移民動態と文化適応


How Do Emigrants Adopt Themselves to Local Culture?
 
日本側代表者:
辛島 理人(神戸大学国際文化学研究科准教授)

相手国側代表者:
周惠民 CHOU Whei-ming (Humanities Research Center, Director/Professor, National Chengchi University)


 平成29年度の研究交流活動計画  


移民動態と文化適応を主題としたR-6では、台湾とのネットワークが構築され、次なる研究段階に入るにあたって、そのネットワークを継続的に拡大するため、台湾との既構築ネットワークについてはR-4へと移管させることとした。その上で、2017年度以降は対象地域を広くアジア・オセアニアを中心として環太平洋と再設定し、日本研究などの地域研究と歴史的アプローチを軸に、移民がどのように受け入れ社会の文化との関係を切り結ぶかについて検証する。これまでにネットワークを形成したアジアとヨーロッパの海外拠点機関との活動を補完するかたちで、アメリカ、イギリス、オーストラリア、インドネシア、イランなどとの関係をも構築する。具体的には下半期にスタンフォード大学で開催されるJapanese Diaspora Initiative Workshopへの参加、イギリスでの若手ワークショップ開催、インドネシアでの研究交流、イランでの現地調査などを計画している。

 平成29年度に期待される成果


ヨーロッパで発生している事件からも分かるように、宗教信仰上の相違にとどまらず、法律に対する理解、地域社会への融合、家族関係など、移民の文化適応は移民自身にとってだけではなく、現地社会にとっても大きな問題になりつつある。本年度はこういった課題に、グローバル化する日本研究・アジア太平洋研究の資源を活用して取り組む。また、すでに編著のかたちでプロジェクト構成員の研究成果(『社会的分断を越境する』)が出されており、その書評会(4月)を開催してフィードバックを得ることにより、新たな研究の方向性が出されることとなる。書評会のみならず、ワークショップや読書会の開催を通じて次世代研究者の育成にも寄与することが期待される。


 平成28年度の研究交流活動計画  


他国への移住の道を選んだ移民たちは、本来祖国の政治的イデオロギーと文化的アイデンティティの束縛から脱却しているはずである。しかし現実は一部の移民またはその後裔はむしろ移住先で故郷への執着を深め、いわゆる民族的宗教的伝統への復帰に執念を燃やしている。その原因はいったいどこにあるのか。28年度は、東アジアと欧州の華人華僑を対象に、その文化的適応に焦点を絞り、政治学、経済学、社会学、歴史学、人類学、国際関係論の立場から具体的な事例を挙げて分析する。活動としては、1)日本側の研究者は7月にカナダで開かれる「世界華僑華人学会2016年大会」(ISSCO 2016)に出席し、そこで欧米をはじめ世界の研究者と情報交換を行い、研究者ネットワークを構築する。2)29年1-2月に、台湾側の研究者はそのネットワークを利用し、日本の台湾人社会について調査を行い、その後日本側の研究者との共同ワークショップにつなげていく。

 平成28年度に期待される成果


ヨーロッパで発生している事件からも分かるように、宗教信仰上の相違にとどまらず、法律に対する理解、地域社会への融合、家族関係など、移民の文化適応は移民自身にとってだけではなく、現地社会にとっても大きな問題になりつつある。しかし注目すべきは、とくに欧州で増え続ける大陸出身の華僑華人が現地社会との間に大きな隔たりを抱えているのに比べ、日本の台湾人社会は日本の社会との摩擦の事例が極めて少ない。同じ華人でありながらなぜこのような相違が生じたのか。その原因は、日本政府の政策以外に、移民共同体自身の文化的適応力にあると考えられる。それを学理的に説明できれば、政策の提言を行うだけでなく、学術的にも移民共同体の文化適応力をチェックできる新たな視点を得ることができる。「世界華僑華人学会」は華僑華人研究者にとって重要な研究情報交換の場であり、そのネットワークを利用し、欧州におけるフィールドワークの可能性を探る。華僑華人を対象にする研究で得た知見は、想定している後半の東アジア地域のイスラーム移民社会についての研究にも活用できる。

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