最終更新日: 2024年09月30日
文化相関・異文化コミュニケーション系 国際関係・比較政治論コース

本コースでは、高い専門性をベースに世界各地域の政治現象を捉えることを目指しています。そのために、国際関係や国内政治過程に関する質的調査、理論の適用、統計的手法を用いた高度な研究が、院生によって進められています。従来の政治学や国際関係論では十分に明かにされてこなかった課題に注目して解き明かしたい意欲的な皆さんを歓迎いたします。5名の教員は、政治学の主要なアプローチを全てカバーするバランス良い構成となっており、院生による新しい研究意欲や向上心に対応していく体制となっています。
特筆したい点として、論文作成の基本に関して新年度毎にオリエンテーションを行っています。また論文作成指導では、前期課程と後期課程の院生が全員、出席するグループ研究発表会を実施しています。この場の知的迫力は、ぜひ体験して頂きたいものです。教員と院生の全員が協力して徹底した検討を加え、オープンな場で鍛え合っています。この過程で、参加者には、向上心、自発性や集団での作法が身に付きます。また政治学の基礎から応用までを修得し、キャリア形成を目指す院生が社会に出ても通用する思考力や討論力を体得していきます。
本コースでは、院生がどんな研究テーマを選択しても、新しい多文化共生のあり方を大切にする視線に身に付けて頂きたいと思っています。教育政策、移民問題、民主化、ナショナリズムの動態、安全保障問題、福祉制度などについて、基本と応用を大切にしながら研究が積み上げられてきたのも本コースの特徴です。また前期課程では政治学以外を修めた方が後期課程で政治学を身に付けたい、といった学際的な院生の志向に対応してきました。キャリアアップ志向の方にも、研究者志望の方にも、きっと自分を向上させるきっかけを見つけてもらえるはずと信じています。
わたしたちと共に、新しい国際社会のあり方を見出そうではありませんか!
就職実績 | (前期課程) 日本放送協会(NHK)、関西経済連合会、大阪市、神戸大学職員、日本新薬、テス・エンジニアリング、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、国際交流基金、㈱日本オラクルほか (後期課程) アジア経済研究所、Promis学術研究員、日本経済研究所、安全保障貿易情報センター、関西学院大学国際学部専任講師、大阪大学人間科学研究科助教ほか |
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在籍学生数 | (前期課程) 10名 (後期課程) 5名 |
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論文テーマ例 | 中国の一帯一路と日本政府と経団連の対応 21世紀の日米同盟の制度化における相互不安 アメリカにおける外国人非熟練労働者受け入れ政策 The role of education in France and Japan’s cultural diplomacy 西ヨーロッパにおける政党システムの動態パターンの比較研究 イスラエルの核兵器をめぐる不透明政策と全方位均衡 米国連邦議会下院議員の投票行動の分析 セルビアのヨーロッパ化-メディア表現の自由とコソヴォとの関係正常化に注目して イラン核問題における討議の論理 |
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所属教員の紹介 | 中村 覚 教授 比較地域社会論特殊講義ほか 国際政治学の諸理論を見直し、新興・発展途上国地域における紛争予防、多文化主義、テロ対策等に適するアプローチやモデルを探求しています。中東・ムスリム地域の安全保障、日本と中東の関係を含む国際関係、国家形成を研究しています。 安岡 正晴 教授 比較地域政治論特殊講義ほか 現代アメリカ政治(特に移民・人種問題、連邦制、日米中関係など)を研究しています。 新川 匠郎 講師 多文化政治社会論特殊講義ほか 議会と政府の関係、ドイツ・ヨーロッパの政治、質的比較の手法を主に研究しています。 David Adebahr 講師 国際政治社会論特殊講義ほか 国際関係論に基づいて近代アジア太平洋の国際関係を研究しております。特に日本の外交政策などをテーマにしています。 |
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勝裕 遼さん(博士前期課程2年)
神戸大学国際人間科学部グローバル文化学科卒業
研究テーマ:「ルワンダ・ブルンジにおける民族紛争終結後の政治体制の変遷」
もともとアフリカ地域に関心を持っていたため、学部生のときから比較政治学を専攻し、アフリカ地域における権威主義体制の存続要因について研究を行っていました。自身の関心に基づき、途上国開発の分野でキャリアを歩んでいくことを考えていましたが、そのために必要な専門知識や論理的思考力、必要な情報を収集・整理・解釈する力などが不足していることを痛感し、それらを身につけるために大学院進学を決めました。特に政治学の分野は、複雑性が高いぶん自分にない価値観に深く触れる機会も多く、より多様な視点から物事を捉えることに繋がります。その多様な視点は、日本とは全く異なる価値観のもとで生きている途上国の人々と協働体制を構築していく際にも、自分を大きく助けてくれるものであると考えています。現在はルワンダとブルンジの政治体制に関する研究を行っていますが、現地の政治指導者たちについてより多角的に考えることで、キャリアを通じて大切な視点を身につけられていると感じています。今後も勉強を続けながら、様々な価値観の人々と協働することができる人材に成長していきたいと思っています。
宮本 聖斗さん(博士後期課程3年)
2020 年度神戸大学大学院国際文化学研究科博士前期課程修了
研究テーマ:「セルビアの欧州化と権威主義化」
私は学部の卒業間際に旧ユーゴの政治に興味を持ち始めました。大学院進学後は、旧ユーゴの中でもセルビアに焦点を当てて研究を進め、現在はセルビアにおける欧州化と権威主義化の実態およびメカニズムに大きな関心を持っています。
国際関係・比較政治論コースでは、政治学と国際関係論を主な学問的支柱に置きつつ、各院生の多様な研究課題と研究手法を受け入れる体制が整備されています。本コースの講義とゼミでは、質的研究と量的研究のノウハウ、担当教員が専門とする学問領域と地域の実状を幅広く習得することができます。さらに、他コースが開講する講義やゼミの履修も可能で、実際に私も修士時代に他コースの授業からも多くの学びを得ました。
本コースで実際に研究を進める際には、一ヶ月に数回の頻度で開催される、コース全体の院生と教員による研究発表会が非常に有益です。この研究発表会は、本コースの大きな特徴と言え、そこでの発表と質疑応答を通じ、自身の研究の質と質疑応答の技術を高めることができます。さらに、この研究発表会は、院生だけでなくコース所属の教員による研究発表の場でもあり、院生と教員全員が各々の研究を共有し、研鑽を重ねる取り組みでもあります。
修士でキャリアアップを目指す方にも、修士と博士を通して研究職を目指す方にも、非常に刺激的で有意義な環境が整っていると思います。

