文化人類学
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文化相関・異文化コミュニケーション系 文化人類学コース
最終更新日 2021年7月16日
コースの紹介
本コースでは、多様なテーマと地域を研究対象にする文化人類学の専門スタッフが、充実した教育研究カリキュラムを提供しています。今日の文化の諸問題は、グローバル化に伴うさまざまな文化と価値観の対立、分裂、統合と融和、生成と消滅といったダイナミズムを特徴としています。本コースでは、地に足のついた研究調査(フィールドワーク)から世界を見渡す広くしなやかな視点をもつことで、深い異文化理解をもとに多様な文化が対話可能となるような方法をともに考えていきます。文化をめぐる複雑な問題に積極的にとりくみ、国際的に活躍する専門家、研究者をめざす学生、文化人類学の高度な研究を志す留学生も歓迎します。
就職実績 | (前期課程) 奈良県立大学(専任講師)、京都産業大学(助教)、多摩美術大学(助手)、広東貿易職業技術学校(講師)、中日新聞社、イオン、旭化成、東京三菱銀行、モバゲー、活水女子大学、韓国法務省、バンダイ、大阪府高校教員、青年海外協力隊(コスタリカ派遣)、アビームコンサルティング、東京国際貿易、三菱総研DCS、関西福祉科学大学、神戸松蔭女子学院大学(非常勤講師)、(株)富士ソフト (後期課程) 神戸大学(准教授、助教)、大阪観光大学(教授)、島根大学(准教授)、武蔵大学(准教授)、東京医科大学(専任講師)、外務省(専門調査員)、立命館大学衣笠総合研究機構(専門研究員)、帝塚山大学(非常勤講師)、浙江大学(専任講師)、大妻女子大学(専任講師)、滋賀大学(特任准教授)、立命館大学(准教授)、国立民族学博物館(助教) |
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在籍学生数 | (前期課程) 14名 (後期課程) 8名 |
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論文テーマ例 | (前期課程) カーゴカルト、観光、民俗芸能の伝承、ポストコロニアル、マルティカルチュラル・オリエンタリズム、中国の女性の地位、悪石島のボゼ、ローカル・ハワイアン、プリミティヴ・アート、在日ペルー人、映像人類学、クラ交易、バングラデシュのフェアトレード、国民文化と教育、在日コリアン、国際結婚、在日ベトナム人、奄美出身者同郷団体、文化遺産、伝統の創造、多文化共生、朝鮮族、映像、アイデンティティ・ポリティクス、ポピュラー音楽の表象、ジャマイカのペンテコステ教会、在米カリビアン、カーニバル、在米コリアン・アイデンティティ、ラスタファリ運動、ジャマイカのエチオピア正統教会、キリスト教と文化の文脈化、日系アルゼンチン人、ドミニカ共和国野球移民、スポーツ移民とトランスナショナリティ、在米華人、エスニック・コミュニティとメディア、マルティレイシャル、在日ブラジル人、移民の子弟教育、メキシコ女性と住民参加型開発、カナダ先住民、ディアスポラ・アイデンティティ、日系ハワイ人、帰米二世、ヒスパニック、カリフォルニア州バイリンガリズム、限界集落
(後期課程) 文化の真正性、ヴァヌアツ・アネイチュム、歴史人類学、難民、カレンニー、ホームステイ、在日ベトナム人、ケアと家族、朝鮮族村落変容、朝鮮族移民の女性化、華僑・華人、ベトナム観光、オーストラリア・アボリジニ、「問題飲酒」、先住民と非先住民、カリブ海地域、ジェンダー、男性性、ダンスホール文化、ダンスホール・ゴスペル、ポピュラー音楽、カリプソ、ソカ、ナショナル・アイデンティティ、人種と民族ポリティクス、混血の表象、当事者性、「オモニ」―韓国社会における「母性」とケア、マイノリティ、牧畜民ヒンバ/ヘレロの土地認識 |
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所属教員の紹介 | 梅屋 潔 教授 民族学特殊講義ほか 社会人類学、東アフリカ民族誌、妖術・邪術研究、日本の民俗宗教、開発の人類学などの分野を主として研究しています。 岡田 浩樹 教授 民族誌論特殊講義ほか 朝鮮半島、日本を中心とした東アジア諸社会およびベトナム、植民地主義および近代化過程における家族、宗教の再編成、マイノリティと多文化主義、宇宙人類学などの分野を主として研究しています。 齋藤 剛 教授 文化人類学特殊講義ほか 社会人類学、中東民族誌学、人類学的イスラーム研究、モロッコ、グローバル化と宗教・民族などの分野を主として研究しています。 大石 侑香 准教授 社会人類学特殊講義ほか 生態人類学、環境人類学、人類史、生業、物質文化、先住民、シベリア民族誌、北極地域研究などの分野を主として研究しています。 下條 尚志 准教授 現代人類学特殊講義ほか 歴史人類学、ベトナム・東南アジア研究、多民族・多宗教の混淆、河川・海域世界、移民・難民、戦争・社会主義・市場経済化のなかの生存戦略などを主として研究しています。 |
