最終更新日: 2026年06月23日
グローバル文化専攻・現代文化システム系 モダニティ論コース
国民国家という政治原理であれ市場という経済原理であれ、あるいは小説という文学形式であれ遠近法という絵画技法であれ、西欧近代に由来するこれらの社会的・文化的な装置は、現代世界の基本的な枠組みをかたちづくってきました。ところが現在、この西欧近代の原理(モダニティ)は、グローバル化の進展ととともに根底から揺らいでいます。こうしたなかで求められているのは、あらためて「モダニティ」の意味を問いなおし、激動する世界のゆくえを的確に読み解くことだといえるでしょう。本コースでは、近現代の社会思想・経済思想・政治思想・科学思想・倫理思想など多岐にわたる言説群を丁寧に分析することをつうじて、アクチュアルな課題に応えうる足腰の強い思考力を養成することをめざしています。
| 就職実績 | (前期課程) 外務省(専門職)、西宮市役所、神戸大学(職員)、日本山村硝子、高知新聞社(記者)、共同通信社(記者)、イオン、がんこフードサービス、オーケー株式会社、金蘭中学校・高等学校(教員)、JNC、兵庫県高校教員(英語)、宝塚市役所 (後期課程) 神戸大学大学院国際文化学研究科助教、中国河南省新郷学院専任講師、トルコ・チャナッカレオンセキズマルト大学日本語教育学科専任講師、三重大学人文学部専任講師、松山大学経済学部特任講師 |
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| 在籍学生数 | (前期課程) 4名 (後期課程) 1名 |
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| 論文テーマ | ミシェル・フーコーの思想における戦争、闘争、権力 M・フーコーの統治論とネオリベラリズムの現代的展開 倫理的で選別的な永遠回帰の思考──ドゥルーズにおけるニーチェ主義 エルンスト・ユンガーのナショナリズム論について 初期ホルクハイマーの社会哲学──批判理論の認識論的基礎をめぐって E・フロムとフランクフルト学派──批判理論における精神分析学の受容 W・ベンヤミンの神話理論──永遠回帰とアレゴリーとの関係について 自由とその制度化──ハンナ・アーレントの行為論 ハンナ・アーレントの現象学的決断主義──「複数性」概念の再考 近代社会における性・権威・主体──フランクフルト学派からギデンズへ R・フォアストの寛容論──ロールズ/ハーバーマスとの比較を通じて 解釈と批判のはざま──チャールズ・テイラーの全体論をめぐって 理解社会学の展開──ウェーバー、シュッツ、エスノメソドロジー ピーター・L・バーガーの思想──「日常」概念と宗教論を手がかりに 社会システムと意味──ニクラス・ルーマンにおける理論的端緒 気候・環境破局下における政治的エコロジー 脱成長論と近代批判──社会思想史からの考察 |
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| 所属教員の紹介 | 上野 成利 教授 近代政治思想系譜論特殊講義ほか 政治思想・社会思想史。ホルクハイマー、アドルノらフランクフルト学派にかんする思想史研究を基軸にしながら、「暴力」「自由」「公共性」等の鍵概念の社会哲学的な分析に取り組んでいます。 著書:『思考のフロンティア 暴力』(岩波書店)など。 田中 祐理子 教授 近代科学思想系譜論特殊講義ほか 科学哲学・科学史。近現代の医学を中心とした科学の歴史と、同時代の哲学を研究しています。科学と人間性の関係を、生命科学や原子物理学の歴史を通じて考察しています。 著書:『病む、生きる、身体の歴史』(青土社)など。 箱田 徹 准教授 近代思想文化系譜論特殊講義ほか 社会思想史、社会理論。批判的な社会理論や社会哲学の展開と気候やロジスティクスといった今日的課題の動向とを見据えた上で、二〇世紀後半の社会思想の新たな読み方を探究しています。 著書:『ミシェル・フーコー』(講談社現代新書)など。 畠中 茉莉子 講師 近代社会思想系譜論特殊講義ほか 理論社会学・社会学説史。現代ドイツ、ヨーロッパの社会学説を手がかりに、人びとが社会について語る「意味」のあり方が近代化とともにいかに変化してきたのかを考察しています。訳書:ニクラス・ルーマン『社会の宗教』(共訳、法政大学出版局)など。
新任教員(2026年10月着任予定) 近代倫理思想系譜論特殊講義ほか |
