国際関係・比較政治論
文化相関・異文化コミュニケーション系 国際関係・比較政治論コース
最終更新日 2021年8月14日
コースの紹介
本コースでは、社会科学をベースに世界各地域の政治現象を捉えることを目指しています。たとえば、国際社会の変容を踏まえながら、国内の政治と社会の関係が変化する様態を浮き彫りにする高度な研究が、院生によって進められています。また、従来の政治学や国際関係論では十分に取り上げられてこなかった分野横断的なテーマについて、積極的に現地調査を行いながら取り組む院生もいます。5名の教員は、国際政治学の主要なアプローチを全てカバーするバランス良い構成となっており、院生による新しい研究意欲に対応していく体制となっています。
特筆したい点として、論文作成の基本に関して新年度毎にオリエンテーションを行っています。また論文作成指導では、前期課程と後期課程の院生が全員、毎週出席するグループ演習を実施しています。この場の知的迫力は、ぜひ体験して頂きたいものです。教員と院生の全員が協力して徹底した検討を加え、オープンな場で鍛え合っています。この過程で、参加者には、向上心、自発性や集団での作法が身に付きます。また国際政治学の基礎から応用までを修得し、また社会に出ても通用する思考力や討論力が体得されます。
本コースでは、院生がどんな研究テーマを選択しても、新しい多文化共生のあり方を大切にする視線に身に付けて頂きたいと思っています。教育政策、移民問題、民主化、ナショナリズムの動態、福祉制度などの政治と文化が交錯するテーマに関して、研究が積み上げられてきたのも本コースの特徴です。また前期課程では歴史学を修めた方が、後期課程で政治学を身に付けたい、といった学際的な院生の志向に対応してきました。キャリアアップの方にも、研究者志望の方にも、きっと自分を向上させるきっかけを見つけてもらえるはずと信じています。
わたしたちと共に、新しい国際社会のあり方を見出そうではありませんか!
就職実績 | (前期課程) 関西経済連合会、大阪市、神戸大学職員、日本新薬、テス・エンジニアリング、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、国際交流基金、㈱日本オラクル (後期課程) アジア経済研究所、Promis学術研究員、日本経済研究所、安全保障貿易情報センター、関西学院大学国際学部専任講師、大阪大学人間科学研究科助教 |
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在籍学生数 | (前期課程) 7名 (後期課程) 7名 |
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論文テーマ例 | The Futenma Relocation Problem in the U.S-Japan Military Alliance、米国連邦議会下院議員の投票行動の分析、セルビアのヨーロッパ化-メディア表現の自由とコソヴォとの関係正常化に注目して、イラン核問題における討議の論理、スウェーデンにおける移民政策の変容と移民の周辺化? 1990 年代以降のワークフェア強化による集住化と格差拡大、エジプトにおけるテロリズムの社会運動論的分析 |
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所属教員の紹介 | 中村 覚 教授 比較地域社会論特殊講義ほか 国際政治学の諸理論を見直し、新興・発展途上国地域における紛争予防、多文化主義、テロ対策等に適するアプローチやモデルを探求しています。中東・ムスリム地域の安全保障、日本と中東の関係を含む国際関係、国家形成を研究しています。 新川 匠郎 講師 比較政治社会論特殊講義ほか 議会と政府の関係、ドイツ・ヨーロッパの政治、質的比較の手法を主に研究しています。 安岡 正晴 教授 比較地域政治論特殊講義ほか 現代アメリカ政治(特に移民・人種問題、連邦制、日米中関係など)を研究しています。 David Adebahr 講師 国際政治社会論特殊講義ほか 国際関係論に基づいて近代アジア太平洋の国際関係を研究しております。特に日本の外交政策などをテーマにしています。 周 俊 講師 多文化政治社会論ほか 権威主義、毛沢東、冷戦、日中関係などのキーワードに着目し、中国政治史とりわけ中国共産党史を研究しています。 |
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LEE SEUNGHANさん
(博士後期課程 1 年)
高知県立大学文化学部卒業
研究テーマ:「核兵器政策決定における政治体制の比較研究」
★メッセージ
韓国で高校を卒業後、より学びの場を広げるために来日し、東京で1年間、日本語を学習した後、高知で大学を卒業し、現在に至ります。
私は、中東・アラブ諸国を事例として、権威主義体制国家と民主主義体制国家の外交政策決定過程を比較しています。国際紛争の多くは、発展途上国地域で発生しますが、既存の理論研究は先進国を中心としているという問題点があると考え、私の研究が紛争解決・予防の鍵となるよう期待しています。将来は、外務省や外交を専門とする研究機関で、大学院で得た知識と経験を生かしたいと考えています。
