国際関係・比較政治論

最終更新日: 2025年06月17日

文化相関・異文化コミュニケーション系 国際関係・比較政治論コース

 

 本コースでは、高い専門性をベースに世界各地域の政治現象を捉えることを目指しています。そのために、国際関係や国内政治過程に関する質的調査、理論の適用、統計的手法を用いた高度な研究が、院生によって進められています。従来の政治学や国際関係論では十分に明かにされてこなかった課題に注目して解き明かしたい意欲的な皆さんを歓迎いたします。5名の教員は、政治学の主要なアプローチを全てカバーするバランス良い構成となっており、院生による新しい研究意欲や向上心に対応していく体制となっています。
 特筆したい点として、論文作成の基本に関して新年度毎にオリエンテーションを行っています。また論文作成指導では、前期課程と後期課程の院生が全員、出席するグループ研究発表会を実施しています。この場の知的迫力は、ぜひ体験して頂きたいものです。教員と院生の全員が協力して徹底した検討を加え、オープンな場で鍛え合っています。この過程で、参加者には、向上心、自発性や集団での作法が身に付きます。また政治学の基礎から応用までを修得し、キャリア形成を目指す院生が社会に出ても通用する思考力や討論力を体得していきます。
 本コースでは、院生がどんな研究テーマを選択しても、新しい多文化共生のあり方を大切にする視線に身に付けて頂きたいと思っています。教育政策、移民問題、民主化、ナショナリズムの動態、安全保障問題、福祉制度などについて、基本と応用を大切にしながら研究が積み上げられてきたのも本コースの特徴です。また前期課程では政治学以外を修めた方が後期課程で政治学を身に付けたい、といった学際的な院生の志向に対応してきました。キャリアアップ志向の方にも、研究者志望の方にも、きっと自分を向上させるきっかけを見つけてもらえるはずと信じています。
 わたしたちと共に、新しい国際社会のあり方を見出そうではありませんか!

 
就職実績

(前期課程) 日本放送協会(NHK)、関西経済連合会、大阪市、神戸大学職員、日本新薬、テス・エンジニアリング、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、国際交流基金、㈱日本オラクル、ほか

(後期課程) アジア経済研究所、Promis学術研究員、日本経済研究所、安全保障貿易情報センター、関西学院大学国際学部専任講師、大阪大学人間科学研究科助教、ほか

在籍学生数

(前期課程) 8名
(後期課程) 2名

論文テーマ例

中国の一帯一路と日本政府と経団連の対応
21世紀の日米同盟の制度化における相互不安
アメリカにおける外国人非熟練労働者受け入れ政策
The role of education in France and Japan’s cultural diplomacy
西ヨーロッパにおける政党システムの動態パターンの比較研究
イスラエルの核兵器をめぐる不透明政策と全方位均衡
米国連邦議会下院議員の投票行動の分析
セルビアのヨーロッパ化-メディア表現の自由とコソヴォとの関係正常化に注目して
イラン核問題における討議の論理

所属教員の紹介

中村 覚 教授 比較地域社会論特殊講義ほか
国際政治学の諸理論を見直し、新興・発展途上国地域における紛争予防、多文化主義、テロ対策等に適するアプローチやモデルを探求しています。中東・ムスリム地域の安全保障、日本と中東の関係を含む国際関係、国家形成を研究しています。

安岡 正晴 教授 比較地域政治論特殊講義ほか
現代アメリカ政治(特に移民・人種問題、連邦制、日米中関係など)を研究しています。

新川 匠郎 講師 多文化政治社会論特殊講義ほか
議会と政府の関係、ドイツ・ヨーロッパの政治、質的比較の手法を主に研究しています。

David Adebahr 講師 国際政治社会論特殊講義ほか
国際関係論に基づいて近代アジア太平洋の国際関係を研究しております。特に日本の外交政策などをテーマにしています。