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山本 楓真さん(博士課程後期課程1年)
法政大学文学部哲学科卒業
研究テーマ:「マックス・ホルクハイマーの社会哲学」
私の研究対象は、マックス・ホルクハイマーという20世紀のドイツで活躍した哲学者です。彼はいわゆる「フランクフルト学派」の創設者のひとりとして知られていますが、彼の哲学の全貌は意外にも明らかとなっていません。私の長期的な目標は、これを明らかにすることです。そのために現在は、1930年代のホルクハイマー哲学の解明を試みています。特にホルクハイマーによる「言語批判」を参照軸に、修士論文を執筆する予定です。
モダニティ論コースでは、政治哲学・社会理論・精神分析・ジェンダー理論・美学・科学史など、多彩なテーマのゼミが設けられ、そこで形成される知識や思考は、私の(無謀な?)修士論文執筆の手助けをしてくれています。ゼミは少人数で行われるため、気軽に教員や学生に質問し、討論することができます。ただし、ゼミの参加者の専門領域は、教員も含めて、自分の領域とは全く異なる場合があります。そのため、ゼミの中で自分は研究分野の第一人者として発言することになります。つまり、他分野の人間から質問されたときには、責任を持って解答しなければならないということです。これがモダニティ論コースの難しさと同時に楽しさでもあります(他のコースでも事情は同じでしょう)。
また、モダニティ論コースのゼミでは、英語・ドイツ語・フランス語等の原典テクストを地道に精読しています。そのため、目に見える成果がすぐに得られるとは限りません。ですが、テクストに書かれている単語一つひとつを粘り強く丁寧に解釈するという営為は、私たちに新たな知識と批判的思考を与えてくれます。テクストの中に確かに存在する思想を、あたかもひとつの「判じ絵」を読み解くように解釈すること、これがモダニティ論コースでテクストを読む意義であると、私は確信しています。
川崎 蓮託さん(博士前期課程2年)
ノッティンガム大学マレーシア校国際関係学部卒業
研究テーマ:「柄谷行人の交換様式論」
私は現在、現代日本の思想家・柄谷行人による近代社会批判の論理を解明することを目指して、彼の唱える「交換様式」という概念を手がかりにしながら研究に取り組んでいます。柄谷行人はカントやマルクスを始めとする近現代の社会思想家たちから大きな影響を受けています。それゆえ私の研究を進めるためには、柄谷に影響を与えた思想家たちがどんな議論をしていたのか、そうした議論は柄谷によってどのように受容されたのか、といったことも十分に視野に入れて考えることが必要となります。こうした観点から、近現代の思想全般について広く学ぶことができるモダニティ論コースは、私の研究を強力にサポートしてくれる環境であることを実感しています。
モダニティ論コースでは、近代・現代の社会思想・政治思想・科学思想などにかんする講義や演習(テクスト講読)が複数設けられています。目下のところ私は、これらの授業を通して近現代の社会思想・政治思想などについて広く学びながら、そこで得た知見を自らの研究に活かそうと努めています。とくに強調しておきたいのは、演習でのテクスト講読は、私のテクストに向き合う姿勢に大きな変化をもたらしてくれた、ということです。モダニティ論コースに進学する前の私は、「テクストの主たる結論さえ理解することができれば読めたことになる」と思っていました。しかしモダニティ論コースでの演習を通して学んだのは、テクストの論理を緻密に追跡することの大切さです。そうすることで、テクストで用いられる諸概念の布置関係を把握すること、これこそがテクストを読むために必要だという姿勢を、私は演習をつうじて身に着けることができました。
このように、研究を進めるために必要な知識や姿勢を一から体得できる環境がモダニティ論コースには整っています。いま私はそのことを強く実感しながら充実した日々を送っています。

下中 隆太郎さん(2021年度博士前期課程修了)
研究テーマ:「ハンナ・アーレントによるカントの政治哲学解釈」
現在、外務省職員(専門職)
修士課程では、ドイツ出身のユダヤ系政治思想家ハンナ・アーレントの思想、とりわけカント解釈を中心に研究しました。振り返ってみると、アーレントの研究を中心に据えつつも、様々な思想家や分野の文献読解を通じて西洋社会の根本にある思想を深く学んだ大学院時代だったと思います。モダニティ論コースでは、英独仏語原文も含めテクストを精読する能力が鍛えられました。またテクストを解釈する上で、社会や時代の背景、思想史といった文脈を考慮することの重要性も学びました。加えて、様々な専門分野でご活躍される先生の授業を受けることで、複数の視点からモダニティをめぐる思想について検討することができました。先生それぞれのご研究の蓄積にもとづくアドバイスや指導を頂き、幾つもの重要な着想を得て、それらを練り上げて最終的に修士論文という形にすることができました。
