外国語教育システム論

最終更新日: 2024年09月30日

グローバル文化専攻・外国語教育系 外国語教育システム論コース

Foreign-System 外国語教育システム論では、英語を中心とする外国語教育の基礎を担う言語学、心理学、言語表象作品分析など様々な領域の学際的知見を援用して研究を行い、それらを有機的・総合的に連関させることで、外国語教育のシステムの研究・実践にあたることができる有為の人材養成を行う。
本教育研究分野では、特に、
1. 言語学、心理学など関連諸分野の知見に基づく学際的な言語教育研究
2. 幅広い言語文化・表象作品の言語教授法への応用と方法論研究
3. IT 教育など言語教育環境整備に関わる実践的研究
4. 言語習得、言語使用を取り巻く社会的・文化的要因に関わる研究
5. 心理言語学的研究により得られた知見の教育現場への応用
6. 教育現場における指導実習等の活動支援
を重視して研究指導を行っている。

 

進路実績

(前期課程) 香川県立高等学校、千葉県私立高等学校、大阪府立高等学校、神奈川県立高等学校、兵庫県立高等学校ほか

(後期課程) 兵庫教育大学、神戸学院大学、近畿大学、自然科学研究機構、神戸市工業高等専門学校、立命館大学、桃山学院大学、びわこ成蹊スポーツ大学ほか

在籍学生数

(前期課程) 5名

(後期課程) 6名

論文テーマ例

(前期課程)
Argumentative essays written by high school students: The relationship between holistic scores, linguistic complexity, and meaning complexity
How reading aloud and shadowing affect the acquisition of L2 grammar knowledge by Japanese EFL learners
The effects of story retelling on vocabulary acquisition by Japanese EFL learners
外国語としての英語教育環境における多読授業デザインに関するシステマティックレビュー
韓国語を母語とする日本語学習の韻律的特徴とその習得 ―釜山方言話者の日本語学習者を中心に―
国際交流プログラムにおける日本人高校生の発話の変容に関する研究


(後期課程)
Coaching discourse and linguistic resources for player-centered training: A case study of three professional football coaches
L1 and L2 lexical network of Chinese EFL learners: Focusing on the effects of semantic category relationship and L2 vocabulary knowledge
Processing mechanisms in the comprehension of ambiguous sentences by Japanese learners of English: Does implicit learning occur through repeated exposure?

所属教員の紹介

島津 厚久 教授 言語文化表象論特殊講義ほか
アメリカ現代文学。中でもユダヤ系アメリカ文学で、特に小説家バーナード・マラマッドの長・短編小説を「表現」の観点から読み解こうと試みています。

髙橋 康徳 准教授 言語対照基礎論特殊講義ほか
中国語学、音声学、音韻論。中国語諸方言の声調に関する現象を音声学・音韻論の観点から研究しています。

濱田 真由 助教 言語教育環境論特殊講義ほか
心理言語学、外国語教育。第二言語・外国語での言語処理時のプロセスについて検証し、得られた知見を外国語教育にどのように応用することができるのかについて検討しています。

廣田 大地 准教授 言語文化環境論特殊講義I ほか
フランス文学。ボードレールを中心とした近代フランス詩を研究対象とし、その詩学を言語学的観点から記述することを目標としています。他にもWEB やコンピュータを用いた文学研究・語学教育に関心があります。

保田 幸子 教授 言語科学論特殊講義ほか
第二言語習得論、第二言語ライティング、ジャンル分析、カリキュラム開発。「第二言語で書く」という行為をめぐり、書き手の方略やジャンル意識,言語的・文体的特徴に焦点を当てた研究を行っています。これらが長期的にどのように変化するか、なぜ変化するかという発達プロセスを明らかにすることが研究テーマです。

安田 麗 講師 言語文化環境論特殊講義Ⅱほか
音声学、ドイツ語教育。外国語の音声習得、発音指導に関して、音声学的観点よりドイツ語、日本語を含む様々な言語を対照しながら研究しています。

