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令和2年度国際文化学部・国際人間科学部グローバル文化学科優秀卒業論文賞・学科長賞

2021/03/25

「優秀卒業論文賞」は各クラスタ(国際文化学部ではコース)が優秀卒業論文に相応しいとして推薦した論文に対して授与されます。学科長賞は、優秀卒業論文の中からさらに特徴のあるものを数件選び、論文の内容を表す賞名をつけて顕彰するものです。
本年度は、10本の優秀卒業論文の推薦があり、どれも力作で「学科長賞」の選考には苦労しましたが、結果的に以下の2本を「学科長賞」としました。

「優秀卒業論文賞・学科長賞」受賞論文

◆「他者を知り、おのれを知る 賞」
Nur Nadiah Binti Ismail
(グローバル文化学科/グローバル文化形成プログラム/アジア・太平洋文化論クラスタ)
「マレーシアの「ルック・イースト政策」における日本留学の考察」

学科長コメント
日本に留学したマレーシア留学生の生の声を分析し、日本型実践を母国で適用することの可能性/不可能性を明らかにしている。他者を知る事は己を知る事を促すが、マレーシアが今後どう発展し、逆に低迷する日本がこの先、他国からまなざされる国であり続けるのか、を考えさせられた。

クラスタからの推薦理由
本論文は、マレーシアが欧米諸国でなく日韓とりわけ日本を経済発展のモデルとし、留学生を派遣した「ルック・イースト政策」について、1982年以降35年間の成果と課題を総括した力作である。政策の策定や出身地・民族別の推移などに関わる当局資料に加え、現在日本に留学している160名+帰国した元留学生191名、計351名へのアンケートと、その中から精選した13名への詳細なインタビューから成る一次データは質量ともに圧倒的である。それらを丁寧に分析した結果、「この政策は同国の中でもどのような地域や階層の人々に益したか、帰国した人ひいてはマレーシア社会に何をもたらしたか、残る課題は何か」を説得的に明らかにした。留学生(特に非漢字圏出身者)による卒論としては日本語も秀逸であり、クラスタ内では(旧学部時代からの)日本人学生による論文を含めても、歴代指折りの独創性と完成度だとの高評価で一致した。

 

◆「アイデンティティの行方を問う 賞」
松井 愛理
(国際文化学部/異文化コミュケーション論講座/異文化関係論コース)
「「不可視化」される人々―日朝「ダブル」のライフ・ストーリーを通して」

学科長コメント
日本在住の朝鮮半島出身者やその関係者たちの存在とアイデンティティに関する複雑な問題を、最新研究の理論整理や当事者たちへのインタビュー資料を交えて、丹念に描きだしている。重いテーマながら、淡々と客観的に分析し、現実を鋭く見つめる著者の洞察が冴える。

コースからの推薦理由
日朝「ダブル」を対象とした本論文は、先行研究の丹念な検討を踏まえて、既存の研究が「在日朝鮮人」の民族団体などで精力的に活動してきている人を対象として日朝「ダブル」の研究を進めている一方で、日常生活の中で民族団体とほとんど関わりを持たない日朝「ダブル」が不可視化されているという問題点に辿り着いた。
このような問題意識に基づき、本論文は、民族団体と直接関わらない日朝「ダブル」を対象としてインタビュー調査を実施し、彼ら/彼女らにとっての民族的ルーツの社会的意味、ルーツに伴う問題や困難の実態、「ダブル」、「ハーフ」、「混血」といったカテゴリーの当事者にとっての意味を丁寧に論じている。
以上のようにまとめられる本論文は、問題意識が明確であるだけでなく、先行研究の丁寧な渉猟とその批判的な検討、緻密なインタビュー調査の実施とその明晰な分析を伴ったものであり、優れた卒業論文として、高く評価できるものである。

「優秀卒業論文賞」受賞論文

◇高橋 ほたる
(グローバル文化学科/グローバル文化形成プログラム/日本学クラスタ)
「ポーランド社会における反ユダヤ主義をめぐる議論―映画Pokłosie が与えた余波―」

クラスタからの推薦理由
本論文は、第二次世界大戦時のポーランドで発生したポーランド人によるユダヤ人虐殺事件「イェドヴァブネ事件」について歴史学的な先駆研究をまとめたあと、この事件を題材しにした2012年のポーランドの劇映画『ポクォシエ』におけるユダヤ人差別の描写について映画学的な分析を施した。さらに本論文の独自性を高めたのは、映画公開後にポーランド国内で発生した「イェドヴァブネ事件」をめぐる国民的な歴史論争にまで射程を広げて分析した点である。

 

◇石川 穂乃香
(国際文化学部/地域文化論講座/ヨーロッパ・アメリカ文化論コース)
「イタリアのホスピタリティモデル「アルベルゴ・ディフーゾ」から考えるツーリズムを活用した地域活性化」

クラスタからの推薦理由
本論文は、日本において先行研究がいまだ少ないイタリアのアルベルゴ・ディフーゾ(分散型ホテル)について、サルデーニャ島のアルベルゴ・ディフーゾでの実地調査を踏まえてその実態を明らかにするとともに、日本の地域での展開可能性について最新の事例分析をもとに考察したものである。アルベルゴ・ディフーゾ協会のジャンカルロ・ダッラーラ会長にメールをつうじて聞き取りをおこなうなど、イタリア語と英語を駆使して調査をおこない、日本のツーリズムの質的発展に寄与しうる論文として結実した点が高く評価できる。

 