本コースでは、既存の政治学や国際関係を踏まえ、民族や多文化主義、テロ対策を含む安全保障など、今日、国際社会で我々が考えるべき事案に目を向けることができます。そのためには、多様な目線から考察することが望ましく、毎年、複数回の研究発表会で、指導教員に限らず、多くの先生と学生たちで話し合う場が設けられております。また、院生研究室では院生同士で常に研究での疑問点などを共有することができ、共に成長できる環境になっています。私は文化学部を卒業したことから、国際関係・比較政治の知識が足りないのではないかと大学院進学前には大変に心配していましたが、入学後、このような環境で研究を進め、自己発展の日々を過ごしています。
私を含む海外からの留学生や、様々なところで留学を経験した院生たちと考えを共有することで、世界へ視野を広げ、より楽しく有意義な大学院生活を送れることもポイントです。
このような環境で、我々は未来へ向かっています。
木村 英里菜 さん
(博士前期課程 1 年)
2018 年ナポリ東洋大学アジア・アフリカ研究科博士前期課程修了。
2019 年神戸大学大学院国際文化学研究科博士前期課程修了。
★メッセージ
私は、学部時代には英語文化学科に所属していましたが、オーストラリア等への留学を経て国際関係学に関心を持つこととなり、当コースに進学しました。
国際関係学の中でも「非伝統的外交」に特に関心を抱き、修士課程では、「日本の広報文化外交政策の理論的考察」と題し、日本のパブリック・ディプロマシー政策をいくつかのモデルを通して理解することを試みました。また、大学院時代には、イタリア・ナポリへの二重学位留学にも挑戦させていただく機会を得て、アジアとは異なる広い視野から学ぶ大変貴重な経験となりました。
現在所属している職場は、まさに自らが研究対象としてきた広報文化外交政策を日本で唯一の公的機関として担う場であり、研究で得た知識を実務のレベルで理解し直しつつ、充実した日々を送っています。そのような中、修士課程で得た「調査力」や、「論理的思考」、さらにそれらをわかりやすく他者に伝える「プレゼンテーション能力」は、非常に役に立っているスキルといえます。
今後は、大学院で学んだことをベースとしつつ、博士後期課程への進学も見据え、実務と研究の両側面から「パブリック・ディプロマシー政策」を理解し、そして発信できるよう、さらに邁進したいと思います。
井上 司さん
(2019 年度博士前期課程修了)
現在、日本オラクルに勤務
★メッセージ
私は、安岡正晴先生の指導のもと、道徳的政策をめぐるアメリカ連邦最高裁裁判を研究しており、修士論文では戦後の保守主義運動に着目しながら判決と裁判官の投票の計量的分析を行いました。
私が本コースに進学した理由は、分野横断的に新たに知見を身につけながら学際的な環境で研究を進めたかったからです。いま振り返ると、その期待通りに実りの多い研究生活を過ごすことができたと思っています。本コースには政治学とはいっても、フィールドでは欧米、中東、日本、分野では政治過程論、政治史、計量政治学というように、各自異なる専門をもつ教員・学生が在籍しているので、授業での学びや研究成果のフィードバックを通じて自分の考えに抜け落ちていた重要な研究のヒントをふと見つけ出すという機会が多くあります。また研究の方法論に関しても皆それぞれ独自のスタイルをもっているので、一見自分の研究テーマとかけ離れた研究発表であってもそこでの議論展開や分析方法において大きな刺激を受けることもあります。風通しのよい雰囲気と充実した研究環境のなかで毎日楽しく研究に打ち込むことができたこと、お世話になった先生方と研究室の仲間たちには大変感謝しています。
佐藤 良輔さん
2018 年度博士後期課程修了
京都産業大学外国語学部卒業。神戸大学国際文化学研究科博士前期課程修了。
現在、神戸大学大学院国際文化学研究科学術研究員。
★メッセージ
私は、学部生の時にイタリア語を専攻し、大学院でイタリアの移民問題について研究しました。博士論文では、イタリアの移民政策の発展過程において重要な役割を果たした要因について、政治学の知見に基づきながら考察しました。
国際関係・比較政治論コースの特徴は、コースの教員と学生が参加する研究発表会が毎学期開催されることです。発表前に指導教員の先生と面談し、その後の発表会で多角的な視点から批評を受けながら、学位論文の執筆を進めます。このように研究指導を定期的に受けたことは、モチベーションの維持に繋がり、修士論文や博士論文の完成に向けてプラスに働きました。さらに、多種多様な関心をもつ本コースの院生たちと意見を交わしアドバイスを受けられたことは、移民問題という分野横断的なテーマを考察する際に大変役立ちました。
また、国際文化学研究科には様々なコースが置かれているので、所属するコース以外の授業も履修することができます。博士前期課程のときに参加したフィールドワークについての授業は特に興味深く、有意義な時間でした。大学院での年月はあまり長くないですが、様々な学問に触れることで多くの刺激を受け、充実した研究生活を送ることができると思います。
学部では政治学や国際関係論を専攻していたわけではないのですが、大丈夫でしょうか。
必ずしも学部で専攻している必要はありませんが、研究をより実りあるものとするために、入学までに予め基本的知識を身につけておくと良いでしょう。
現代政治の複雑な諸問題を理解するためには、これまでの学問領域を横断したり乗り越えたりしながら、新しい知見を目指す営みは意義高い挑戦であると考えられます。
オープンキャンパスで政治学の勉強の仕方に関して説明しますので、ぜひお越しください。