周 俊 講師 多文化政治社会論特殊講義ほか
マルチアーカイブのアプローチにより、中国政治史、とりわけ中国共産党史、毛沢東研究を主に研究しております。

 

所属学生からのメッセージ

 

杉本 流花さん(博士前期課程1年)
神戸大学国際人間科学部卒業
研究テーマ:「知識経済における文化政策の成熟と教育政策の連動性の検討ー欧州比較にみるイタリアの課題からー」

 学部生のころ、欧州連合(EU)における政策や制度を学び、1年間のボローニャ大学留学を通じてイタリアの教育制度や文化イベントを目の当たりにし、特に欧州の教育文化政策分野に関心を深めました。学部の卒業論文では、欧州高等教育圏におけるボローニャ・プロセスを通じた高等教育の比較研究を行いました。
 その中で、EUの教育文化政策に対する姿勢の変化や、EUとしての足並みを揃えながらも加盟国はそれぞれの方針を保つという複雑な仕組みについて、また研究の枠組みのつくり方や分析手法などについてもっと学びたいと感じ、本研究科への進学を決めました。
 本研究科では、質的研究・量的研究のさまざまな手法への理解を深め、その使用事例や特徴を他学生や先生方と議論するなど非常にインタラクティブかつ批判的に学んでいます。また、分析ソフトを実際に用いる演習を通じてスキルを向上させることで、問いに対する適切な分析手法やその組み合わせなどを選択して研究を進めることができるようになったと感じています。専門知識に加え、情報収集・処理能力を身につけることは、研究を行う上で肝要です。また、このコースでは多様な専門の先生方の授業や自分の研究に対する異なる角度からのアドバイスを通して多角的な視点を養える上、他コースの授業の履修も可能で、学際的にアプローチできる環境があります。
 歴史的背景や各国の状況の違いなどを踏まえつつ他国と協力する形を見つけたり、協力できる制度を整備したりするのは簡単ではありません。教育のあり方や文化的対立への応答性が問われる中で、そもそもより良い教育政策とは何かや他の社会政策との関係性や補完性を模索し、長期的に社会の安定や相互理解に貢献したいと考えています。

 

宮本 聖斗さん(博士後期課程3年)
2020 年度神戸大学大学院国際文化学研究科博士前期課程修了
研究テーマ:「セルビアの欧州化と権威主義化」

 私は学部の卒業間際に旧ユーゴの政治に興味を持ち始めました。大学院進学後は、旧ユーゴの中でもセルビアに焦点を当てて研究を進め、現在はセルビアにおける欧州化と権威主義化の実態およびメカニズムに大きな関心を持っています。
 国際関係・比較政治論コースでは、政治学と国際関係論を主な学問的支柱に置きつつ、各院生の多様な研究課題と研究手法を受け入れる体制が整備されています。本コースの講義とゼミでは、質的研究と量的研究のノウハウ、担当教員が専門とする学問領域と地域の実状を幅広く習得することができます。さらに、他コースが開講する講義やゼミの履修も可能で、実際に私も修士時代に他コースの授業からも多くの学びを得ました。
 本コースで実際に研究を進める際には、一ヶ月に数回の頻度で開催される、コース全体の院生と教員による研究発表会が非常に有益です。この研究発表会は、本コースの大きな特徴と言え、そこでの発表と質疑応答を通じ、自身の研究の質と質疑応答の技術を高めることができます。さらに、この研究発表会は、院生だけでなくコース所属の教員による研究発表の場でもあり、院生と教員全員が各々の研究を共有し、研鑽を重ねる取り組みでもあります。
 修士でキャリアアップを目指す方にも、修士と博士を通して研究職を目指す方にも、非常に刺激的で有意義な環境が整っていると思います。

 
修了学生からのメッセージ

 

劉 文卿さん(2024年度博士前期課程修了)
中央大学経済学部国際経済学科卒業
研究テーマ:「全方位均衡論からみるパキスタンの非同盟政策―第二次印パ戦争(1965年66年)を事例として」

