の安全・安心」は国が保障するのがベストだが、人手やコストの問題もあり、常に100%を期待するのは無理。最終的には消費者が自己防衛するしかない(自分の目や鼻や知識を使って)。「食育」について農水省のHPなどを参考にしてください。
②問い:商社勤めが嫌になるときとはどういう場合なのか。
私の答え
どの職業に就いても終始100%満足するということはないと思います。「これが自分の天職だ」と言う人も、時には飽きたり不満を感じたりすることがあって、それでもやはりその仕事に対する情熱を失わないから、そのような不満などは一時的なものとして消えていくのだと思います。「結局は自分がやりたいのはこれだ!」と自信を持って言えるように自分を磨くことと、一たん決めたら簡単には変えないだけの覚悟を持つことは大事です。
③問い:日本の歴史に学ぶということは出来そうでなかなか難しいと思います。/日本の歴史を学ぶのは簡単でしょう。今までも学校でやってきました。
私の答え
歴史を学ぶ大切さについてお話したのは、体験上、即ち私が仕事上の付き合いで外国の人たちと交流する上で、例えば「天麩羅とはどこから来た名前であるか(註:南蛮渡来語。スペイン語やポルトガル語のtemporas=肉食を禁ずる期間)」とか、「日本では何故~こういう習慣があるのか・・」などを話題にすることで、その場の会話が大変和やかになり弾んだことがあります。
これは商社に限らず、誰でも今後日本国内でも外国人との交流のチャンスが増えるであろうと思われるので、一般教養として持つことをお奨めしたいのが一つ目の理由です。二つ目は教室でも少し触れましたが、外国に不必要にへりくだったり、臆せぬためにも日本の歴史を正しく認識し理解しておくことが必要だからです。戦後日本は米国の進駐によって民主主義を植えつけられましたが、その際に残すべき日本古来の良い風習や考え方までもが捨て去られてしまったことは誠に残念なことです。行き過ぎた自由放任主義もその結果の一つです。
今後の日本をより良くするのは皆さんの世代ですから期待しています。
尚、下記の著書は私が前に読んで面白いと思ったのでご参考までに記します。
堺屋太一著『歴史の使い方』講談社 2004年 以上 (2008年11月2日)