15の多様な専門コース

グローバル文化専攻・現代文化システム系 モダニティ論コース

最終更新日 2020年7月9日

コースの紹介

  国民国家という政治原理であれ市場という経済原理であれ、あるいは小説という文学形式であれ遠近法という絵画技法であれ、西欧近代に由来するこれらの社会的・文化的な装置は、現代世界の基本的な枠組みをかたちづくってきました。ところが現在、この西欧近代の原理(モダニティ)は、グローバル化の進展ととともに根底から揺らいでいます。こうしたなかで求められているのは、あらためて「モダニティ」の意味を問いなおし、激動する世界のゆくえを的確に読み解くことだといえるでしょう。本コースでは、近現代の社会思想・経済思想・政治思想・文化言説・表象文化を丁寧に分析することをつうじて、アクチュアルな課題に応えうる足腰の強い思考力を養成することをめざしています。

 
就職実績

(前期課程)  西宮市役所、神戸大学(職員)、日本山村硝子、高知新聞社(記者)、共同通信社(記者)、イオン、がんこフードサービス、オーケー株式会社、金蘭中学校・高等学校(教員)、JNC、兵庫県高校教員(英語)、宝塚市役所 他

(後期課程) トルコ・チャナッカレオンセキズマルト大学日本語教育学科専任講師

在籍学生数

(前期課程) 2名

(後期課程) 3名

論文テーマ

(前期課程)
ミシェル・フーコーとエルキュリーヌ・バルバン、ピーター・バーガーの「日常」概念と宗教、批判理論における<女性的なもの/母性的なもの>をめぐって、E・フロムとフランクフルト学派̶批判理論における精神分析学の受容をめぐって、H・アーレントにおける赦しの概念について、H・アーレントの現象学的決断主義̶複数性概念の再考、自由とその制度化̶H・アーレントの行為論、W・ベンヤミンにおける神話理論̶永遠回帰とアレゴリーとの関係について、W・ベンヤミンの初期言語哲学再考―翻訳と批評を中心にして、ドゥルーズにおける革命の諸問題、戦時中上海映画におけるジェンダー表象、ヴァナキュラー・モダニズムとしての映画―ミリアム・ハンセンの映画理論について 他

(後期課程)
エルンスト・ユンガー、技術、ニクラス・ルーマン、社会システム論、ハーバート・スペンサー、日本社会の近代化、D.H. ロレンス、エコクリティシズム、他

所属教員の紹介

石田 圭子 准教授 文化言説系譜論特殊講義ほか
美学・表象文化論。近代以降の芸術と政治の関わり、芸術における他者とのコミュニケーションなどをテーマにしています。
著書 :『美学から政治へ モダニズムの詩人とファシズム』(慶応大学出版会)など。

市田 良彦 教授 近代経済思想系譜論特殊講義ほか
社会思想史。アルチュセール、フーコー、ドゥルーズなどのフランス現代思想を中心に、今日における政治・経済・文化の哲学的分節を考察しています。
著書:『アルチュセール ある連結の哲学』(平凡社)など。

上野 成利 教授 近代政治思想系譜論特殊講義ほか
政治思想・社会思想史。ホルクハイマー、アドルノらフランクフルト学派にかんする思想史研究を基軸にしながら、「暴力」「自由」「公共性」等の鍵概念の社会哲学的な分析に取り組んでいます。
著書:『思考のフロンティア 暴力』(岩波書店)など。

松家 理恵 教授 表象文化系譜論特殊講義ほか
イギリス文学・思想。 18 世紀からロマン主義のイギリス文学・思想を中心に、近代の自然観や共感的想像力について現代における意味を考察しています。
著書:『キーツとアポローン―ジョン・キーツの詩とギリシア・ローマ神話』(英宝社)など。

 

 

所属学生からのメッセージ

下中 隆太郎さん(博士前期課程2年生)

