アジア・太平洋文化論

最終更新日: 2026年06月16日

文化相関・地域文化系 アジア・太平洋文化論コース

 現代のアジア・太平洋地域は、経済や国際交流等の面で激しい変動を経験しながら急速に発展しています。その意味では今まさに地球上でも最もホットな地域の一つであると言えるわけですが、それらの表面的な発展の流れを追うのみではこの地域の持つ特質は理解できません。東アジアにせよ、東南アジアや太平洋地域にせよ、各地域が古くから保持してきた複雑きわまりない多彩な伝統というものがあり、その伝統がグローバル化の波をかぶりつつ変容してきた結果が、現在の姿なのです。したがって、この地域の特質を深く理解しようと思えば、社会構造、宗教、歴史、経済状況等々の諸方面から掘り下げた専門的な研究が不可欠となります。本コースでは、それらの専門的な研究視点、研究方法を多様な教授陣が様々な専門領域の授業で伝授し、指導する体制を整えています。

 
就職実績

(前期課程) アジア・太平洋地域関連で活動している諸企業、諸団体等への就職が予想されます。最近の修了者の就職先例:八重洲出版、トランス・コスモス(株)ほか

(後期課程) 日本での大学・短大・高専・各種研究所、企業などへの就職の他、留学生の場合には出身国での大学や企業における専門職への就職等も期待されます。
最近の修了者の就職先例: 神戸大学准教授、法政大学准教授、天理大学専任講師、中国・内蒙古大学専任講師、中国・北京外国語大学外国語学院専任講師ほか

在籍学生数

(前期課程) 9名
(後期課程) 4名

論文テーマ

バンコクの中間層をデモに駆り立てた要因の研究―PDRC及びUDDにおける末端支持者の政治意識―
インドネシアにおける大学生の恋愛と性をめぐる葛藤
国際交流活動と進路選択―東南アジア青年の船を事例に―
アイヌ文化の表象と実践―白老町における文化活動を事例として
初期日豪関係の展開と日本イメージに関する歴史学的研究
明代(14-17世紀)の雲南麗江ナシ族・木氏土司
清末から中華民国初期の内モンゴルにおける近代学校教育の展開と知識人の輩出―ハラチン地域と帰化城トゥメド地域の事例を中心にして―
清代内モンゴルにおける農地所有とその契約に関する研究―帰化城トゥメト旗を中心に―(第12回アジア太平洋研究賞受賞博士論文)

所属教員の紹介

伊藤 友美 教授 東南アジア社会文化論特殊講義ほか
フィールドワークの手法を中心に、タイを中心とした上座仏教圏の社会、宗教、女性などの分野を主として研究しています。

貞好 康志 教授 東南アジア国家統合論特殊講義ほか
インドネシア現代史、華僑華人研究などの分野を主として研究しています。

谷川 真一 教授 中国社会経済論特殊講義ほか
現代中国の政治と社会、国際関係などの分野を主として研究しています。

深川 宏樹 准教授 オセアニア社会文化論特殊講義ほか
文化人類学、社会人類学、オセアニアの社会と文化、人間概念と社会性の研究などの分野を主として研究しています。

橘 誠 教授 東アジア社会文化論特殊講義ほか
マルチ・アーカイヴァル・アプローチにより、近現代モンゴルを中心とした東アジアの政治外交、社会経済の歴史を主に研究しております。 

 

