国際文化学研究科への招待

神戸から始まる新しい国際文化研究

最終更新日 2019年5月9日

研究科長あいさつ

国際文化学研究科長 西谷 拓哉

国際文化学研究科長
西谷 拓哉

 吉野弘「夕焼け」という詩があります。舞台は満員電車、席に座っているのは若者と娘。娘の前に一人の年寄りが立つ。娘はしばらくためらった後、席を譲る。年寄りは礼も言わず次の駅で降りていく。また別の年寄りが現れる。今度も娘は逡巡した後、席を譲る。年寄りは次の駅で礼を述べて降りていく。また別の老人が現れる。今度は娘は席を立たない。うつむいたまま身体をこわばらせている。詩人はそこで電車を降り、「われにもあらず受難者」となった娘が「やさしい心に責められながら」どこまで行けるだろうか、「下唇を噛んで/つらい気持ちで/美しい夕焼けも見ないで」と想像します。

 あなたならこの詩をどのように読むでしょうか。この詩の誰に自分を重ねますか。席を立つのがなぜこの娘でなければならないのか。若者は何をしているのか。年寄りが次々と目の前に立つことに象徴される娘の聖性と、聖人になりきれない人間的な葛藤。席を譲られなかった三人目の老人は娘のことをどう思っているのか。娘を見る詩人は立っていたのか座っていたのか。「詩人」の役割とは何か――観察者なのか、つらい気持ちでいる娘(人間)と美しい夕焼け(超越的自然)を結びつけたいと願う媒介者なのか。そもそも席を譲る譲らないということが他の国で詩の題材となり得るか……。車輛というごく狭い空間の中ですら複数の関係性が交錯し、それを読みとる視点と文脈はいくつもあり得えます。

 ローカルな電車から地球規模へ一気に話を飛躍させてみましょう。私たちを取り巻く社会の様相はグローバル化の進展に伴ってますます複雑化し、時には激しい摩擦や対立が生じています。そのような刻々変化する現代社会の諸問題に対処するには複眼的なアプローチが必要です。

 国際文化学研究科は、異文化共存を見据えた先端的な文化研究の推進を理念として掲げ、単一のディシプリンを越えた領域横断的な研究を積み重ねています。本研究科には2専攻、15のコースが設けられていますが、それは個別の専門領域を深く掘り下げながらも、そこに留まることなく、異分野の学問研究の養分を吸収しながら、従来にはないテーマや視点を探索し、これまで隠されて見えなかった問題群を発見するための配置です。

 本研究科が国内外の大学や研究機関と連携して取り組んでいるプロジェクトに、「日欧亜におけるコミュニティの再生を目指す移住・多文化・福祉政策の研究拠点形成」(日本学術振興会の研究拠点形成事業 A.先端拠点形成型)があります。これは、人の移動により生ずる多文化化が地域コミュニティの分断をもたらしかねない現状を憂慮し、福祉の再分配に必要な連帯感の構築に必要な政策を提言するための事業であり、人文科学と社会科学の交差・融合による最先端かつ世界水準の研究成果を発信することを目指しています。

 本研究科では多彩な専門と経験を有する教員・学生が自由闊達に意見を交わしながら研究を進めていく環境が整っています。海外からの留学生も多数おり、この研究科自体が地球全体の縮図であるといっても過言ではありません。グローバル化する世界で生じる問題の解決には多様なアクターに対する共感と想像力が不可欠です。この研究科に集う皆さんがそれぞれの専門的知識と知性を結集して、未来につながる新たな公共的価値の創造に取り組んで下さることを心から期待しています。

研究科長 西谷 拓哉

 

 

研究科の理念と目標 (Our Mission and Aims)

 国際文化学研究科は、異文化共存を見据えた文化研究の先端的領域を開発し、人類文化を把握するための新たなパラダイムを構築することをその理念としています。
そしてそれを実現するために、以下の5 つの研究目標を設けています。

  1. 文化を複合体と捉え、異文化間の関係性を視座として文化研究を行う。
  2. 複合体としての文化を、衝突、融合、交渉などの異文化間の相互作用という視座から、動態的に研究する。
  3. グローバル化する現代世界の文化変容を多角的に研究する。
  4. 言語や情報に関わる先端的コミュニケーション研究の開発を行なう。
  5. 中心/ 周縁、文明/ 未開、先進/ 後進などの一元的で単眼的なパラダイムから、多元的で複眼的なパラダイムヘのシフトを実現し、現代世界の文化動態に則した研究方法を開拓する。

 

アドミッション・ポリシー、ディプロマ・ポリシー

アドミッション・ポリシー (Admission Policy)

 国際文化学研究科では、高い異文化理解能力と自在なコミュニケーション能力を有し、豊かな学識と創造的な研究能力を備えた人材を育成することを目指しています。
 上記の教育研究上の目標をふまえ、本研究科が求めるのは次のような学生です。

前期課程

Master’s Program

  • 文化を複合体として捉え、異文化間の関係性を多角的に探究することに強い意欲を持ち、それを達成する基礎的な能力を有する学生
  • 言語情報コミュニケーションの動態を深く理解し、現代のグローバル社会の諸課題に取り組むことに強い意欲を持ち、それを達成する基礎的な能力を有する学生
  • 高い専門性の上に立った学際的研究を行うことに強い意欲を持ち、それを達成する基礎的な能力を有する学生

後期課程

Doctoral Program

  • 複合体としての文化の構造と動態を究明し、文化研究の先端的な領域を主体的に開拓することに強い意欲を持ち、それを達成する基礎的な能力を有する学生
  • 言語情報コミュニケーションの諸問題を探求し、グローバル化する現代世界を多角的に研究することに強い意欲を持ち、それを達成する基礎的な能力を有する学生
  • 高度な専門性の上に立った領域横断的な研究を行うことに強い意欲を持ち、それを達成する基礎的な能力を有する学生

 

ディプロマ・ポリシー (Diploma Policy)

 国際文化学研究科は、深い異文化理解能力と自在なコミュニケーション能力を有し、豊かな学識と創造的な研究能力を備えた人材を育成することを目指しています。この目的を達成するため、以下に示す方針に従って当該学位を授与します。

前期課程

Master’s Program

本研究科に原則2年以上在学し、履修要件として定めた所定の単位を修得し、かつ必要な研究指導を受けた上、修士論文又は特定の課題についての研究成果の審査及び最終試験に合格すること。全学のディプロマ・ポリシーに定める人間性・創造性・国際性・専門性の四つに加え、学生が修了までに身につけるべき能力を次のとおりとします。

・文化が多様であること、それらの文化が相互に影響しながら変容するものであることを理解し、異文化間の関係性を多角的に探究することができる能力。
・言語情報コミュニケーションの動態を深く理解し、現代のグローバル社会のさまざまな課題に取り組むことができる能力。
・高い専門性の上に立った学際的研究を行うことができる能力。

後期課程

Doctoral Program

本研究科に原則3年以上在学し、履修要件として定めた所定の単位を修得し、かつ必要な研究指導を受けた上、博士論文の審査及び最終試験に合格すること。全学のディプロマ・ポリシーに定める四つの能力に加え、学生が修了までに身につけるべき能力を次のとおりとする。

・多様かつ相互に影響しながら変容する諸文化の構造と動態を究明し、文化研究の先端的な領域を主体的に開拓することができる能力。
・言語情報コミュニケーションの諸課題を探求し、グローバル化する現代世界を多角的に研究することができる能力。
・高度な専門性の上に立った領域横断的な研究を行うことができる能力。

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