2010年8月アーカイブ

雅楽の〈近代〉と〈現代〉 継承・普及・創造の軌跡〜

岩波書店、2010年8月、320頁、定価8,000円+税、ISBN978-4-00-025788-6

 ここ10年間の研究の成果をまとめました。
 天平時代の東大寺大仏開眼会の雅楽や平安時代の『源氏物語』に出て来る雅楽をご存知の方は多いと思いますが、明治時代以降、今日までの雅楽の歴史は、意外に知られていません。ぜひ、ご一読ください(お値段ちょい高ですみません・・・)。
 


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 カバー図版は芝祐靖先生の〈玉樹後庭花〉の楽譜です!



◎表紙カバー袖の文章から
雅楽は、宮廷文化を彩る儀式音楽として伝承されながら、常に歴史の淘汰を受けて来た。近代以降は国民国家の儀礼において「伝統の創出」を担いつつ、新たに「芸術音楽」としての展開を迎える。雅楽人らは閉じた文脈を越え、聴衆へ雅楽を響かせるべく、いかに尽力したのか。洋楽との交流、五線譜化、楽器・楽曲の復元、創作等々さまざまな視点から言説・記録・作品分析を行い、承け継がれつつ新たに生成する芸術の〈近代〉と〈現代〉を検証する。

◎目次
はじめに 
プロローグ ―― 近代以前の雅楽 
第一部明治時代から一九四五年まで――「雲居」の音楽としての雅楽
一 明治初期の雅楽界の変革   
二 新しい「日本音楽」と雅楽――東儀鐡笛の思想 
三 雅楽の西洋五線譜化――五線譜に込めた「理想」 
四 雅楽「普及」の動き――「沈滞」と「普及」という言説
五 普及から新しい創造へ――近衛直麿の活動 
六 紀元二千六百年と雅楽界の動き
七 もう一つの雅楽伝承――雅亮会と大阪近代
八 雅楽の録音――古音盤にたどる雅楽のスタイルの変遷
 
第二部一九四五年以降――メディアと劇場公演による雅楽の普及と変容
九  戦後の雅楽界と民間団体、および大学における雅楽カリキュラム導入
一〇 国立劇場の雅楽公演――伝統への挑戦 
一一 「復元」という「思想」――雅楽「復元」の社会史 
一二 「復元」の実際
一三 雅楽の「大衆化」――ポピュラー音楽の潮流の中で
エピローグ 雅楽リテラシーの構築 




雅楽を聴く 〜響きの庭への誘い〜

   岩波書店 2011年3月、207頁、定価720円+税、ISBN978-4-00-431302-1


現代に生きる雅楽は、いったいどのような場所で響いているのか。初心者の人にもわかりやすい、雅楽の風景をぶらぶら訪ねる「ぶらががく」。あなたも雅楽散歩のフラヌール flâneur になってみませんか。


 
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本書「はじめに」より
雅楽が鳴り響く場所-------それを本書では「庭」と呼ぶが------、雅楽はその「庭」に向かって響きを放つと同時に、「庭」から力を得て変容する。劇場で聴く雅楽、神社の杜で聴く雅楽、市井の雑踏の中で聴く雅楽は、それぞれに異なった魅力を放つ。雅楽はいわば、「庭」という空間を与えられることによって、その中で呼吸し、それぞれの「庭」にふさわしい音風景を紡ぎだして行く。

◎目次
 序章  雅楽とは
 第一章 京都御所----主を失った千年の雅の庭
 第二章 奈良 春日若宮おん祭----古の神との交歓の庭
 第三章 大阪 四天王寺聖霊会----庶民のエネルギー渦巻くお太子信仰の庭
 第四章 東京 宮内庁楽部----巨大都市東京の中心に存在する空洞の庭
 第五章 国立劇場---新しい創造の庭
 終章  雅楽を聴く---空間と時間の意味、または立体的雅楽史



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