近況: 2011年8月:一覧

優しい関係

 先日、必要があってサガンの『優しい関係』を読み直しました。ティーンエイジャーの頃に大好きだった小説で、何度も読み返した愛読書でした。ハリウッドを舞台に、知的で魅力的な中年女性ドロシーを熱愛するなぞの美青年が、ドロシーの心を傷つける(あるいは、傷つけた)人たちを、完全犯罪で片っ端から殺していく話です。彼の他にもドロシーにほれ込んでいる魅力的な男性が登場し、最終的には3人そろって立派なハッピーエンドという、ある意味とんでもない内容なのですが、小粋でおしゃれな雰囲気がとても好きでした。

 この本をむさぼり読んだ頃の私は、人間の欲望や愛情の真実の姿がそこに極端な形で描かれているように思ったものでした。執筆当時、作者サガンはヒロインドロシーの年齢よりも若かったのです。今回、自分が作者やドロシーよりも年をとってからこの本を読み返してみると、何にあれほど感激したのか正直言ってよくわかりません。胸に迫るものがなくて、いかにも作り物じみたところ(作者はもちろんそれを承知で書いているのですが)にちょっとしらけてしまいます。要するに、「リアリティ」(話の筋ではなく、登場人物の心の動きについてのリアリティ)が希薄すぎるのです。人間同士の関係というのはもっとどろどろしていて、みっともないもので、それでも人は誰かとかかわりたくてしょうがないから、世の中のいろいろな事件が起こるのではないかしら。

ヴァカンスの思い出

  暑い日が続きます。毎年この頃は海外にいることが多いのですが、今年はお盆に帰省していました。ところで、ニュースによるとヨーロッパでも最近は遠くにヴァカンスに行く人が減ったそうですが、それでも日本と比べると、ずっとたくさんの人がどこかに出かけるのではないでしょうか。
 数年前の今頃、フランス南西部を鉄道で移動しました。普段はユーレイルパスなどを使って一等車(日本のグリーン車よりずっと安い!)に乗るのですが、この時は短期の旅行だったので、普通の二等車の切符を買いました。ところが、その日は運悪く、ヴァカンスにこれから行く人と帰る人の両方が移動する日にあたっていたらしく、列車内はラッシュアワーのようなぎゅうづめで、立ったまま身動きもできません。荷物をたくさん持った家族連れ(子どもがたいてい3,4人)や、大きな犬を連れた人たちまで乗り込んでいました。それでなくても息苦しいのに、途中で一匹の犬が「粗相」してしまい、ものすごい環境を1時間ほど耐え忍びました・・・。ぜったいに忘れられない思い出です。その後ヨーロッパを移動するときには、混雑しそうな長旅はできるだけ一等車に乗るようにしています。(それにしても、日本の鉄道運賃は外国と比べるとなぜあれほど高いのでしょうか?)

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