最終更新日: 2024年09月30日
グローバル文化専攻・言語情報コミュニケーション系
感性コミュニケーションコース

人とひとの間のコミュニケーションにおいて要求されることの一つは、気持ちが通じあうことでしょう。しかし実際のコミュニケーション場面においては、たとえば「言葉は通じているのに気持ちが通じていない」と思える場合があります。この場合、「気持ちは通じていないか」「言葉(音声)は本当に通じているか」といったベーシックな問題について検討する必要があります。感性コミュニケーションコースは、コミュニケーションの過程を音声生成など身体的なプロセス、心理学・脳科学など認知的なプロセスの水準から探求します。またネイティブの発音に近い発音を可能にする方策、対人関係を改善する技法といったプラクティカルな問題についても学生の皆さんと一緒に研究を行っています。
進路実績 | (前期課程) ユニクロ、アステラス製薬、イーオン、ATR Learning Technology、ANA(全日空)、(中国の国立)中国銀行、神戸市(上級行政職)、航空大学校、島津製作所(上海)、ほか (後期課程) 理化学研究所、神戸大学国際文化学研究科、韓山師範学院、神奈 川県科学捜査研究所、国立障害者リハビリテーションセンター研究所、日本学術振興会特別研究員(PD)、武漢大学、パナソニック、京都精華大学、情報通信研究機構(NICT)、東北大学、大阪大学、ほか |
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在籍学生数 | (前期課程) 6名 (後期課程) 2名 |
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論文テーマ例 | (前期課程) 注意、ワーキングメモリ、情動、視覚認知、表情、音声コミュニケーション、外国語発音における母語干渉、Eラーニング、社会性、マルチモーダル分析 (後期課程) 数表象、プライミング、視覚的注意、外国語音声習得のメカニズム、音声の産出と知覚、ポライトネス |
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所属教員の紹介 | 林 良子 教授 言語行動科学論特殊講義ほか 音声科学・心理言語学。日本語や諸外国語における音声の特徴や、外国語を学ぶときの発音の困難点などについて実験的手法を用いて研究しています。言語障害や言語発達、各国における音声コミュニケーションの教育方法の比較についても興味があります。 松本 絵理子 教授 コミュニケーション認知論特殊講義ほか 認知心理学、認知神経科学。人間の知覚、行動、記憶、注意といった認知活動について、心理実験や脳活動計測などの手法を用いて研究しています。特に、注意について、不安やストレスなどの個人特性が及ぼす影響や、どうして表情や恐怖の対象には注意が素早く向けられるのか、等について関心があります。コミュニケーションの背景にある人間の行動や認識の傾向を認知心理学的というのぞき窓を通じて探ってみませんか。 北田 亮 教授 非言語コミュニケーション論特殊講義ほか 心理物理学・生理学など複数の方法を活用して、知覚から社会認知に至るまで様々な認知神経科学的な研究を行っています。特に複数の感覚機能に着目して、どのように先天的な要因と後天的な要因が絡み合うことで私たちの知覚や認知能力が形成されるのかに興味があります。これらの研究を通じて未来の研究の土台となる枠組みを提案することを目指し、様々な分野の研究者との連携により成果の社会実装への道を探ります。 巽 智子 准教授 第一言語習得、心理言語学。私たちはどのように言語を習得するのか、を中心のテーマとして研究をしています。また、言語変化、発達語用論、コミュニケーションと言語の関係など色々なテーマに関心があります。実験やコーパスデータの分析を通じて言語を探る、活発な研究の場を創りたいと考えています。 牧田 快 講師 コミュニケーション文法論特殊講義ほか 認知心理学、神経科学、発達・発達障害、言語学。主に脳構造・脳機能画像法を用いて、発達の違いによる脳構造の変容の度合いや、単語学習のような特定の課題遂行中の脳活動の測定などを通して、ヒトの発達、知覚、学習といった認知機能・行動について研究しています。なお研究では、いわゆる文系、理系という垣根を越えて、分野横断・融合的な観点から深化したいと考えています。 |
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福川 さくらさん(博士前期課程 2 年)
神戸大学国際人間科学部卒業
研究テーマ:「注意による選択への影響・不安特性による注意への影響」
私が大学院への進学を決めたきっかけは、学部時代にニューヨークへの交換留学が決定していたものの、コロナの影響で中止になってしまい、休学をするか悩んでいたところ、先生に大学院進学という選択肢を教えていただいたことがきっかけでした。国際文化学研究科は、 博士前期課程の学生でも交換留学をすることができる協定校が多く、先生たちも留学を応援してくださっていて、他の大学にはない魅力であると思います。きっかけは、交換留学への再挑戦でしたが、 学部時代から、 私たちはものを見るとき、ものを選ぶとき、何か行動をするとき、何かを考えているとき、それらを意識的に行なっているのか、あるいは、無意識的に行なっているのか、どんなものに影響されているのかなどについて興味があり、卒業研究では、外因的な注意が顔を見たときの魅力度と信頼性を増加させるかについて心理学実験を用いた研究を行いました。国際文化学研究科に入学後は、 特殊講義やゼミ、 演習などを通して、 新たな知識を学びながら、現在は、個人個人が持つ不安の度合いが、私たちがタスクを行うときにどのように影響するかについて、実験を用いながら明らかにしようと、関連する文献を読みながら研究計画を組み立てています。
本コースには、心理学だけではなく言語学を専門とされる先生も所属されているので、自分の研究に対して、心理学とは異なる視点からアドバイスをいただけることから、自分では気付くことができない改善点を見つけられ、自分の研究をより深めることができると思います。今後は、本学だけでなく留学先でも専門的な知識を学びながら、社会に貢献できる研究を進めていきたいと考えています。
王 可心さん(博士前期課程 3 年)
中国人民大学外国語学部卒業
研究テーマ:「丁寧な発話様式と発話意図に関する音声的特徴」
私の出身大学と神戸大学とは協定校であり、 毎年 4 名ほどの学生が交換留学制度を利用して神戸大学に留学しています。交換留学を経験した学生たちの話を聞いて、 中国にいた頃から神戸大学の魅力を感じていました。大学三年生の時、日本語音声学に興味を持ち始め、留学することを決めました。当時大変お世話になっていた神戸大学で修士課程を修了した日本人の先生に推薦していただき、 無事に神戸大学大学院国際文化学研究科に入学することができました。
私たち外国人が日本語を勉強する動機はさまざまですが、一般的にはアナウンサーのようにきれいな日本語を話すより、自然な会話をして気持ちを通わせてみたいという方が多いでしょう。その際に、失礼な話し方をして品のない人だと思われたくないですね。この社会的文脈に応じた 「丁寧さ」に関しては、 文法の問題だけではなく、 音声にも大きく関わるものです。同じ言葉なのに違う音声で話すと全く違うように聞こえます。しかし、学習者にとって発話場面や対話者に応じた言葉を適切な音声で話すことは容易なことではありません。例えば、「ボールペン貸してください」というたった一言の依頼表現でも、それを丁寧に話すか、 恐縮して話すか、または強い語気で話すかによって、対話者が受ける印象は大きく変わるでしょう。このような話し方や伝え方による意味の微妙な違いは、 音声コミュニケーションの醍醐味だと思っています。
感性コミュニケーションコースには、 言語学だけではなく心理学の先生もいらっしゃいますので、異なる視点から指導を受けられるのが 1 つの大きなポイントだと思います。私も実際に心理学の授業をとり、感情や表情などについて勉強しました。この領域について視野が広がる一方、自分の研究にも活かせる学びをすることができたと思います。今後は、さらに専門的な知識を学び、さまざまな学会や研究会に参加し、 音声学研究の最前線において、どのような研究がなされているのかをもっと知り、吸収したいと考えています。