神戸大学国際文化学部卒業。
研究テーマ:「H. アーレントの判断力論」

★メッセージ
  私は専門として、H.アーレントという、20世紀を生きたユダヤ系の政治思想家に取り組んでいます。私の目標は、アーレントが、M.ハイデガー、K.ヤスパースといった同時代の哲学者の薫陶を受け、得られた哲学的知見を、社会的、歴史的出来事に直面しながら、いかに政治理論に練り上げていったのかを明らかにすることです。専ら文献に向き合う日々で、私はともすると独りよがりな思考に陥りがちですが、自分の専門と隣接したテーマを扱う授業に参加したり、専門を異にする先生方から助言をいただいたりすることで、新たな気づきを得て研究を前に進めることができます。
 本コースでは、古典を精読することに重点が置かれています。なかでも外国語講読の授業は、その道の専門家から指導していただくことで、原文を読み、理解する技術のよき鍛錬になります。単に外国語での読解力向上だけが狙いではありません。いかなる言語も特定の思考及び生活形式と密接不可分です。よって外国語原文で読み、その言語でしか表現できない事柄に出会うことで、特定の言語(私の場合はドイツ語と英語)圏における考え方と経験への理解を深め、その上で研究を行うことができます。
 欧米の政治思想に向き合うことで、「身近な」対象を「一歩退いて眺める」ことができるようになると実感しています。アーレントは、古代ギリシアやローマにまで遡って、政治概念の意味を問いました。その意図の一つは、現代で自明とされる概念を古代に遡って捉え直すことで、現代を新たに理解できるようにすることです。似たようなことが私自身にも当てはまります。つまり、欧米の近現代政治思想を知ることで、(例えば日本という)身近な対象について再発見できることがあります。本コースでその重要性に気づかされた一歩退いて眺める視座は、研究の道に進むにしろ、就職するにしろ、有意義であると確信しています。

 

池田 直樹 さん(博士後期課程3年)

神戸大学国際文化学部卒業
神戸大学国際文化学研究科博士前期課程修了
研究テーマ:ピーター・バーガーにおける信仰と社会学思想の相克

★メッセージ
  私の専門はピーター・バーガーという人物を中心にした20世紀後 招半のアメリカの社会学思想史です。近代思想全般についての該博 待な知識を必要とするテーマですが、本コースで開講されている社会思想史、政治思想史、美学、文学等のゼミが大いに私の助けとなっています。また本コースの特徴はテクストの丁寧な読解を大切にする点にあると言えます。すぐに役立つ知識はすぐに役に立たなくなる知識です。迂遠な道に思われるかもしれませんが、テクストを読むという作業はしなやかで強靭な思考を身につけるためには不可欠です。皮相な理解ではなく、根本的なものを問い続けることこそが重要なのです。考える力を養おうとするならば、本コースは最良の環境でしょう。

 

 

修了学生からのメッセージ

吉峯 旬作さん(2015 年度博士前期課程修了)

研究テーマ:「H・アーレントの政治思想研究」
現在,兵庫県公立高等学校教員。

★メッセージ
  子どものころから体育会系運動部に所属し、ある種の共同体的空間になじみの深かった私は、学部の講義で耳にした「公共性」という言葉に新鮮さを感じました。互いに異なる者どうしが時間や空間を共有するというその概念に興
味を抱き、もっと深く勉強したいと意気込み、大学院へ進学しました。
 ドイツ・ベルリンへの交換留学も含め、4年間にわたりH・アーレントの政治思想研究に打ち込ませていただきました。しかし修士論文は、書きたいと思っていた内容にはほど遠く、良くも悪くも自分の身の丈を知ることができ、自分の適性をより活かせるような進路を考えるようになりました。
 現在は県立龍野北高等学校(定時制課程)に英語科教員として勤務しています。兵庫県の西の端、醤油やそう
めんで有名なたつの市にある夜間高校です。生徒たちは、昼に仕事や家事、育児などを行ない夕方から登校します。
教室という公共空間で、互いの背景に配慮しながら苦楽を共にすることで、地元で活躍する市民へと成長していきます。
 私自身、体育祭や文化祭、災害ボランティアを生徒と共に計画・実行する中で、研究室での学びとは異なる学びを日々させてもらっています。ですが、生徒の思いにじっくりと耳を傾け、時に粘り強く語りかける教員として必要な姿勢は、研究室で学友と共に思考し、語り合った経験から学び得たものです。
 教育現場に身を置いて当時を振り返ると、コースの先生方や研究科の職員の方々から、勉学に没頭できる環境を与えられたことに改めて有り難さを感じます。目先の利益にとらわれず、やりたいことに没頭できた時間は、私にとって生涯の財産です。研究職を志す方以外にも広く門戸は開かれていると思います。
 研究科への進学を考えている方は、将来の進路のことなどに不安を抱いていると思いますが、熱意をもって勉学に励む学生を応援してくれる環境がそこにあります。