横川 博一 教授 言語教育科学論特殊講義ほか
英語教育学・心理言語学。第一言語および第二言語のリーディング、リスニング、ライティング、スピーキングおよび語彙の認知処理メカニズムとその授業実践への応用可能性を探ることが主な研究テーマです。

 

所属学生からのメッセージ

高砂 千聡さん(博士前期課程 2 年)
大阪女子大学(現大阪公立大学)学芸学部卒業
研究テーマ:「CLIL 授業の TASK における内容と言語の統合に関する考察」

 大学卒業後は、英語教員として大阪の公立高校や私立中高等学校に勤めておりました。そして教育現場で様々な英語指導法を経験する中で、CLIL(Content and Language Integrated Learning)という教授法に出会い、大変興味をもちました。それ以来、研究会等で勉強しながら勤務校でもCLILの実践を重ねておりましたが、やりがいを感じる一方で実践を通して見えてくる課題があり、面白いと思うことを追求したいとの思いから、大学院で学ぶことにしました。本コースの授業では、外国語教育についてあらためて、様々な理論に基づいて考えることができ、また得られた知見を現場でどう応用するかを考える実践的な学びができます。そして定期的に行われる集団指導では、自身の研究の進捗を発表し、指導教諭の先生をはじめコースの先生方から助言をいただくことができますし、常に相談に乗っていただける環境があり、とても有難く、忙しくも充実した学びの日々を過ごしています。
 また、私は日本語のサブコースも履修していますが、コースを超えた科目の授業は視野を広げ新たな視点を与えてくれますし、研究科全体が留学生や様々なバックグラウンドを持つ院生と共に学べる場になっていることもよい刺激になっています。このような環境に身を置き研究に取り組めることをとてもうれしく思っています。

 

清水 保宏さん(博士後期課程 2 年)
神戸大学国際文化学研究科博士前期課程修了
研究テーマ:「How reading aloud and shadowing affect Japanese EFL learners’ grammatical knowledge and processing」

 私は高校の英語教員をしており、特に英語の文法習得に関心を持っています。文法はコミュニケーションの土台にあるべきものと考えていますが、従来から教えられている明示的な文法知識というより、それをダイナミックに活かし、自在に文法を操る統語処理の習得が重要だと考えています。そのような習得のために音読・シャドーイングが有効であるという自身の体験や信念に基づき、それを科学的に実証したいと考え、3年前に外国語教育システム論コースの扉を叩きました。入学以来、実験に実験を重ね、研究活動に邁進しています。システム論コースでは、他のコースもそうかもしれませんが、前期課程においても後期課程においても指導教員の先生による丁寧で熱心な指導を継続的に受けつつ、自分が研究したいと志したテーマについて研究することができます。年3回の集団指導の折には、コース内の他の先生方からも多様な観点でのアドバイスをいただき、自分の研究をよりよい方向へ修正していきます。開講される講義や演習を通じても、先生方からインスピレーションを得たりや温かい激励を受けたりし、また、授業内外における院生同士のディスカッションにより互いに学び合ったり切磋琢磨したりすることが日常のこととなっています。
 カリキュラムにおいて最重要なのは研究であり論文作成であるため、在籍中の学生はみんな全力で研究活動に取り組んでいます。そして、1人1人が質の高い研究を行っていると感じます。そういった雰囲気と環境がまた、日々研究を進めていく上での原動力の1つになります。システム論コースは、言語教育に関わる研究をするには非常に恵まれた環境だと思います。

 

山田 美咲さん(2013 年度博士課程前期課程修了)
研究テーマ:「日本語会話における中国人学習者のスピーチスタイルに関する一考察」
現在、 神戸野田高等学校国語科教諭