丸岡 樹奈さん(2022年度博士前期課程修了)
金沢大学人間社会学域国際学類卒業
研究テーマ:「文化多様性条約にみるユネスコの規範形成能力」
現在、日本放送協会(NHK)勤務
学部の卒業論文で、ユネスコ世界遺産の「政治化」問題を扱ったことから、文化を扱う国際機関であるユネスコと、その政治性について、さらに広い視点から研究に取り組みたいと感じ、本研究科へ進学しました。修士レポートでは、ユネスコの「文化多様性条約」に着目し、当条約の規範が加盟国をはじめ様々なアクターの影響のもとで形成される過程に関して研究を進めました。
本コースでは、定期的な指導演習の時間が設けられており、指導教員の先生のみならず、コースの先生方や院生の方々から多角的な意見をいただき、修士レポートの方向性を見出すことができました。また、修士課程の2年間で、研究と直結する授業以外にも、他コース・他研究科の授業も履修しました。ジェンダーと移民に関する問題や、ソフトを用いた政治現象の分析手法についても学び、幅広い興味や多様な視点を養えたと感じています。また、海外研修プログラムのチューターとしてパリのユネスコ本部に訪問し、学部生のサポートや、ユネスコ職員の方とお話させていただく大変貴重な機会もいただきました。
現在はテレビ局でディレクターとして働いており、国際ニュースを扱う部署に所属しています。「論文」と「テレビ」--。媒体こそ異なれど、“一つの物事をどう見つめどう伝えるか”という点で、大学院での学びが業務にも活かされていると感じます。限りある大学院生活、大変なこともあるかとは思いますが、この研究科での経験や学びが皆さんにとっても実り多きものであることを祈っています。
Couet Pauline (クエ・ポリーヌ)さん(2023年度博士前期課程修了)
フランス国立東洋言語文化学院日本学部卒業
研究テーマ:日本と NATO と欧州連合 (EU) との安全保障協力(Japan’s Security Cooperation with NATO and the European Union (EU) )
現在、パリ政治学院国際安全保障研究科博士後期課程在籍・フランス陸軍戦略大学(Ecole de Guerre)でインターン
I did my undergraduate at the French Institute for Eastern Languages (Inalco), where I double majored in Japanese Studies and International Relations. I then did a double master’s degree with Inalco and Kobe University. During my master’s degree, I specialized on the development of security and defense cooperation between Japan and Europe. My master’s report discussed the geopolitical factors that led to closer cooperation between Europe and Japan, as well as the development of a sense of community through shared values and strategic understanding.
A unique feature of the International Relations and Comparative Politics course is that it allowed me to actively discuss my research with teachers and student alike, which gave me the opportunity to gain the advice and opinion from many people, Japanese, European or other.
The rich debates and research presentations to which I assisted, as well as my classmates and teachers’ input on my research throughout the year also helped me to articulate the structure of my report, and correct many of the shortcomings in the successive versions. Moreover, my academic course in Kobe University broadened my horizon on a range of topics relating to international relations. Even though it is not necessarily directly reflected in my report, the different courses I took helped develop my general understanding of the world.
As I wish to work for the French diplomacy in nurturing and developing relations between France and Japan, my studies in the graduate school of Intercultural Studies were very useful and gave me research knowledge, and enriching perspectives from Japan and around the world.

学部では政治学や国際関係論を専攻していたわけではないのですが、大丈夫でしょうか。
必ずしも学部で専攻している必要はありませんが、研究をより実りあるものとするために、入学までに予め基本的知識を身につけておくと良いでしょう。
現代政治の複雑な諸問題を理解するためには、これまでの学問領域を横断したり乗り越えたりしながら、新しい知見を目指す営みは意義高い挑戦であると考えられます。
オープンキャンパスで政治学の勉強の仕方に関して説明しますので、ぜひお越しください。