 

川本 健二さん

大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業。神戸大学総合人間科学研究科博士前期課程修了、神戸大学国際文化学研究科博士後期課程修了。
研究テーマ:写真を中心としたメディア文化。また、日本語教育でもメディアを活用した言語教育の在り方とそこでの「文化」の扱い方について研究している。
現在、トルコ・チャナッカレオンセキズマルト大学日本語教育学科の専任講師をする傍ら、写真史についての調査や写真家活動も行っている。

川本 健二★メッセージ
   モダニティ論講座は、社会学、思想、哲学、政治学、美学などの既存の学問領域にとらわれない講座です。私の場合は「写真」という切り口でしたが、この講座の大きな枠組みの中で自分のテーマに向き合えたおかげで、写真の芸術作品論に終始せず、写真イメージの「技術と生産」の研究として、また撮影者に注目した「主体」の研究として、独自の展開ができたと思っています。
   もちろん、現在の就職事情を考えれば、大学院でこのような思想的テーマを選ぶことはリスクがあると言わざるをえません。しかしグローバル化が進む中で、この講座が行う「文化」「社会」などへの根本的な問いかけは、どのような分野であっても、ますます必要なものとなっていることは確かです。現在、トルコでの写真の調査や、他分野である言語教育やその研究プロジェクトなどにも参加していますが、ここでもモダニティ論が扱う議論がいかに重要なものであるかを実感しています。
   社会学的、思想的な課題に向き合いたい方はもちろんですが、特定の文化的現象を学際的に捉え直したい方にとっても、この講座での経験は実り多きものになると思います。

 

 

qa

研究テーマを絞り込むのではなく、広く「モダニティ」全般について学ぶことは可能でしょうか?

可能です。むしろ近現代の思想的諸問題について広く学べることが、モダニティ論コースの強みともいえます。とりわけ前期課程のキャリアアップ型プログラム履修生の場合には、社会思想・経済思想・政治思想から文化言説・表象文化にいたる科目群を広く履修しながら、幅広い分野について知見を深めることが望ましいでしょう。 研究者養成型プログラム履修生の場合には、もちろん適切にテーマを絞り込まなければ修士論文を執筆することは不可能ですが、従来型の大学院では扱いにくい学際的な主題を正面から取り上げることができる点が本コースの最大の特長といえます。

フランス思想やドイツ思想を研究したいのですが、仏語や独語の知識はどれくらい必要でしょうか?

前期課程「研究者養成型」プログラム志望者でフランス思想やドイッ思想を研究対象とする人の場合には、仏語や独語の読解力をある程度そなえていることが望ましいといえます。独仏語で受験できればそれに越したことはありません。とはいえ入試そのものは英語で受験することが可能です。受験に臨んでまずは英語の読解力に磨きをかけ、前期課程のあいだに仏語や独語の読解力を鍛えてゆけばよいでしょう。むろん英米思想の研究志望者の場合には、独仏語の代わりに英語のテクスト読解にいっそう注力してください(なおキャリアアップ型プログラム履修生の場合には独仏語をかならずしも必要としないと考えてもらって差し支えありません)。

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