音声コミュニケーションにおける音調処理と脳活動
代表者
- 水口志乃扶(国際文化学研究科教授)
分担者
- 林良子(国際文化学研究科教授)
- 能田由紀子(学外共同研究者)
プロジェクトの目的
言語の音調(イントネーションなどの音声の高低)は発話の意味を決定づけるものであり,発話を理解するには音調を正しく知覚することが必須であるが,統語、意味、音声情報をすべて使うことが要求されるので,音調を正しく知覚することは極めて難しい.先行研究(Cole et al. 2010など)により,会話などの自然発話は母語話者の方が学習者より音調処理の精度が高いことが分かっている.しかしながら,申請者らの実験では対照的焦点の知覚では母語話者と学習者の間に優位な差はなく,むしろ母語の方が学習言語よりも知覚が難しい場合があることが分かってきた. 本プロジェクトは,従来の知覚実験だけではなく,脳活動という新たな視点から音調がいかに処理されているのか,言語によって違いはあるのかを解明することを目的とする.フランス語や中国語の対照的焦点の脳活動計測の先行研究(Gandour 2007など)では,母語の焦点処理の方が学習言語の焦点処理よりも脳活動が活発ではないと主張されている.本プロジェクトではこのGandourの主張を作業仮説とし,果たして日本語が母語の場合でも同じことが言えるのかを検証する.行動データから見る限りでは仮説は立証できず、先行研究とは異なる知見が得られると予測している.