公務員として働き始めて約2年と仕事経験は浅いですが、仕事と研究という観点で改めて振り返ると、現在の自分自身の在り方を形成する上で大変意義のある大学院時代であったと思います。難解なテクストに向き合うことで培った論理的思考に基づき、複雑な物事を理解し、言葉を用いて説明することは、日々の業務にも活きていると思います。さらに、西洋社会や文明を成り立たせている根本的なものを思考する姿勢が身につきました。数年ぶりに、今回は仕事として欧州に滞在していますが、大学院での学びを通じて、言ってみれば社会を見る際の「感度」が上がったと実感します。国際情勢や社会が目まぐるしく変動する今日ですが、そのような時代だからこそ、目先の表層的な事柄にとらわれない姿勢は重要であると思います。モダニティ論コースは、研究者を目指す方はもちろん、例えば本を熟読するのが好きな方、物事を本質から理解したいと望む方、(西洋)近代社会について深く考えてみたい方などに向いているコースであると思います。
野上 俊彦さん(2019年度博士後期課程修了)
研究テーマ:「エルンスト・ユンガーとドイツの国民的アイデンティティ」
現在、松山大学経済学部特任講師
私の研究対象は、エルンスト・ユンガーという20世紀ドイツの思想家です。この人は作家(言語芸術家)ですが、その著作の内容は政治、哲学、歴史、宗教、科学、技術、芸術など多岐にわたるので、はじめのうちは彼の言葉に圧倒されるばかりでした。
そのような私にとって、モダニティ論コースの環境はとてもありがたいものでした。本コースには、社会思想・政治思想や美学・芸術学など、複数の分野の専門家による学際的な指導体制が整っており、数多くの貴重な助言を得ることができました。また学内外の研究者を集めて実施される研究会や、院生同士の自主的な読書会などから、思いがけない学びや気づきが得られるということも少なくありませんでした。そして本コースでは、普段の授業・演習でも論文指導でも、テクストを徹底的に精読することが重視されます。地道でたいへんな作業ですが、そこから得られる知的刺激はテクスト読解の醍醐味であり、なによりこれが、思想家の難解なテクストにアプローチするための最適の方法でもあります。
私が大学院修了後もなんとか自力で研究を進められているのは、本コースでさまざまな知的刺激を受けながら基本的な研究姿勢(絶えず視野を広げるよう努めつつ、事柄を丁寧に観察し、かつ概括的に把握すること)を学べたからだと思います。この経験は、研究にかぎらず、広く課題一般に取り組む際にも活きてくるものです。大学に職を得て学生教育にも注力するようになった現在、このことを強く感じています。

研究テーマを絞り込むのではなく、広く「モダニティ」全般について学ぶことは可能でしょうか?
可能です。むしろ近現代の思想的諸問題について広く学べることが、モダニティ論コースの強みともいえます。とりわけ前期課程のキャリアアップ型プログラム履修生の場合には、モダニティ論コースで開講される思想関連の科目群を中心に履修しながら、幅広い分野について知見を深めることが望ましいでしょう。研究者養成型プログラム履修生の場合には、もちろん適切にテーマを絞り込まなければ修士論文を執筆することは不可能ですが、従来型の大学院では扱いにくい学際的な主題を正面から取り上げることができる点が本コースの最大の特長といえます。
フランス思想やドイツ思想を研究したいのですが、仏語や独語の知識はどれくらい必要でしょうか?
前期課程「研究者養成型」プログラム志望者でフランス思想やドイツ思想を研究対象とする人の場合には、仏語や独語の読解力をある程度そなえていることが望ましいといえます。とはいえ(外国籍学生特別入試ではない)一般入試の場合には英語で受験することになりますから、受験に臨んでまずは英語の読解力に磨きをかけ、前期課程のあいだに仏語や独語の読解力を鍛えてゆけばよいでしょう。むろん英米思想の研究志望者の場合には、独仏語の代わりに英語のテクスト読解にいっそう注力してください(なおキャリアアップ型プログラム履修生の場合には独仏語をかならずしも必要としないと考えてもらって差し支えありません)。