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長年、現代の雅楽界を牽引してきた不世出の雅楽人・芝祐靖氏の半生をまとめました。ダイナミックな現代雅楽の軌跡を辿ります。

芝祐靖氏は2019年7月5日に逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

 

伶倫楽遊 芝祐靖と雅楽の現代

アルテスパブリッシング

20171222日発売、2,200円(+税)



cover_obi-407x600.jpgのサムネール画像

「はじめに 芝祐靖というできごと」より

 「伶楽舎」。これが、現代日本における最も優れた雅楽の演奏団体の名称である。「伶楽」とは、「伶倫」と「楽遊」という二つの単語をもとに作られた名称で、「伶倫」は、中国の『呂氏春秋』に登場する黄帝こうていに仕えた伝説の音楽家の名、「楽遊」は「楽を学び楽しむ」の意である。伝説によると、伶倫は一対の鳳凰の鳴き声を聞き、鳳(雄)の高低六つの音と、凰(雌)の六つの音を合わせ、十二律を整えた。

 この悠久壮大な中国の故事に由来する名称を冠した雅楽団体は、雅楽の伝統的なレパートリーの演奏に常に高い完成度を示すと同時に、武満徹、一柳慧、石井真木、細川俊夫など現代作曲家の新作にも果敢に挑み、雅楽のさまざまな魅力と可能性を世に問うてきた。伶楽舎は、現在、自主公演のほか、しばしば依頼、招待による演奏を行い、国内のみならず国際的にも最も活躍している演奏団体の一つである。

 この団体をつくった人物の名を、芝祐靖という。八〇〇年以上続く雅楽の家系に生まれ、幼少から雅楽を学び、宮内庁楽部に奉職した。しかし、四九歳の時に退職。以後、フリーの音楽家として雅楽の発展に尽くし、二〇〇三年からは芸術院会員となっている。

 芝の肩書きを単に「雅楽演奏家」とするのは正確ではない。なぜなら、雅楽演奏のほかに、廃絶曲の復元研究と論文の執筆、廃絶曲を実際に音として甦らせる復曲、新作雅楽の作曲、若手演奏家の指導、さらに、あまり知られていないが、西洋楽器のための作曲(含、オーケストラ作品)など、きわめて多方面に才能を発揮しているからである。芝は、戦後の雅楽の歩みのほとんどすべてに、大なり小なり関わっており、その軌跡は、そのまま現代の雅楽の歴史と重なる。換言すれば、芝の活動はすでに個人の活動の域を越え、時代を画する一つの「できごと」の様相を呈しており、その出現以前と以後では、雅楽の様態や社会における雅楽のあり方自体が変わったのである。もちろん、現在も皇室や寺社には雅楽を用いる伝統的な儀礼が存続し、そこでの演目、演奏様式は脈々と維持、継承されている。しかし、芝の活動は、さまざまな点でその「伝統的雅楽」を相対化し、多様化することにより、雅楽全体に豊かさを加えたのである

 



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