最終更新日: 2024年09月30日
グローバル文化専攻・現代文化システム系 芸術文化論コース
芸術文化論コースは、芸術文化コンテンツ系と芸術文化環境系から構成され、 造形美術(絵画)、 文学、 舞台芸術(音楽、オペラ、演劇)、ファッションなどの芸術(アート)作品と社会との関わりについて研究しています。
コンテンツ系では作品内容の分析を通してそこに反映される社会意識や世界観を考えます。 環境系では、 創作の自由やアートヘ容易にアクセスできる権利の保障、 文化施設運営の実際などについて、国際比較を踏まえて考察し、 文化政策のグランドデザインや、 その具体的実践としての芸術と社会をつなぐアートマネジメントに取り組んでいます。
本コースでは、学部時代の専門に関わらず、芸術とそれを支える環境に関心を持ち、専門的に学ぼうとする意欲にあふれた学生の受験を歓迎します。
進路実績 | (前期課程) 国際交流基金、神戸大学創造連携本部助教、びわ湖芸術文化財団、兵庫県立芸術文化センター、神戸市民文化振興財団、関西フィルハーモニー管弦楽団、広島市現代美術館、同志社大学職員、大阪大学職員、安芸市役所、豊岡市役所、京都市役所、NHK、カフェ・カンパニー株式会社、株式会社ナレッジラボ、岡谷鋼機株式会社、株式会社 SIG、ほか (後期課程) 同志社大学教授、福井大学准教授、京都橘大学准教授、東北工業大学准教授、大阪府商工労働部主任研究員、サントリーホールディングス、神戸大学非常勤講師、大阪市立大学非常勤講師、関西学院大学非常勤講師、大手前大学非常勤講師、流通科学大学非常勤講師、龍谷大学准教授、ほか |
---|
在籍学生数 | (前期課程) 7名 (後期課程) 2名 |
---|
論文テーマ例 | (前期課程) 地域コミュニティ パブリックシアターの組織運営 民間非営利組織間のネットワーク形成 持続可能なコミュニティアート 崇仁地区のアートプロジェクト ベルリンの「社会文化センター」 スウェーデンの文化政策と市民活動 文化遺産の保護と活用:フランスと中国の旧市街地 パリ市の都市空間整備 ベルギーにおけるコンゴ系ディアスポラ 日韓インディーズバンド ロシア帝政期の教会建築 ジャポニスム 林忠正 印象派画家カイユボット フランスの女性作家 前衛書と抽象表現主義絵画 コルセットの表象 日本のストリートファッション (後期課程) 文化政策と社会的包摂 日本の近代広告 ドーミエと近代都市パリ 戦前の日本における近代フランス音楽の受容 ジャポニスム期の日本陶磁器コレクションと日仏の交易 宮沢賢治と光学 シンガポールの文化政策 |
---|
所属教員の紹介 | 石田 圭子 教授 近現代芸術理論特殊講義ほか 美学・芸術論が専門です。政治と芸術の関係について、理論的・歴史的な観点から研究を進めています。また、社会や政治の問題にコミットメントしようとする近年のアートの動向にも関心があります。授業では理論と具体的作品の両側面からアートとは何かを考えたいと思います。 礒谷 有亮 講師 現代芸術社会論特殊講義ほか 専門は近代美術史と写真史。特に両世界大戦間期のフランスの事例を中心に、写真と同時代の美術、グラフィックデザイン、印刷出版業の変化と発展との関わりを研究しています。また写真の歴史が編まれるにあたり、美術史、美術館や図書館の果たした役割にも関心があります。 岡本 佳子 講師 芸術文化表現特殊講義ほか 研究分野は舞台芸術学、西洋音楽史です。特に20世紀転換期の中・東欧の舞台芸術作品(オペラや演劇等)を対象として、音楽や文学、パフォーマンスの側面から成立過程の解明と作品分析を行うとともに、作品が古典化されていく歴史的変遷について研究しています。 髙田 映介 講師 文化環境形成論特殊講義ほか 19世紀ロシアの作家・劇作家チェーホフを専門に、人間が抱える諸問題と文学と科学の関係について研究しています。また、現代ロシア文学にも関心があります。授業では文学や芸術の豊かさに触れながら、異文化を知り広い視野で物事を捉える場を皆さんと作っていきたいと考えています。 新任教員着任予定 現代芸術動態論特殊講義担当 |
---|