所属学生からのメッセージ
 
中井 健太さん(博士後期課程2年)
大阪大学人文学研究科博士前期課程修了
研究テーマ:「近代モンゴルにおける知の歴史」 私の専門は歴史学で、特にモンゴルの近代史を研究しています。私がモンゴルについて本格的に研究するきっかけとなったのは、学部時代のモンゴル国立大学への交換留学です。モンゴルの20世紀は、諸列強による分断という悲劇的な歴史であり、今日に至るまで、モンゴル人はモンゴル国、中国、ロシアに分かれて暮らしています。モンゴル国立大学では、これらの広いモンゴル世界から集まってきたモンゴル人たちと、授業や学生寮で交流する毎日を過ごしました。モンゴル世界の一体性と多様性に触れる日々の中で、日本語を話す日本人であることと日本国籍を持つことがほぼ一致する世界で生きてきた私の常識は、大きく揺らぎました。「近代における民族とは何か?」という答えのない問いを自分なりに考える場所として、モンゴル近代史研究の蓄積がある神戸大学を選び、ここで博士号の取得を目指すことを決めました。
 私は、学部卒業後に民間企業への就職を経て、その後大学院に進学しました。本コースには他にも、例えば定年退職後に大学院に入学された方や、在職のまま長期履修制度を利用される方など、様々な経歴の院生仲間が多く、自らの経験を活かした研究をする姿には感心させられます。また、アジア諸地域からの留学生や、国内国外問わずフィールドワークに行く学生もいます。
 本コースの院生研究室は、日本学、ヨーロッパアメリカ文化論との共用です。そのため、様々な地域と分野の研究をしている大学院生と日常的に会話をすることができるだけでなく、自分の研究内容や意義を他分野の人に説明する力も鍛えられます。
 本コースには、様々なバックグラウンド、および幅広い学問的関心を持つ学生を受け入れる空気があります。自主的に行動する意識さえあれば、自分の専門分野+αの知見も多く得られる、刺激的な研究生活を送ることができると思います。
 
根岸 浩章さん(博士前期課程2年)
研究テーマ:「サモア首長制社会のバスにおける親密性の表出に関する人類学的研究 ― 敬意
をめぐる民俗概念と身体性の視点から」

 サモア独立国という島国のバスにおいて営まれている人びとの相互行為を、他者への敬意、親密性、身体性といった観点から深く理解することが、私の研究テーマです。
 私は青年海外協力隊としてサモアに滞在し、帰国後は教育、地域づくり等の事業に携わったのち、本コースに入学しました。大学院での研究を志した理由は2つあります。まず、サモア生活への深い後悔です。青年海外協力隊の任期を終えて日本に帰国してから、サモアで過ごした時間を振り返るうちに、「自分は自分の見たいように彼らのことを眼差して何か大きな誤解をしていたのではないか」という、うしろめたさのようなものが徐々に発酵してきたのでした。そして彼らのことを「わかりなおす」ことに向き合いたいと思うようになりました。もうひとつは、自身のキャリア形成の文脈です。大学卒業してから教育に軸足を置いて活動するうちに現在専攻している人類学と出会い、そこに教育との重なりを感じ、興味がどんどん増幅してきたのです。これら2本の線が交わり、大学院進学を決意しました。
 アジア・太平洋文化論コースを選択した最大の理由は、なんといっても多様な専門をもつ先生方や学生がいる研究環境です。自身の専門以外の視点から意見をいただいたり、議論をしたりすることを通じて、多面的に学べる日常的な環境があることに惹かれました。そしてその選択は、間違っていませんでした。進学後は、指導教員との定期的な面談指導をベースに、講義や演習、研究会や読書会などにも参加しながら研究に励んでいます。これらの機会を通じて、本コースはもちろん他コースの先生方や学生とも交流する場面が多々あり、相互に学問的知見を深め合っています(もちろん、他愛のない話をして親交も深め合っています)。このようにして出会った共に学び合うことのできる仲間の存在は非常に心強く、しばしば孤独や前途多難さに挫けそうになる研究へと向かう、大きな支えとなっています。専門分野に囚われず、多様な視点を取り込みながら研究活動を深め、邁進できる環境がアジア・太平洋コースにはあります。

 

修了学生からのメッセージ
 

DOU YUNHAOさん(2024年度博士前期課程修了)
華東師範大学歴史学部卒業
研究テーマ:「毛沢東時代の政策決定と地方指導者――柯慶施の上海勢力を中心に」
現在、本研究科博士後期課程在籍