 大学学部時代に中国へ1年間留学し、日本語を勉強する多くの中国人学生と出会いました。お互いに母語を教えあう中で、日本語を上手く伝えることのできないもどかしさを感じ、大学院進学を決意しました。神戸大学国際文化学研究科では、言語学や教育学に関する基礎的な知識を学ぶことができるとともに、教育現場に直結する実践的な内容に取り組む授業も受講できることが魅力的です。私は、各国から神戸を訪れた留学生とグループで調べ学習をしたり、留学生の日本語の授業に入ってサポーターをしたりしました。その結果、基礎から実践まで幅広い内容を身につけることができました。
 自身の研究では、誤用が多く、習得が困難とされている敬語に着目し、進めていきました。状況や相手によって使い分けが必要なスピーチスタイルを、中国人母語話者は実際にどのように用いているのか、調査をしていきました。参考となる論文を踏まえ、調査計画を立て、実行に移していく中で、指導教員の先生をはじめ、コース、および研究科の先生から多くのアドバイスをいただきました。その都度、改善していきながら研究に専念することができたのは、熱心な先生のサポートのお陰です。この二年間で、一つのことに深く向き合い、新しい視点で物事を考えることができるようになりました。この成果は私にとって大きな自信となり、今の生活にも繋がっています。この素晴らしい環境で、ぜひ、皆さんにも充実した学生生活を送ってほしいと思います。

 

九鬼 雅史さん(2023 年度博士前期課程修了)
研究テーマ:「高校生英語学習者によるアーギュメンタティブエッセイ―全体的評価と言語的・意味的複雑性の関係―」
現在、 香川県立高等学校英語科教諭

 私は大学4年次の教育実習の経験から外国語教育システム論コースでの研究に興味を持つようになりました。授業を通して理想と現実のギャップに直面することが何度かあり、中でもライティング指導について悩む時間が多くありました。実習を終えても「これからのライティング指導はどうあるべきなのか」という問いが心に残り続けました。そこで自分なりにライティング教育や英語でのライティング活動について調べてみると、第二言語ライティングという研究分野があることを知りました。大学院ではこの分野をご専門とされる先生の下で専門知識を深めたいと考え、本コースへの進学を決意しました。
 本コースでは心理言語学や第二言語習得理論など、外国語教育に関する学問分野を幅広く学ぶことが可能です。例え学部時代に学んでいない研究分野であっても、先生方に手厚くサポートしていただける環境が整っています。また、本コースには集団指導という研究の進捗を発表する機会が定期的に設けられており、自分の研究の課題や今後の構想について深く考えることができます。先生方だけでなく、同じコースの院生からも貴重なアドバイスをいただき、研究に関する新たな発見や様々な示唆を得ることができます。
 私自身、他大学からの進学で最初は不安を感じていましたが、指導教員の先生を始め、外国語教育領域に所属されている先生方からのきめ細やかな指導を受け、充実した院生生活を送ることができました。他大学から本コースへの進学に不安を感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、安心して進学されることをお勧めします。

 

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外国語教育システム論コースとは、どのようなことを研究するコースでしょうか?

外国語教育システム論とは、外国語教育の基盤となる基礎研究の知見について理解を深め, 学際的な立場から新しい時代の外国語教育のあり方を探求しようとするコースです。

外国語教育システム論コースでは、どのようなことが学べるのでしょうか?

このコースでは、外国語教育のシステムを支える、言語学・心理言語学、外国文学、文化学について広く学びながら、外国語教育の研究を行ったり、実践力を身につけることができます。また、英語のみならず、ドイツ語、フランス語、日本語などの言語を専攻する院生にも対応しています。

中学校・高等学校の英語教員志望ではないのですが、このコースには不向きでしょうか?

このコースは、英語の教員養成のみを目的としたものではありません。たとえば、外国語教育への応用を考えながら、心理言語学や音声学の研究を行ったり、外国語習得を意識しながら, アメリカ文学、フランス文学を専門とするなど、幅広くかつ深く学ぶことができます。

入学後は、コースが開講する授業しか履修できないのでしょうか?

外国語教育システム論コースに所属していても、他コースの授業を履修することが可能です。外国語教育システム論コースに開設されている授業科目を中心に、たとえば、外国語教育コンテンツ論コースが開講する授業科目を履修することができます。

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