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新里 勇生さん
(博士前期課程2 年)
北海道大学文学部卒業。
研究テーマ:「日本の酒蔵の経済人類学的考察」
★メッセージ
私は学部時代に、高校生の「応援団」をテーマに卒論を書きました。文化人類学の理論や視点とフィールドワー
クに基づく研究をバランスよく学べるという点に惹かれ本研究科に入学しました。
大学院入学後、文化人類学コースの先生方や先輩方のアドバイスもあり、自分自身の問題関心を今一度、徹
底的に問い直し、経済人類学の視点に関心をもちました。経済人類学は、市場に限らず、人と人との間で行われる
インフォーマルな交換や贈与、分配などの経済行為に注目する分野です。修士課程では、経済人類学の視点から日本の酒蔵(さかぐら)に注目し、調査研究を進めようと思っています。
文化人類学コースは、さまざまなフィールドを専門とし、視点や理論的関心が異なる先生方がいらっしゃるので、さまざまなフィールドについて、多様な視点を学ぶことができます。人類学の古典的な理論から最近の議論までをフォローする授業、経験豊富な先生方によるフィールドワークの方法に関する授業、そして学術論文の問題設定や論理展開などを、少人数で懇切丁寧に指導してもらえる授業まで幅広く開講されています。
また、文化人類学コース以外の授業を取ること、他コースの学生が文化人類学コースの授業を受講することも可能で、他コースの学生との知的交流も活発です。さらに、こういった授業以外にも「合同ゼミ」という制度があり、コースの全員の先生方や学生が集い、学位論文に向けて準備中の研究報告や、学術雑誌へ投稿する草稿など対して相互にアドバイスや指導が行われます。
なによりも、研究を進める上で重要なのは、同じ大学院生がいることです。移民、モノ、先住民、宗教、手仕事、習俗、祭り、食文化など、多様なテーマに取り組む大学院生が20名以上います。それぞれが異なるテーマやフィールドに取り組んでおり、留学生も多いため、学生同士で雑談をしているときなどに、さりげない会話から、思わぬ研究のヒントを得ることもしばしばあります。
このように、文化人類学コースは、研究の基礎から始め、研究をしっかりと突き詰め、論文執筆するのに最適な環境が整っています。
荒木 真歩さん
(博士後期課程2 年)
神戸大学大学院博士前期課程修了。
研究テーマ:「民俗芸能の習得と伝承」
★メッセージ
私は盆踊りや獅子舞といった民俗芸能の身体と音楽について研究をしています。調査ではフィールドワークと言って、私の場合だと民俗芸能の練習の場に何度も足を運び、演者たちがいかにして歌、太鼓、そして踊りを習得して皆で揃えて演じるまでに至るのか、人々のやりとりを詳細に観察します。一緒に練習に参加させてもらうこともあります。かれらにとっては当たり前の習得方法であっても、私にとっては驚きの連続で民俗芸能を習得する・伝えるとは何かを常に考えさせられます。
学部では芸術大学で音楽学を専攻していました。調査をすすめる中で芸能だけを見るのではなく、それをおこなう人々のやりとりや関係を人類学の観点から考えたく、博士前期課程から文化人類学コースに入りました。実は私だけではなく文化人類学コースの多くの院生は、学部は別の分野を専攻しており、大学院に入ってから文化人類学を学び始めています。またコース自体がそのような院生の背景を尊重し、現在の研究に積極的に活かすことが推奨されています。
そのためコースでは院生の中で読書会をひらき、人類学の古典から近年に重要になっているテーマの本まで幅広く読み学べる場を作っています。また年に数回、外部から人類学関連の研究者を招き、神戸人類学研究会を開催しています。授業の一環として、週に一度のゼミではコース全員の先生と博士前期・後期課程の院生が集まり、研究発表を行います。ゼミは発表の仕方、論文の書き方といった基本的なことはもちろん、指導教員以外からも多角度から内容に深く切り込んだコメントや質問が飛び交い、とても力の付く有意義な時間になっています。加えて本コースが刊行する査読つき学術誌『神戸文化人類学研究』への論文投稿や編集も行っています。
