近況: 2009年11月:一覧

 11月も終わり近くなってやっと住まいの掃除をする気になりました。私は家事、特に掃除が大嫌いで、できるだけやりたくないのですが、時々(頻度は公表したくない)必要に迫られて掃除機をかけます。1LDKのマンションを掃除しながら思い浮かべるのは、トルストイの寓話『人にはどれだけの土地がいるか』です。子供のころに読んだのですが、その後ずっと頭のすみに残っています。自分が1日のうちに歩いただけの土地を与えると言われた農夫がものすごく頑張って広い土地を踏破するが、その疲労のせいで死んでしまい、結局彼に必要なのは自分の墓穴の大きさだけの土地だった、というような話だったと思います。そんなに広くもない私の賃貸マンションですが、それでも掃除をする時には、自分一人にこんなにスペースが必要だろうかとか、洋服掛けを見て、自分のからだひとつのためにこんなにたくさん服が必要なのだろうかと毎回自問し、そのたびにこのトルストイの寓話を思い出しています。
 学生時代とそのあとしばらくの間、時々、ほとんど衝動的に何もかも放り出して新しいことをやってみたくなったものでした。そのせいもあるのですが、以前はかなり頻繁に引っ越しをしています。引っ越しはそれまでにたまったいろいろなもの(人間関係も)をエイヤッと捨ててしまう良い機会で、新しい環境の中で自分の別の可能性や能力が引き出せるような気がしたものです。
 うーん、新しい所に引っ越したい。でも、引っ越しのめんどくささや経済的なことを考えると、仕事をやめるまでは今の所にいるほうがどう計算してもベターです。やっぱり現在の居場所にしがみつく人間になってしまいました。

大鳴門橋と人形浄瑠璃

 昨日の午後、神大国際文化学研究科の国際シンポジウム「南淡路における民俗芸能の展開」が南あわじ市で開催され、午前中は南あわじの「うずの丘大鳴門橋記念館」に行ってきました。朝方は雨が少し残っていたのですが、展望台に上ると海、大小の島々、対岸に延びる大きな橋、空、雲が見えて本当にすばらしい景色でした。特に、刻々と形が変わる白い雲をしみじみ見たのはひさしぶりで、青春時代に好きだったヘッセの詩「白い雲」を思い出したりしました。(あの頃は「さすらい人」に憧れたのに、今は自分の居場所にしがみつく俗人になってしまったなあ・・・。)
 記念館の中にある淡路人形浄瑠璃館で「壺坂霊験記 山の段」と九尾の狐の七化けの人形芝居を見ました。その合間に「人形教室」があって、人形のからくりなども詳しく説明してもらえました。人形浄瑠璃を見たのは2度目ですが、おもしろくてためになり、とても得した気分になりました。神戸から遠いのが難ですが、ぜひ今度は外国からのお客さんなどにも見せたいと思いました。

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