宿利 由希子さん(2018 年度博士後期課程修了)
群馬大学社会情報学部卒業。東北大学文学研究科博士前期課程修了。神戸大学大学院国際文化学研究科博士後期課程修了。
研究テーマ:「行為者のキャラに着目したポライトネス研究」
現在、京都精華大学特任講師
韓国、香港、ロシアなどで日本語教育に携わってきました。非母語話者である日本語学習者が、教室で学んだ日本語を完璧に話しても、日本語母語話者が「何その言い方!」「失礼な!」と不機嫌になる場面に何度も遭遇し、なんとかしなければと神戸大学国際文化学研究科受験を決意しました。博士論文では、発信者がどのような「キャラ(人物像)」かによって、受信者の評価が異なることを示すことができ、これまでの画一的な日本語教育の限界を指摘できたと思います。
博士課程は、非常勤で日本語を教えながらという二足の草鞋の 3 年間でした。心配はありましたが、先生方のご指導や(年下の) 先輩方のご助言のおかげで、博士論文を書き上げることができました。感性コースでは、さまざまなご専門の先生方から多角的なご指摘をいただき、大変鍛えられました。
大学、特に博士課程は自分で学ぶところだと私は思っています。どんどん学会で発表し、ばんばん論文を投稿して、研究を進めていってください。
川島 朋也さん(2018年度博士後期課程修了)
神戸大学国際文化学部卒業。神戸大学大学院国際文化学研究科博士前期課程修了。神戸大学大学院国際文化学研究科博士後期課程修了。
研究テーマ:「注意制御機構の認知神経科学的研究」
現在,情報通信研究機構脳情報通信研究センター研究員
ヒトがどのようにものを見たり記憶したりしているのかに興味があり,この感性コースに進学しました。ヒトの注意や記憶などは目に見えないものですが,心理実験や脳機能計測によってそのこころの活動に迫ることができます。本コースにはそのための行動実験室や脳波計測室などの充実した設備があります。また,ヒトを対象とした研究では,専門的な知識だけでなく,その周辺領域を含めた幅広い知識が必要です。その中で本コースは,さまざまな領域の先生から指導を受ける環境にあり,一つの学問領域に閉じこもることなく広く諸領域から自身の研究を見直すことができます。
本コースにはさまざまな国や地域からの学生が集まります。多文化なバックグラウンドをもつ学生同士の交流は,自身の視野をいっそう広げてくれます。感性コースにご関心のある方は,研究室の訪問だけでなく,ぜひ院生室にもお越しください。

感性コミュニケーションというのは、スタッフを見ると、心理学や脳科学と、言語学、コミュニケーション論などを全部勉強していないと、ダメなのでしょうか。
そんなことはありません。とりあえず、どれか、で結構です。
言語について研究したいと思っているのですが、このコースと言語コミュニケーションコースはどう違うのですか?
感性コミュニケーションでの言語研究は、自然に発話されたデータや、様々な機器を使って実験的に計測を行ったデータを主に扱います。またパラ言語と言われるいわゆる伝統的な言語学ではあまり扱われてこなかった分野(例えばため息、沈黙、声の音色など)や視覚情報(目線、表 情、口の形、ジェスチャーなど)も含めて研究したいという方、実験して色々測ってみよう! という方には当コースをお勧めします。
脳の研究をやりたいのですが、どんなことが可能ですか?
感性コースでは、脳波計、光トポグラフィーを使って脳機能計測実験を行うことができます。もちろん、精密に計画して組んだ心理学実験によって、認知情報処理が脳内でどのように行われているかを検討することも可能です。チャレンジをお待ちしています!