◇山口 香奈
(グローバル文化学科/グローバル文化形成プログラム/芸術文化論クラスタ)
「「ハイジ」をめぐるアダプテーション―高畑勲監督アニメ『アルプスの少女ハイジ』の位置づけ」

クラスタからの推薦理由
西洋名作文学のアダプテーションとして多くのアニメ作品が日本では制作されてきたが、さらに、原作以上に日本アニメの影響を受けた海外での翻案映像作品も数多い。その実態や理由、背景について、先駆的かつ人気の高い高畑勲監督アニメ『ハイジ』を例とし、ドイツ語原作から仏訳・英訳・邦訳書、そして20以上ある実写・アニメ映画作品を通して比較・考察する。日常や心の動きをゆったりと細部まで描き出すこと、また視覚的イメージ形成への影響といった高畑アニメや日本アニメの特徴をあぶり出していく。先行研究を参照しつつ手に入る限りの作品を自身でも読解・視聴して丁寧に検証したもので、非常に時間をかけた労作である。視覚・映像文化のあり方を再考させる意義ある内容であり、論文の構成・論旨・文章力・形式、いずれもたいへん優れている。

 

◇嶋谷 江梨花
(グローバル文化学科/グローバル社会動態プログラム/多文化共生論クラスタ)
「若者の自立支援政策の意義とその拡充に至る政治的条件について」

クラスタからの推薦理由
本論文は、なぜ日本において若者の自立が政治問題化されず大きな政策変化も起きないのか、キングダンの「政策の窓」モデルを使い、政策形成までの流れに見る条件から答えようとしたものであり、精緻な事例研究であることに加え、若者の貧困については、政策の利益享受者が他の政策と比較して限定されているため、通常の政策決定モデルよりも、アジェンダセッティングを重視する、キングダンの政策の窓モデルが有効であることなど、分析対象とされた事例に対する分析モデルの有効性・適切性を説得的に論じている。しかも、キングダンの政策の窓モデルをそのまま事例分析に援用するのではなく、政策起業家(政策アクティビスト)等について、適宜修正を加えて、事例分析に用いている点でも高く評価できる。「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」と「子ども・若者ビジョン」の二つの事例分析を通じて、その相違と相違を生む要因についても、説得的に考察し、独創性の高い議論を展開している。以上の点において、本卒論の分析は、修士論文の水準に匹敵し、完成度も高い。また若者の貧困・自立支援問題に関しては、一次資料、二次文献共に、膨大な資料を参照している点も高く評価できる。

 

◇劉 坤
(国際文化学部/現代文化論講座/先端社会論コース)
「中国系ニューカマーの子どもと日本の学校教育 ~神戸市中央区を例に~」

クラスタからの推薦理由
外国にルーツを持つ中国系ニューカマーの子どもたちはどのような家庭環境のもとで暮らし、学校の中でどのような教育または日本語支援を受けているかの実態を明らかにした本論文は、明確な問題設定と綿密なフィールド調査、喫緊の社会問題に対する批判的な問題意識に裏打ちされた、類まれに優秀な卒業論文である。社会調査による現状把握にとどまらず、日々を生きる子どもたちと目線を共有しながら制度と現実のギャップに鋭くメスを入れる、熱意と倫理観に溢れた力作である。

 

◇品川 直治
(グローバル文化学科/グローバル・コミュニケーションプログラム/言語コミュニケーション論クラスタ)
「国際系学部 1 年生の英語学習動機づけ」

クラスタからの推薦理由
本論文は、国際系学部1年生の英語学習動機づけを探索的に検討し、国際系以外の学部生の英語学習動機づけと比較検討したものである。探索的因子分析の結果「社会的な英語学習の価値」を含む4因子を抽出し、国際系学部1年生とそれ以外の学部生間で「資格試験でのスコア取得」などにおいて有意な差があることが判明した。国際系学生が英語学習する理由を、コロナ禍の中でSNSを駆使して82名のデータを得て実証的に検討した点、自律的に統計を学び分析に生かした点が評価できる。

 

◇山下 瑛司
(グローバル文化学科/グローバル・コミュニケーションプログラム/感性コミュニケーション論クラスタ)
「演劇評価尺度の構築―Twitterによる語彙収集および印象評定実験による妥当性・信頼性の検証」

クラスタからの推薦理由
この卒業論文では,舞台演劇に関する27万以上のTwitter投稿に基づき,総計681人に対する6つの調査・実験を通して,26項目からなる演劇評価尺度を構築した。先行研究に基づき,膨大な定性的・定量的データ資料を緻密に分析した点,Twitterを用いて尺度を構築した工夫・独創性,従来定性的に語られてきた演劇の姿を,構築した尺度を通して定量的にも捉え直した客観的な態度・熱意,これら複数の調査・実験の意義を伝える論理性,文章表現力のいずれをとってもきわめて優れている。心理学,芸術,IT等,本学科で展開される複数の分野を融合した研究であるといえ,優秀卒業論文として推薦する。

 

◇杉原 杏佳
(グローバル文化学科/グローバル・コミュニケーションプログラム/情報コミュニケーション論クラスタ)
「タイマーによるインフォーマルコミュニケーション促進と集中支援の研究」

クラスタからの推薦理由
オンラインでのインフォーマルコミュニケーション支援という伝統的な問題に対して「タイマーを共有することでメンバーの集中時間と休憩時間を揃える」という独創的な解決手法を提案、評価した論文です。従来研究とは異なり、誰が今どのような状態であるかを共有するために過度にプライバシーを損ねること、集中を妨げることがないのが特徴です。新型ウイルスの感染拡大に伴ってオンラインでの活動が増えていることもあり、社会的にも意義のある研究になっています。

 

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