 私の研究テーマは「全方位均衡論からみるパキスタンの非同盟政策―第二次印パ戦争(1965年―66年)を事例として」です。冷戦におけるパキスタン第2 任大統領アユブは各大国との関係構築の展開を検討していく中で、小国はなぜ能動的に積極的行動をとるのか、及び、その外交政策がカシミール紛争に与える影響を明らかにしようとしています。
 本コースでは、定期的に開催される研究発表会を通じて、異なる研究分野の先生や学生と活発に意見交換を行い、多角的な視点から学びを深めることができる貴重な機会を提供していただいています。また、国際的な視野を養う機会が充実しており、異文化環境での経験を積みながら自己成長を促進することができます。
 昨年、私はイギリスへの交換留学に参加し、難民ボランティア活動に積極的に取り組むとともに、さまざまな国籍を持つ人たちと交流を深め、多様な価値観を理解し、新たな経験と学びを得ることができました。この経験を活かし、今後も積極的に挑戦し続けたいと思います。
 「迷いと戸惑いの中こそ、最初の一歩を踏み出す時です。小さな石が湖に投げ込まれるように、その波紋がどこまで広がるかはわかりませんが、必ず新たな可能性を切り拓くことでしょう。

 

TAILLAT Amaury (タヤ・アモリ)さん(2024年度博士前期課程修了)
フランス国立東洋言語文化大学日本学部卒業
研究テーマ:「米軍基地をめぐる中央―地方関係と沖縄県の新たな「迂回戦略」:沖縄県の対米ロビー活動を中心に」

 現在、神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程研究生フランスで日本学を専攻する以前から沖縄について耳にすることはありましたが、本格的に関心を持つようになったのは、日本学部に入学してからでした。私の出身地であるブルターニュ地方と同様に、沖縄も本土とは異なる文化・言語・歴史を有しており、その独自性に強く惹かれました。
 やがて、沖縄に駐留する米軍基地に関する諸問題やその対応、さらには県民への影響について関心を深めるようになり、フランス国立東洋言語文化大学大学院(INALCO)の修士課程一年次において、「沖縄の基地問題と沖縄人のアイデンティティ・市民性の関係」をテーマとする小論文を執筆しました。
 その後、神戸大学国際文化学研究科とのダブルディグリー留学プログラムに参加することが決まり、2024年春からは新たな視点で沖縄の基地問題を研究する機会を得ました。国際関係・比較政治論コースの院生として、沖縄県と日本政府の関係を分析し、沖縄県が展開する国際活動にも目線を向けました。フランスではあまりない定期的な指導演習を通じて、指導教員のみならず、コースの教授陣や他の院生から貴重な指摘やアドバイスをいただく機会に恵まれました。研究室全体に協調的な雰囲気が漂い、研究が円滑に進む環境が整っていたことも大変ありがたかったです。授業では意見交換や議論が求められるため、当初は不安を感じましたが、多様なバックグラウンドを持つ院生たちとの交流を通じて、積極的に発言する自信を養うことができました。
 現在は、博士論文の準備を進めるため、神戸大学国際文化学研究科の博士課程に研究生として進学することを決めました。修士課程での経験を活かし、2026年からフランスと日本の大学院での共同指導博士課程への進学を目指しています。

 

qa

学部では政治学や国際関係論を専攻していたわけではないのですが、大丈夫でしょうか。

 必ずしも学部で専攻している必要はありませんが、研究をより実りあるものとするために、入学までに予め基本的知識を身につけておくと良いでしょう。
 現代政治の複雑な諸問題を理解するためには、これまでの学問領域を横断したり乗り越えたりしながら、新しい知見を目指す営みは意義高い挑戦であると考えられます。
 オープンキャンパスで政治学の勉強の仕方に関して説明しますので、ぜひお越しください。

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