博士後期課程になると、博士論文執筆やその後も見据えたアドバイスをいただいたり、院生同士で研究上の情報共有をしたりし、互いに研鑽を詰める良い環境となっています。
平野 智佳子 さん
(2019年度博士後期課程修了)
研究テーマ:「ポスト植民地状況を生きるオーストラリア先住民のアボリジナル・ウェイに関する人類学的研究―中央砂漠における飲酒をめぐる諸実践に注目して」
現在、国立民族学博物館助教
★メッセージ
オーストラリア中央砂漠、どこまでも続く荒野に現れるアボリジニの小さなコミュニティが私の調査地です。そこでアボリジニたちと共に暮らしながら、規制下における酒の獲得、分配の方法を調査しています。
人類学的研究に不可欠ともいえるフィールドワークでは、自らの「常識」が覆される瞬間が度々訪れます。私にとってアボリジニたちとの生活は驚きと困惑の連続でした。彼らと行動をともにしていると、従来のものの見方ではどうしても説明のつかないことがあると気づかされます。そうした違和感は、時として「分かり合うのは
無理なのではないか」という苛立ちや徒労感に結びつくこともありますが、簡単に手放してはいけません。なぜなら、それらが現地の人々の生きる世界を読み解くための重要な手がかりとなるからです。
大学院では、このフィールドワークでの発見を民族誌としてまとめていきます。先行研究の読解や整理、調査データの扱いや議論の展開の方法等、論文執筆の技術の習得は決して容易ではありませんが、先生方は根気強く指導してくださいますし、院生仲間との交流も心の支えになるでしょう。論文執筆に並んで、研究生活では調査資金の獲得も大きな課題となりますが、日本学術振興会の特別研究員など競争的資金に関してコース内にしっかりとしたサポート体制が築かれており、採択実績も継続して出ています。
文化人類学コースでは数年間に渡る課程を修了した後、多くの院生がアカデミズムの世界に羽ばたきます。研究者として第一線で活躍される先輩方の背中を見て私も研究職を志しました。まだまだ駆け出しですが、院の扉を叩いた日の知的好奇心は衰えることなく、益々刺激的な毎日を過ごしています。フィールドで得られた知見から私たちの生きる世界を紐解くことに関心のある方はぜひ本コースの扉を叩いてみてください。皆さんと人類学の議論を交わす日を楽しみにしています!
澤野 美智子 さん
(2013年度博士後期課程修了)
神戸大学文学部人文学科卒、韓国ソウル大学校社会科学大学院人類学科修士課程修了。
博士論文タイトル:「〈オモニ〉を通して見る韓国の家族―乳がん患者の事例から」。
現在、立命館大学総合心理学部准教授
★メッセージ
私の研究テーマは、韓国の家族です。特に、乳がん患者さんたちが病気に対処するなかで家族とどのような相互行為を行っているのか、ということに注目して博士論文を書きました。現在はさらに、代替療法的な食餌療法、ケア、ジェンダーなどの問題へと広げて研究を進めています。
博士課程では、研究者としての心構えから論理的な文章の書き方、博士論文のアドバイスにとどまらず、将来就職したとき学生を教えるためのスキルに至るまで、長期的な展望を見据えたご指導をいただきました。指導教員以外の先生方に教えを請いに行くことも積極的に奨励される雰囲気ですので、ひとつの問題に対して様々な角度からご意見をいただくことができ、考えを深めることができました。
また、院生たちで行う研究会や読書会も、研究情報を交換したり学問的知見を深めたりするにとどまらず、研究上の悩みを共有したり互いにアドバイスをしあったりするうえでも非常に有意義でした。志願者の皆さんも、このような恵まれた環境を活かし、充実した大学院生活を送ってください。
学部では文化人類学を専攻していませんが、大丈夫でしょうか。
必ずしも学部で文化人類学の専門コースにいる必要はありません。ただし、文化人類学についての基本的知識を身につけておくとよいでしょう。最近は手頃な入門書、概説書がふえていますので、まずはそれらを参考にし、所属する大学の文化人類学関係の講義・演習を受講することをお勧めします。大切なことは、明確なテーマをもち、これを文化人類学の視点から考える姿勢です。
指導教員以外に研究上あるいは論文の指導を受けたり、論文テーマが変わって指導教員の変更をすることはできますか?
教員全員の共同指導体制をとっており、指導教員以外からも指導を受けることができます。また、研究テーマを変更する必要が生じた場合には、所定の手続きを経て指導教員をコース内で変更することも可能です。