 私は学部制時代には歴史学部で勉強しており、大学2年生の頃には中国現代史の授業を受け、「なぜ毛沢東時代は文化大革命という災厄に収束したのか」と疑問を抱き、毛沢東時代の中国歴史に興味を持つようになりました。大学卒業後、私は研究者への道を目指し、大学院への進学を決めました。毛沢東時代の中国歴史は、一連の政治運動によりつながっており、私は特に中国の社会主義建設と毛沢東の権威に大きな打撃を与え、60 年代における中央指導部内部の論争と対立を引き起こした大躍進運動に関心を抱き、「大躍進運動の起源」というテーマを研究したいと思うようになりました。そして、現代中国の政治と社会がご専門である谷川先生のご指導を仰ぎたいと思い、神戸大学大学院を受験しました。去年、私は博士後期課程に進学しました。博士論文では、毛沢東の急進的な経済、文化政策を断固支持した中国共産党上海市委員会第一書記柯慶施に着目し、50年代半ばから60年代半ばにおける地方指導者と中央の政策決定の相互作用を解明することを目指しています。現在、谷川先生をはじめとする本研究科の先生たちのご指導を受けながら、資料収集に没頭しています。
 異なる研究分野の先生・学生に接触できるのは、アジア・太平洋文化論コースの最大の特徴だと思います。社会学、人類学、政治学、歴史学など、様々な分野の先生・学生と議論することを通して、異なる分野の研究方法、考え方に接触し、そこから栄養をもらうことができます。その接触の過程では、従来「当たり前」と思っている概念や、物事を分析する視点が覆され、新しい知恵をもらい、より多角的に問題を分析することができるようになります。それは本コースの魅力だと思います。本コースの受験を検討している皆さんは、本コースで有意義な研究生活が送れるように心から祈っています。

 

林 万葉さん(2025年度博士前期課程修了)
関西学院大学社会学部卒業
研究テーマ:「シンガポールにおける新移民の流入がもたらす社会統合のゆらぎ」
現在、ロジスティード株式会社勤務

 私は、東南アジアのマレー半島の最南端に位置する、小さな都市国家シンガポールを対象に研究を進めてきました。シンガポールといえば、マーライオンや高層ビル群、色とりどりの文化を思い浮かべる人が多いと思いますが、それはシンガポールのたった一側面にすぎません。私たちの想像以上にシンガポールは、深く、非常に興味深い特徴を持つ国家です。シンガポールは多種多様なエスニックグループから構成されていますが、世界各国で見られるような、民族や国籍を原因とした大きな対立は見られません。このことから、シンガポールはよく「多民族国家の成功例」と言われることがあります。一方で、シンガポールも日本と同様に深刻な少子高齢化問題を抱えており、国内人口や労働力を維持するために多くの外国人労働者や移民を受け入れています。「多民族から成る社会の統合」と「増加する外国人」のバランスをどのようにとっていくのか。この問いを核として研究を進めてきました。
 修士課程では、指導教員である貞好康志先生のご指導のもと、実際にシンガポールに足を運んで多くの方々から直接お話を伺ったり、時には国会図書館に一日中こもって隅々まで現地の新聞を読み漁ったりなど、あらゆるアプローチから研究を進めました。多様な分野を専門とする本コースの先生方からもきめ細やかなアドバイスをいただき、自分では気が付かなかった視点からも自身の研究を捉えることができました。
 今後、目まぐるしく変化する世界で生きていく私たちにとって何よりも大切なのは、「自分とは異なる価値観、立場や背景を持つ人々の感情や状況を、汲み取り、想像する力である」と学べたのも、本学で研究生活を送ることができたからだと思います。皆さんもぜひ、本学、本コースで自分が知らなかった世界に飛び込んでみてください!

 

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留学生や社会人入学の院生もいますか ?

本コースでは日本人と留学生の両方がいつも多数在学しており、年度によっては、社会人入学・長期履修生の院生もいます。

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