王 嘉儀さん(博士前期課程 2 年)
厦門大学外国語学部卒業
研究テーマ:「日本における海外ミュージカル」
幼い頃から舞台芸術に強い関心を寄せ、役者としても観客としても、様々な経験を積んでまいりました。学部時代には、特にミュージカルに興味を持ち、日本での海外ミュージカルの上演に関する考察を深め、それが私の研究テーマとなりました。より深く、包括的な研究を行うために、本研究科の芸術文化論コースに進学しました。
本コースの魅力は、現代アート、写真、オペラ、各国の文学など、多岐にわたる芸術分野の授業に触れることができる点にあります。様々な芸術形式の個性や発展の歴史を理解し、文化や社会との関連性を深めることができます。授業は通常、少人数で行われ、議論や発表が活発な雰囲気です。学期中には、美術館や写真展を訪れることもあり、宝塚歌劇や歌舞伎、文楽などの舞台芸術を鑑賞する貴重な機会も得られます。これらの見学を通じて、芸術に対する感性を磨くことができます。先生方は親切で優しく、研究に対する丁寧なサポートを提供しています。また、研究室では、日本、中国、イタリア、フィリピン、インドネシアなど、異なる国籍や文化背景を持つ学生との交流が盛んで、友好的な雰囲気の中で学び合える環境です。
船戸 杏珠さん(博士前期課程 2 年)
京都産業大学国際関係学部国際関係学科卒業
研究テーマ:「コード化する身体とファッション」
私は、媒体となる身体とファッションの関係性について研究しています。修士1年では「インターネットにおけるジェンダーとファッションの変容」というテーマで口頭発表を行いました。現在は1960年代以降のファッションデザインを中心に研究しています。この時代はオートクチュールの誕生によってファッションは作品化され、芸術家としてのデザイナーが形成され、ファッションを芸術作品として捉えようとする考え方が普及しました。綿密な作品分析を中心に、身体を価値観やアイデンテンティティの媒体と捉え、身につけることー身体を行き来しながら研究を進めています。
芸術文化論コースでは、アートをはじめとしてオペラや演劇、文学などあらゆる芸術学群での授業が展開されており、国籍を超えた学生同士とのディスカッションを通して文化的な視座を深めることができます。私自身他分野からの進学ということもあり授業について行くのに日々苦労していますが、真摯に向き合ってくださるコースの先生方含め、熱意のある生徒に囲まれて刺激の多い毎日を送っています。芸術に対する複合的な視野を養いながら自身の研究をブラッシュアップできるのが本コースの特色だと思います。

久保 優梨子さん(博士前期課程修了)
研究テーマ:「地方芸術祭は必要か 地方都市・神戸での試み 「アート・プロジェクト KOBE2019:TRANS- 」 を例に」
現在、 NPO 法人 BEPPU PROJECT 正職員
在学中は、 多様な現代アートのなかでも、とりわけ嗅覚を刺激する作品に興味を持っていました。いっぽう課外では、ギャラリーでのインターンや芸術祭のスタッフといった形で、 実務経験を積むことに専心しました。
現在は、 大分県別府市でアート振興やまちづくりに取り組むNPO 法人 BEPPU PROJECT に在籍しています。 狭く深くアートを極めるというより、色々な人が色々な関わり方をできるアートや文化のあり方を模索している組織です。よって業務内容は、アーティストとやりとりをして良い作品を生み出すことにとどまらず、広報、事務、協賛活動などと多岐に渡ります。加えて、必ずしもアートに詳しくない地域住民や行政職員と前向きな関係を築くことも、地域(とくに地方都市)でアートを実践・継続するには非常に重要です。彼らと協働しながら、いかにアートと地域の双方にとって良い活動ができるか、常に考えて仕事をしています。
そんな実際の現場では、アートへの愛情や知識だけではどうにもならず、打ちのめされそうになることもあります。しかしそんな場面でこそ、在学中に得た学びが現在の自分の基礎体力、あるいは指針になっていると感じることが多く、本研究科の素晴らしさをしみじみと思い出します。本研究科の多様な学術分野に触れられる環境に身を置いたことは、結果的に、決して単体の事物としては存在せず、現代社会のあらゆる事象や様相を反映する存在としての現代アートに対する理解を深め、それを社会に広げたいという目標を抱くことにつながりました。
これから入学するみなさんには、おそらくいま想像が及ぶ以上に、 学生という立場は特権的でチャンスに溢れているということを伝えたいです。この恵まれた環境を最大限活用し、興味のあることや試してみたいことにおそれず取り組んでください。積極的かつ真摯に行動すれば、コースの先生方は言わずもがな、学外にも応えてくれる大人がきっとたくさん現れると思います。
小林 瑠音さん(博士後期課程修了)
ウォーリック大学大学院芸術学科修士課程修了
研究テーマ:「1970 年代英国のコミュニティ・アート運動、 英国アーツカウンシル史」
現在、 芸術文化観光専門職大学講師
国際文化学研究科在学時は、 1970 年代に興隆した英国のコミュニティ・アート運動と英国アーツカウンシルの関係性に焦点を当て、 文化政策の観点から博士論文にまとめました。 修了後も国際文化学研究推進センター(Promis) 学術研究員として充実した研究環境に身を置くことができ、 領域横断的な研究ネットワークの構築手法を学ぶことができました。 現在は、パフォーミング・アーツと観光を架橋する教育機関にて、 教員として研鑽を積んでいます。
私は、 学部、 修士、 博士でそれぞれ専門分野の転向を重ねてきたうえに、 一旦アカデミアを離れて芸術祭や小劇場の現場で働くなど、 回り道をしてきたのですが、 本研究科での勉学を通して、 理論と実践双方の視点から事象を捉え、それぞれの言語を操るバランス能力と洞察力を養うことができました。在学時の人脈は、現在の職場でも大いに役立っています。
また、 美術史、 美学、 文化研究、 社会学、 政治学など各領域で第一線を担われている先生方のゼミや研究会で、 最先端の研究動向や専門知に触れることができ、 それらの経験は、 今後の調査・研究に向けて、 巨視的なアプローチを探るうえで重要な土壌となっています。

学部時代の専門は芸術がテーマではないのですが?
芸術文化の研究もまた歴史や現代社会のさまざまな事象につながるものですから、学部時代の勉強を生かしてテーマ設定をすることは可能です。また博士前期課程では、自分の関心あるテーマだけではなく、いろいろな作品にできるだけ幅広く触れてほしいと考えています。
語学力は必要でしょうか。
研究する際に必要になる考え方の多くが欧米の研究を基礎としていることもあり、英語を知っていることは研究の大きな助けになります。また、芸術文化は言語と密接な関係にありますので、すくなくとも入学後には研究対象と関係する語学を学習してほしいと思います。